吹部パロまとめ「ルカ!走りすぎだって!」
「え、ごめん!」
「お前らはパカパカ指動かせば音変えられるかもしれないけど、俺は腕なの!トロンボーンパートにもっと思いやりの気持ちを持って!」
いつもの5人での自主練。楽しくなってルカがどんどん早くなるのを、ミスタが諫める。
「アイク、さっきの連符もう1回合わせない?」
「いいよ。ちょっと複雑で合わせづらいよね」
フルートのシュウとクラリネットのアイクは、2人の喧嘩もいつものことだとスルーし連符の調整に入る。ヴォックスはヴォックスで、リードの調整をしていた。いつも通りの自主練の風景。ここに後輩のアルバーン達や先輩のニナらが混ざることもあるが、今日は5人だけだった。
「もういいだろうミスタ、それを合わせるための練習だからな」
ヒートアップしてきたところで、ヴォックスがストップをかける。
「そうだね、ごめんルカ」
「俺が走ったのが悪いさ!ごめんよミスタ」
お互いしょんぼりとしながら謝罪しあう2人に、残りの3人はほっこりとした気分になる。
「じゃあもう1回合わせようか」
アイクの言葉に皆が同意し、メトロノームが動き出す。カチカチという規則的な音。
「1.2.3」
スッと全員の呼吸するタイミングが合う。音が重なり合って、綺麗なハーモニーが奏でられる。明るくどこまでも飛んでいきそうなルカのトランペット。それに合わせて伸びやかにオブリガードを演奏するミスタのトロンボーンが、メロディの幅を広げる。シュウの軽やかなフルートがきらきらと、メロディにアクセントを付け加え光り輝かせていく。アイクの正確な連符と、柔らかな音色は5人の演奏を1つに繋ぎまとめていく。そして全員を支えるヴォックスのバリトンサックス。5人の中で唯一の低音楽器だが、安定的なリズムを刻むことで全員の足並みをそろえ、メロディを支えている。お互いアイコンタクトをしながら、思わず笑みが浮かぶ。みんなで演奏するのが楽しくて仕方がない!
「「「「「できた!」」」」」
曲が終わり、余韻が音楽室に溶け込んだあと、5人は揃って歓声を上げていた。
「とってもPOGな演奏だった!」
楽しくて仕方がないといった様子のルカの言葉に、皆うなずく。
「この調子で、別の曲も合わせようぜ!」
演奏するのが待ちきれないのか、うずうずとした様子のミスタ。
「もちろんだとも」
「じゃあ僕、あの曲やりたいな」
「いいねシュウ。あれってテンポ120だっけ」
シュウの提案した曲のテンポにメトロノームを調節するアイク。5人の楽しさにあふれた演奏は、下校時間のチャイムがなるまで音楽室を超え校内中に響いていた。
「ああ、最悪」
リードの箱を抱えうめき声をあげるアイク。
「どうしたの、アイク?」
「ああ、シュウ。昨日新しくリードを買ったんだけど、良いのが2枚しかなかったんだよね」
クラリネットのリードは1箱10枚で約2000円。学生のお財布事情からすれば、なかなかに痛い値段だ。しかも入っているリード全てが演奏会で使える状態とは限らず、コンクール前には複数箱買う必要が出てくる。
「アイクはまだ1箱に10枚入っているだけいいじゃないか、俺なんて5枚だぞ」
これまた残念そうな顔でリードケースを片手に現れたヴォックス。彼が担当するバリトンサックスのリードは1箱5枚で約4000円。入っている量はクラリネットの半分なのに、値段は倍するのだ。
「ヴォックスの方はどうだったの?」
「1枚使えそうなのがあるくらいだな。コンクール前に買い足さないといけないだろう」
はあと深いため息をついて暗い雰囲気を漂わせる2人に、シュウは苦笑を浮かべるしかない。吹奏楽部は比較的お金がかかる部活であるが、その中でもリード楽器の金銭的負担は大きい。
「今度はきっと良いのがいっぱい入ってるよ!」
「そうだといいがな・・・」
「希望的観測だよね・・・」
絞りだした言葉も、2人には刺さらない。ああ、どうしようと思った時だった。
「シュウ~!アイク~!ヴォックス~!!!」
ルカが満面の笑顔で、こちらに走ってきた。
「やあ、ルカどうしたんだい?満面の笑顔じゃないか」
「ニナ先輩が臨時の部費を生徒会から貰ってきてくれたんだよ!それで、リード楽器の子たちにリード代の補助を出すって!」
ルカの言葉に、表情が明るくなる2人。
「最高だな、ニナ先輩は!」
「ありがとうニナ先輩!」
立ち上がって喜ぶ2人にシュウも、笑みが込み上げる。友が落ち込んでいる姿より、喜んでいる姿の方がいい・
「ヴォックス、ニナ先輩にお礼を言いに行かない?」
「ああ、もちろんだ!」
がたがたと音を立てながら、立ち上がった二人はニナがいる教室まで走って行ってしまった。
「あんなに喜ぶなんてPOGだな!」
「うん、そうだね」
今日はミスタも誘って5人で、アイクとヴォックスのリード購入に行こう。その後は5人で遊ぶのだ。放課後が一気に待ち遠しくなりながら、シュウは練習を再開した。
設定
Luxiem
ヴォックス→バリトンサックス
シュウ→フルート
ルカ→トランペット
ミスタ→トロンボーン
アイク→クラリネット
Noctyx
ファルガー→チューバ
浮奇→ホルン
サニー→トランペット
アルバーン→アルトサックス
ユーゴ→パーカッション
ペトラ→ピッコロ