ハリポタパロ短編3本~魔法薬学での1コマ~
「ミスタ~~~~!!!!!!」
教室中に響き渡るアイクの渾身の叫び。グリフィンドールとレイブンクローの合同魔法薬学の授業。アイクのペアはミスタだった。どうやら彼が目を離した隙に、ミスタがやらかし大鍋の中身を大爆発させてしまったようだ。スネイプ教授の嫌味が飛び出すよりも先に、アイクの叫びが放たれた結果、スネイプ教授はグリフィンドールに対して10点減点を告げるだけに終わった。
「いや~、ごめんごめん!まさか爆発するなんて思ってもみなかったんだよ!」
「思ってたならやらないでしょ!ていうか、何かを鍋に入れる時は僕と一緒にって言ったじゃない!」
アイクの得意とする魔法薬学で失敗したのが堪えたのか、怒りは収まらない様子だ。
「ごめんて!!!」
平謝りするしかないミスタに救いの手を差し伸べたのはシュウだった。
「そんなに怒ってどうしたのアイク?」
「シュウ!聞いてよ!」
シュウに事の顛末を説明したアイク。シュウは苦笑いを浮かべつつも、ミスタのフォローを入れた。
「でもその薬って作るの難しかったでしょ?ミスタも悪気があって爆発させたわけじゃないと思うけど・・・」
「そう!!シュウ流石!悪気があったわけじゃないんだって!」
第三者からの冷静な言葉を貰って少し落ち着いたのか、アイクもまぁそれなら…と態度を軟化させる。
「今度ホグズミードに行ったらバタービール奢るから!許してアイク様!」
「今度からはちゃんと僕に聞いてね?ならいいよ」
「もちろん!ありがとうアイク!」
仲直りをした2人に良かったと一息つくシュウ。仲間が喧嘩しているのは、精神衛生上たいへんよろしくない。
「仲直りしたところで、お昼食べようよ。きっとルカもヴォックスも待ってるよ!」
いつもの5人でのランチ。ミスタとアイクも約束を思い出したのか、3人は揃って仲間の待つ食堂に向かっていった。
~みぞの鏡~
「なんであいつらは出来損ないの穢れた血なんかと一緒にいるんだろうな」
これ見よがしに呟かれた悪意は、ミスタの耳に届いてしまった。そりゃ、自分だって場違いだと思わなくもない。ヴォックスは歴史のあるイギリスの純潔の家系、アイクは北欧で1番力のある魔法使いの家系、シュウなんて世界で最も古い呪術を扱う家系だ。ルカはマグルだけど魔法使いの世界にも名をとどろかせているマフィアの将来のボスだ。俺だけただの一般人。変身術は得意だけど、それ以外の成績は下から数えた方が早い。そりゃ誰だって、なんで俺があいつらと一緒にいるんだろうって疑問に思うだろう。俺だって疑問さ。たまたま最初の電車のコンポーネントが一緒だっただけなのに、こんなに打ち解けるなんて思っても見なかった。本当に運が良かった。結局寮は分かれてグリフィンドールは俺1人だけ。まあ一緒の寮なのはスリザリンのシュウとヴォックスだけなんだけど。それでも大切な友人と一緒にいるだけで悪意を持たれるのには、いつまで経っても慣れることはない。教科書をぐっと握りしめ、人気のない場所まで走る。気づくと俺は、古ぼけた鏡が1つある部屋に立っていた。こんなところに何で鏡がと思って見ると、びっくりした。俺がクディッチの優勝カップを持ちながら、ヴォックス達と肩を組んでいるのだ。驚いて後ろを振り返るが、もちろん誰もいない。一体何だってんだ。不思議に思いながらも、もう一度鏡を見るが映っている光景は同じ。夢のような景色。
「いいなぁ・・・」
思わず口に出てしまう。
「何が良いんだ、ミスタ?」
背後から急に聞こえた声に、びっくりして飛び上がる。
「ヴォックス!?なんでここに!」
「たまたまさ。可愛いMy sonがここらへんにいる気がしてね」
「ああ、そう・・・」
いつも通りのヴォックスに拍子抜けし、驚いたのがもったいなく感じる。
「ところでミスタはこんな鏡を見てどうしたんだい?」
「ヴォックスはこの鏡を見てどう思う?」
「ふむ、ただの鏡のようだが?」
ヴォックスにはこれがただの鏡に見えるのか。何となく自分が見た光景を言う気にはなれず、口を閉ざす。
「ところでミスタ、お前一緒に図書館で勉強するという約束はどうした?」
「あ、すっかり忘れてた」
「そうだろうと思ったさ。行くぞ、アイクに怒られるのを覚悟しておくんだな」
ヴォックスに手を引かれながら、部屋を後にする。一体あの鏡は何だったのだろう。
(ヴォックスにはこの鏡が何であるかは分かっていますが、本心を隠しはぐらかしそうだなと思ったらこんな感じになりました・・・)
~大切な友人~
「逃げるなんてやっぱり穢れた血は!」
そう大声で叫んでいるのはスリザリンの寮生だった。図書館で勉強するという約束を忘れたのか、図書館に現れないミスタを手分けして探している最中に入った嫌な言葉。自分たちの学年に穢れた血、つまりマグルは少ないがいないわけじゃない。ミスタやルカだってそうだ。でも穢れた血という考え方自体古臭いものだとシュウ自身は思っているし、日本の彼の本家では能力重視であるから出身は関係ない。シュウはその考えを好ましく思っているし、古臭い考えに囚われたままのイギリスの魔法界には嫌気が刺していた。
「ねぇ、それって誰のこと?」
急にシュウに話しかけられたのにびっくりしたのか、驚いた顔を見せる彼ら。
「ああ、なんだシュウか。ちょうどいい。君に言わねばならないことがあるんだよ。常々思っていたのだが、友人は選んだ方が良い」
「どういうことかな?僕の友人達は素晴らしい人ばかりだけど」
「それは違う!出来損ないの穢れた血がいるだろう?ミスタとかいう」
「そうそう!同じ穢れた血でもルカは、成績優秀だから許される!」
「だがミスタは違う!君も日本の有名な家の血を引くんだ。我らのような純血で優秀な生徒と付き合った方が良い」
途中からこいつらが何を言っているのか分からなかった。ミスタが出来損ない?ふざけるな。変身術において、彼の右に出るものはいないのに。思わず胸元の杖に手が伸びる。杖をべらべらと御託を述べるやつの顔に突きつけると、やつらはようやく僕が怒っているのが分かったらしい。
「校内で魔法の使用は禁止されている!」
「なら魔法を使わなければいい」
そう魔法がダメなら呪術を使えばいい話。僕にはそれが出来る。杖をしまい、代わりに式神を取り出す。本気なのが伝わったのかじりじりと後退していくやつらに、思わず嘲りの気持ちが浮かぶ。術式を発動しようと、指に力を入れた瞬間だった。
「だめだよ、シュウ」
ルカが横から待ったをかけた。
「離して。やつらはミスタを、ルカも馬鹿にしたんだ。報いは受けるべきだ」
「俺は気にしないさ。直接いう勇気もないやつの言葉なんか」
「でもミスタが!」
「俺たちが傍にいてフォローすればいい。それにミスタの能力に気づかないようなぼんくらどもにシュウが労力をかけるなんて、もったいないさ!」
ルカの言葉に血が上って熱くなった頭が冷めていくのが分かる。式神をしまい、やつらに背を向ける。
「何か俺に言いたいことがあるなら、言いに来るといい。いつでも歓迎する」
普段のルカとは違い、背筋がぞくぞくするようなまるでマフィアのボスがいるかのようなオーラ。言って満足したのか、ルカも僕の隣に並ぶ。
「ごめん、助かったよルカ」
「なんてことはないさ!でもシュウのPOGな術を見る機会を失ったのは残念だけどね」
「いつでも見せてあげるよ、ルカになら」
普段の調子に戻ったルカに、鬱々とした気持ちが消えていく。
「とりあえずミスタを探さないと!」
「それならヴォックスが連れてきたよ。だからシュウを呼びに来たんだ」
「そうだったの?なら早く行かなきゃ!きっと皆待ってる!」
「じゃあ走っていこう!きっとPOGだぜ!」
僕の手を取ると、走り始めたルカ。正直ついていくので精一杯だけど、思わず笑ってしまうほど楽しかった。