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    nashireonnn

    @nashireonnn

    なしれおです。
    名前をよく間違われます。
    文字を書きます。
    その時好きなものをもちょもちょ

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    nashireonnn

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    月島の歯はギザギザでかわい〜〜〜ね♡
    って気持ちで書いた。出来てそうで出来てない、そのうちくっつく鯉→←月
    べったに投げたやつ。
    「白い歯を見せる」→「笑顔を見せる」って意味らしい

    ##鯉月

    いつかその白い歯を見せて「はの……」
    「……」
    「ほいほひょういろの」
    「シッ! 黙っていろ、月島……」
    「……」
     かれこれ、十分ほど。月島は執務室で上官である鯉登少尉に口の中をまさぐ られていた。歯列をなぞられ、上顎を摩られ、下顎を確かめられ……というのを延々と繰り返されていた。一列どころか歯のひとつひとつをなぞられ続け、じっと端正な顔に見られ続けるのだから、月島の心境としては訳がわからずたまったものではなかった。
     開きっぱなしの口からは唾液が溢れるが、目の前の将官は上等な布地の手拭いを月島に渡すとそれで逐一口を拭わせた。それが十数分も続くのだから、手拭いは月島の唾液に塗れてじっとりと濡れそぼっている。それを拭わずにいると、不機嫌そうに「月島ぁ」と眉を顰めて名を呼ぶものだから至極面倒臭い。潔癖症の気があるのに、なぜ部下の口腔を弄るのか。
     流石に顎が疲れてきたので声を掛ければ「黙っていろ」ときたものだ。理由も聞かされずにいきなり口を覗き込まれた人間の都合などお構いなしな上官に、月島は苛立ちが募り米神に青筋が立ち始める。ここいらで教育的制裁を課すべきか、と拳を握ったところでようやく月島の口は解放された。
    「うむ、ご苦労だった月島軍曹」
    「……はぁ」
     満足げに息を吐き、鼻の穴を膨らませる鯉登に、月島は顎関節を摩り疲労を和らげながら溜息混じりの返事をした。
    「あの、鯉登少尉殿。先程のアレは一体?」
    「ん? ああ、何、大したことではない」
     そう言って月島が握ったままであった手拭いを回収し、何事もなかったかのように席について書類を手に取り始めた鯉登に月島はもう一度青筋を立てた。
    「大したことない理由で私は口腔を弄られたのですか?」
    「なんだ、何を怒っているんだ月島?」
    「あなた、これで怒らない人間がいると思ってるんです?」
     理由を言え、理由を、と言外に滲ませれば、鯉登は唇をほんの少し尖らせて目線を逸らした。
    「少尉殿?」
     月島が苛立ちを隠さずに呼べば、鯉登は観念したように「わかった」と答えた。
    「貴様の歯がな……ほれ、ギザギザしておるだろう?」
    「え? ……まあ、そうですね?」
     鯉登に言われ、改めて舌で歯列をなぞる。言われてみればそうかもしれないが、それが一体なんだというのか。
    「少尉殿は綺麗な歯並びをしていますよね」
    「私は虫歯にもなったことがないからな!」
    「はあ。それで、私の歯が尖っているのがなにか問題でも?」
     得意気な鯉登を適当にいなし、続きを促す。鯉登はそんな月島の態度に少々不満気に口を歪め、しかし真っ直ぐと見つめながら続けた。
    「その歯は、訓練や任務で噛み締め削られただけではなかろう。知っているか月島、貴様は歯軋りが凄いのだ」
     そう言ってビシッ、と人差し指で月島を差す鯉登の表情はこの上なく真剣で、月島は少しだけ怯んだ。いや、しかしそれが一体どうしたというのか。
    「はあ、左様ですか……それは、申し訳ありません……?」
    「全く申し訳ないと思っておらんだろう……貴様、私にはとりあえず謝っておけばいいと思っていないか」
    「滅相もございません」
    「目を反らすな月島ぁ!」
     派手な音を立てながら椅子から立ち上がる鯉登に、月島は「お静かに」と淡々と嗜める。今にも詰め寄ってきそうな気迫の鯉登に、月島は脱線し続ける話題を戻す。
    「で、私の歯軋りが凄いから何だというのですか? 何か業務に差支えなどありましたか」
    「いや、貴様の歯軋りは慣れればどうということはない。……樺太にいた時のように共寝をしているわけでもないしな」
     どこか残念そうに言う鯉登は、きっと己の幻覚だろう。淡い気持ちを打ち消すように、月島は緩く瞬きをして鯉登を見やる。
    「月島よ、人は何故歯軋りをするのか知っているか?」
    「詳しくは知りませんが、心的なものが要因と聞いたことがあります」
    「うむ。気疲れや気苦労を重ねると人は心身に異常をきたす。そうならないよう、溜め込みすぎないよう、無意識にそれらを発散させるのだ。月島」
     書類が積み重なる机から再び離れ、鯉登はもう一度月島の前に立つ。視線を隠す軍帽は今はなく、月島の全てを見透かすような瞳を強く感じる。わずかな動揺を悟られぬよう、月島は奥歯を噛み締める。臆すことなどないと、月島という人間を見つめる男を信じろと己の内に言い聞かせた。
     視線を交わすため、負けじと鯉登の瞳を射抜くように顔を上げる。それを見て、鯉登はふ、と小さく顔を綻ばせた。月島の頬にそっと手を添えると、目の下をゆるりと母指でなぞりそのまま薄い唇に指を這わせた。されるがままに、しかし困惑した様子が隠せていない月島の顔に満足気に微笑む。
    「月島、お前は気苦労の男だ。規律を重んじ、忠義に篤く、部下を思いやり、上官を思い扱い、そして……思い余っている。私が言うのも何だが……鶴見中尉殿やその信奉者達と共に駆けた日々は、お前にとって多くの心痛があったことだろう」
     鯉登の言葉に、月島は目を見開く。口を開くが、発するべき否定の言葉が上手く出てこない。鯉登は焦る月島をただ穏やかに、しかし逃げることは許さぬとばかりに静かに見やる。自然と下を向こうとした月島の頭を、顎ごと持ち上げてしっかりと支える。
    「お前のその歯は、お前が己を守ろうとした証だ。私はそれを尊く思う。愛しいと思う」
     自罰的に己を律し、底無し沼に自ら浸かっていくような男の、あまりにも小さな抵抗の証。噛み締められ、擦り減らされ、それでもなお生きることを諦めないという輝き。この上官は、誰の目にも見えないほどの大きさの本音すら、月島のものならば取りこぼさずに拾い上げようとしている。疑う余地もなく、そう感じられた。
    「……だから、あんなに一所懸命に、私の歯を、見ていたのですか」
     あまりにも真摯で、そして眩く光輝く瞳に耐えられなくなり、視線を逸らしながら小さくそう尋ねると、鯉登は「ああ、うん……」と煮え切らない返事をした。
    「……鯉登少尉殿?」
    「いやっ、違う、違うぞ月島ぁ! 私は決して、やましい気持ちでお前の歯列をなぞっていたわけではない!」
    「では何故そんなに煮え切らない返事なのですか? 本当は何かやましいことがおありなんでしょう」
    「決めつけはいかんぞ月島っ! そんな目で見るな、不敬だ!」
    「ハッキリと言ってくださらないあなたが悪いんですよ」
     目を細め、スンと感情の欠落した表情で問い詰められて鯉登は慌てるが、月島は追及の手を緩めることはしない。もう相当に恥ずかしいことは言われているのだ、さらに何かを言われたところで死ぬわけでもなし。月島は慌てふためく鯉登の様子に、はぁ、と息を吐くと努めて穏やかな声音で言った。
    「鯉登少尉殿、怒っているわけではありません。俺は理由が知りたいだけなんです」
     何故、あんなに熱心に見ていたのか。何を想って、月島の歯を柔く撫ぜたのか。あたたかな笑みの理由はなんなのか。月島はそれが知りたかった、ただそれだけだ。
    「あなたのことを、知りたいのです。あなたを支える腕としても……ただの月島基としても」
    「!」
     月島の諭すような声音と本心から漏れ出たであろう言葉に、鯉登は目を見開き何かを叫びそうになった口を自身の手で縫いとめた。そのまま手を下ろし、ゆっくりと深呼吸をして己を律する。そうして、意を決して様子で言った。
    「……確認していたのだ」
     ぽつりと、鯉登が呟く。
    「私の力になれとは言ったが、私はお前に負担を強いてばかりはいないかと、お前を正しく導けているかと、少々不安になり……わ、わいん歯が前よりも削れちょったらどうしようかち思うたどじゃっどんいっちょん削れちょらんしむしろ前よりも少し綺麗になっちょったしこんたもしかしておいんおかげかと自惚れそうになったが恥ずかしゅうなってしもて」
    「しょ、少尉殿落ち着いてください、早口の薩摩弁は聞き取れません」
    「はっ、す、すんもはん」
     興奮した様子で早口に捲し立てる鯉登を落ち着かせ、「深呼吸ですよ」と背中をさすってやる。呼吸を整え、もう一度息を落ち着けた鯉登は、今度はゆっくりと言葉を紡ぐ。
    「私の決断を、私は悔いたりしていない。それはついてきてくれた部下達や、何よりもお前への裏切りだからだ。だからお前達には厳しい指示や無理難題を吹っ掛けることもある。だが、それとは別にお前にいらぬ心痛を抱かせるのも本意ではないのだ」
     鯉登は一度目を伏せると、瞼を持ち上げて月島を見る。その瞳は穏やかで、確固たる自信を持ち、執務室に入る夕陽を反射するように輝いていた。眩しい、と月島は目を細める。
    「お前の歯が、これ以上削れてしまわぬように私は歩み続けるぞ、月島」
     名を呼ばれ、その声音に沢山の想いが込められているのを感じて月島は少しだけ口元を弛ませた。ふ、と笑みを含んだ吐息を溢せば鯉登は一瞬ムッと眉を寄せたがすぐにそれを綻ばせた。穏やかな笑みはあたたかく、月島に不思議な心地を抱かせる。
    「では、私が歯列を確認された時はあなたに不安がある時ということですね?」
    「キェ! そ、そういうわけでは……いや、そうなのか……?」
     首を傾げ真剣な様子で悩み始める鯉登に、月島は今度はハッキリと笑い声を上げる。
    「つ、月島ぁ……!」
    「っふ、すみません……鯉登少尉殿」
     眉根を寄せて月島ににじり寄る鯉登を宥め、月島は今一度名を呼び返す。今まで何度も呼んだ名で、これからもきっと誰よりも呼ぶことになるだろうそれを、口の中で噛み締める。
    「私の歯の健康、あなたに託します。末長く」
    「! うむ、任せておけ月島!」
     そう言って、二人で未来を確認し合う。今は若い、互いを想う気持ちは、遠くない未来に固く結び合うだろうことを二人はまだ知らない。
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    Replies from the creator

    nashireonnn

    DONE一個前のやつの続き。
    間に合わなかった鬼太郎と親父が水木の肉と骨をせっせと集めてる話。
    ほぼ鬼太郎しかいない。鬼→水への愛を語るだけの話。
    このままならずっと一緒にいられるけどやっぱり生身の身体にも触れたい、心がふたつある〜!って話。
    もう一個オマケが出来たらまとめるかもしれない
    美味なるものよ、此処へ ──カラン、カラン。
     蛙がゲコゲコと鳴き、鈴虫がリィリィとさざめく。天辺には青白く輝く満月がいて、薄暗闇の世界を照らし続けている。
     ──カラン、カラン。
     小さな生き物たちの声だけが支配する空間に、鉄の筒に木を打ち付ける軽快な音が響き渡る。使われなくなって久しい廃工場のタンクの上に、一人小柄な少年が座って夜空を眺めていた。
     何かを待っているような、ただただぼんやりとしているような、どちらとも取れる様子の少年はカランカランと一定のリズムで足に履いた下駄の踵をタンクに打ち付けて鳴らす。
     ──カラン。
     足を動かすのを止めれば、途端に世界の音は自然のものだけになる。ゲコゲコ、リィリィ、さざめく音と、ザァとゆるやかに吹く風が少年の髪を揺らす。それらをジッと肌で感じながら、少年は腕に抱いた桐の箱をするりと撫でた。
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    nashireonnn

    DONE「しつこくて頑固なシミみたいなもんですよ、困りますね!」

    人外鯉登対人間鯉登×人間月島(転生パロ)
    夢の中で黄泉竈食ひさせようとするヤンデレ味の強い人外鯉登と、人間らしい感情で月島を愛してる鯉登がバチバチしてる話。またしても何も知らない月島さん
    (細かい設定はついったに画像で投げます)
    白無垢に落ちた血のように 広く、広く。果てなどないように見える白い空間になんとはなしに佇んでいると、不意に声を掛けられた。
    「どうした、月島軍曹?」
     掛けられた言葉に、ぼんやりとしていた意識を取り戻す。目の前にいつの間にか現れた男が、椅子に腰掛けながら優雅な手付きでティーカップを持ち上げている。静かにカップを傾けて中身を飲む仕草をすると、男は月島を見上げて言った。
    「突っ立っていないで貴様も座れ。上官命令だ」
    「……は」
     軍服に身を包んだ男にそう言われ、月島は椅子を引いて向かい側に腰掛ける。被っていた軍帽を脱いで机の端に置き、背筋を正して向かい合う。月島が着席したのを見て、男は机に置かれたティーポットを傾けてその中身を空いていたもう一つのカップに注いだ。それを月島に差し出し、男はもう一度手元のカップの中身を煽った。
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