Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    nashireonnn

    @nashireonnn

    なしれおです。
    名前をよく間違われます。
    文字を書きます。
    その時好きなものをもちょもちょ

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 🍙 👏 👍
    POIPOI 13

    nashireonnn

    ☆quiet follow

    なんぼでも見たい芸能人×一般人パロの鯉月書きかけ。
    ダレちゃったので尻切れトンボだし鯉登は本人が出てきてない。
    気が向いたら完成する。ちょっと健康的な月島とちょっと不健康な鯉登が書きたかったはず。

    ##鯉月

    潮騒は誰の名を告げるのか(仮) 潮騒が耳に馴染む。聴き慣れた故郷の海とは違う、穏やかな波音だった。聴いたことはないはずなのに、何故だか妙に懐かしく、どこか寂しい心地になる。
     遠くの方で波が揺れ、不規則に自分の足下の岸辺に飛沫が舞う。ウミネコが鳴く声が潮騒と混じり合い、世界を内包するような共鳴音に耳が満たされていく。
     感傷に耽りながら海を眺めていると、後ろから誰かに呼ばれたような気がして振り返る。そこに佇む人物を見やり、ゆっくりと海を背にして歩み寄れば、その人は柔らかく微笑んだ後、もう一度自分の名を紡いだ。
    「  」


     ──聴き慣れた、けたたましいアラーム音で目を覚ます。慣れた手付きで目覚ましを止め、のそりと起き上がる。カーテンから差し込む朝日に照らされた布団をぼんやりと眺め、くぁ、と大きな欠伸を一つした。
    「……今日もすごいスケールの夢だったな」
     そう独言て、もう一度欠伸をした。緩慢な動きで布団から立ち上がり、バリバリと頭を掻いてからうんと伸びをした。カーテンを開けて陽の光を取り込めば、安アパートの一室に明かりが灯る。よく晴れた青空が窓越しに見えて、少しばかり気分が高揚とした。
     月島がその「夢」を見始めたのは、成人してから程なくしてだった。時代設定は明治頃で、自分は日本陸軍の軍曹をしている。場面はその時々で変わり、戦争の最中だったり、上司との密談だったり、獄中だったり、人探しの聞き込みだったりと内容は豊富だった。
     普通の夢と違うのは、月島は見た内容全てを忘れることがなく、一つ一つを鮮明に思い出せるということ、そして「異様なまでにリアルな夢である」という点だった。
     初めて戦争の夢を見た時、あまりにも鮮明で強烈な光景に飛び起きて胃の中の物を全て吐き出してしまった。人を殴り殺す夢を見た時は、起きてからもその感触が拭えなくてずっと拳が震えていた。精神に不安を抱えているのだろうかと心配になり、一時病院にかかっていた事もある。
     結局、どんな治療も意味がなかったので月島は諦めた。諦めて、その壮大な夢をエンターテイメントとして楽しむことにした。壮絶なシーンも、映画のワンシーンだと思えばそこまで苦痛ではなかったし、鼻腔にこびりつく硝煙の香りや脳味噌が揺れるような爆撃音や振動も、最近流行りの映画館用環境技術と似たような物だと考えれば落ち着いた。人間、結局は慣れと諦めなのだ。
     そしてもう一つ。月島がその壮大な夢を「エンターテイメント」と片付けられるようになった理由がある。それは、月島が演じる役が「月島基」という全くの別人であるという確信が得られたことだった。
     一度だけ、近しい友人に夢の話をしたことがある。夢を見始めの頃で、通院を繰り返し気が滅入っていた頃だった。
    「それってさあ、月島くんの前世ってやつなんじゃない?」
     揶揄うでもなくそうあっさりと言う友人に、月島は思わず「漫画の読みすぎか?」と返した。友人と別れた後、やはり夢を見たが「これが前世だとしたら、やっぱり別人の話だ」と感じた。そう思うと、不思議と落ち込んでいた気分がマシになった。
     夢の中の月島の人生は酷いものだった。彼にとっての救いのようなものも、結局はただ依存する先が変わっただけで彼自身が本当の意味で報われて救われたわけではなかった。では、現実の月島はどうかと言えば、彼は新潟のごく普通の家庭に生まれ、親兄弟と程々に仲良く過ごし、学生時代は柔道や空手に力を入れ、時々喧嘩染みた事もしたが警察の厄介になるような真似は一度もしなかった。
     東京に進学した後も、例の夢を見るようになるまでは何一つ不穏なことのない人生を送ってきていた。同じ名前で、同じ顔で、限りなく近い性格をした、まったくの別人。それが夢の中の月島だった。
     世の中には前世の繋がりがどうとか、恋人同士が惹かれ合うだとか、そんな夢物語が溢れているが残念なことに月島はロマンチックな思考の持ち主ではなかった。前世は前世、今は今。良くも悪くもドライな男は、そうやって悪夢を劇場で観る映画に切り替えたのだった。
     夢には多くの人物が出てくる。そして、それらは今の月島の周りにいる人物と重なる者たちが多かった。上司や同僚、部下や後輩、知人に友人……数えきれない程の顔見知りが登場する。揃いも揃って同姓同名の似た性格なものだから初めのうちは混乱する事もあったが、今の月島はそれも楽しんでいる。今度は誰がどんな役割を果たしていくのか、戦いの行く末はどうなっていくのか。
    「む」
     時計を見れば、いつの間にか余裕のない時間になっていた。手早く朝食を掻き込み、支度を整えて家を出る。社会人歴ももうすぐ十年を越える。奇妙で壮大な夢を見る以外は普通の日常が、今日も始まる。
     せかせかと、決して長くはない足を動かして慣れた道を歩く。そういえば、と月島は今朝の夢を思い出した。今朝の夢には、珍しくなんの暴力もない、至極平和なシーンがあった。月島の恩人であり、生きる意味の一つであった上官に会いたいと駄々をこねる若者を宥めたり、そんな彼と何故かメンコ勝負をするよくわからない展開。穏やかで、しかし心地の良い夢だった。
     今の所、夢の中に出てきた登場人物たちは多少の漏れはあれど月島のよく知る人物ばかりだった。しかし、一人だけ一度も現実で出会ったことのない存在があった。
     その人物は年下の青年将校で、月島はその青年の教育係、あるいは補佐の役割を担っていた。整った顔立ちに豪胆な性格の薩摩隼人は、月島の前では情けない姿を多く見せながらも、軍人として、そして上官として立派に育っていった。子を育てたことなどないが、きっと成長していく我が子を見守る気持ちはこういうものと似ているのだろうと、傍観者である月島は感じた。
     一度も見たことがないし、その名前を聞いた事もないが、夢の中に出てくる人々の中でも一際月島との関係が濃ゆい存在であるからかとても気になっていた。もしかしたら、いつか似たような人に出会えるかもしれない。呑気な自分の思考に、図太くなったなぁと心の中で独言た。
     駅まであと一息と言うところで、横断歩道の信号が赤に変わる。ついていない、と心中で舌を打つ。時計を確認して、信号が変わった瞬間に走れば間に合うと判断した。顔を上げ、何とはなしに見つめた先にあった広告が目に入り、月島は思わず呟いた。
    「鯉登少尉だ」
    「え?」
     不意に口をついて出た固有名詞に、隣に立っていた人が反応したのに気が付いて月島は慌てて口を押さえた。
    「……」
    「……」
     三秒ほど口を押さえた後、何事もなかったように再び信号を見つめる。そして、隣からの視線を無視しつつ信号が青になった瞬間駆け出した。急いで改札を抜け、電車に飛び乗る。どう考えても自身の行動が不審者のそれだったことを反省しながら少しだけ乱れた呼吸を整えた。
     脈拍や呼吸が落ち着いた頃合いに、ふと車内の電子広告を見やれば、先程見た広告のCMが流れているのが目に入った。清涼飲料水の広告に映る青年は記憶にある夢の中の「鯉登少尉殿」で、月島がずっと出会えなかった人物その人だった。普段は業務連絡程度にしか使わない携帯電話で、彼の名前を検索する。今までの傾向で行けば、彼もまた夢の中の人物と同姓同名なのだろうと思っての行動だった。
    「期待の超大型新人俳優……へぇ」
     膨大な量の検索結果に圧倒されながら、ひとつひとつ情報を拾っていく。鹿児島出身の二十歳、実家は財閥一族で生まれも育ちも大変よろしい、その甘いルックスも相俟ってファンからのあだ名は「王子」。SNSには「実家のコネ」だの「事務所のゴリ押し」だのとアンチコメントも少なくないが、「でも演技力は本物」という批判したいんだか称讃したいんだかわからない感想も多く見られた。
     王子、というあだ名は確かに見た目に合っている。しかし、きっと彼も夢の中の「鯉登少尉」同様に一筋縄にはいかない性格をしているんだろうと容易に想像がついた。「キェエエ!」という猿叫と、軟らかな身体をぐにゃりと折れ曲がらせている姿を思い出して笑いそうになり、頬の内側を噛んで堪える。
     情報をいくつか漁っているうちに出てきた事務所のホームページを眺めて、はたと気が付いた。見覚えのある社名、グループ企業。
    「……うちの本社だ」
     なんと、「王子」の所属先と月島の勤める会社は業態こそ違えど同じ会社だった。最も、月島の勤務先は営業や経営補佐がメインであり、新規事業の芸能部門、しかも本社直轄の所と接点などあるわけもない。すごい偶然もあるものだなぁ、と思いながら携帯電話を仕舞う。今後もきっと、何か更なる偶然が重ならない限り、彼と会うことなどないのだろうと月島はぼんやり考えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    nashireonnn

    DONE一個前のやつの続き。
    間に合わなかった鬼太郎と親父が水木の肉と骨をせっせと集めてる話。
    ほぼ鬼太郎しかいない。鬼→水への愛を語るだけの話。
    このままならずっと一緒にいられるけどやっぱり生身の身体にも触れたい、心がふたつある〜!って話。
    もう一個オマケが出来たらまとめるかもしれない
    美味なるものよ、此処へ ──カラン、カラン。
     蛙がゲコゲコと鳴き、鈴虫がリィリィとさざめく。天辺には青白く輝く満月がいて、薄暗闇の世界を照らし続けている。
     ──カラン、カラン。
     小さな生き物たちの声だけが支配する空間に、鉄の筒に木を打ち付ける軽快な音が響き渡る。使われなくなって久しい廃工場のタンクの上に、一人小柄な少年が座って夜空を眺めていた。
     何かを待っているような、ただただぼんやりとしているような、どちらとも取れる様子の少年はカランカランと一定のリズムで足に履いた下駄の踵をタンクに打ち付けて鳴らす。
     ──カラン。
     足を動かすのを止めれば、途端に世界の音は自然のものだけになる。ゲコゲコ、リィリィ、さざめく音と、ザァとゆるやかに吹く風が少年の髪を揺らす。それらをジッと肌で感じながら、少年は腕に抱いた桐の箱をするりと撫でた。
    4144

    nashireonnn

    DONE「しつこくて頑固なシミみたいなもんですよ、困りますね!」

    人外鯉登対人間鯉登×人間月島(転生パロ)
    夢の中で黄泉竈食ひさせようとするヤンデレ味の強い人外鯉登と、人間らしい感情で月島を愛してる鯉登がバチバチしてる話。またしても何も知らない月島さん
    (細かい設定はついったに画像で投げます)
    白無垢に落ちた血のように 広く、広く。果てなどないように見える白い空間になんとはなしに佇んでいると、不意に声を掛けられた。
    「どうした、月島軍曹?」
     掛けられた言葉に、ぼんやりとしていた意識を取り戻す。目の前にいつの間にか現れた男が、椅子に腰掛けながら優雅な手付きでティーカップを持ち上げている。静かにカップを傾けて中身を飲む仕草をすると、男は月島を見上げて言った。
    「突っ立っていないで貴様も座れ。上官命令だ」
    「……は」
     軍服に身を包んだ男にそう言われ、月島は椅子を引いて向かい側に腰掛ける。被っていた軍帽を脱いで机の端に置き、背筋を正して向かい合う。月島が着席したのを見て、男は机に置かれたティーポットを傾けてその中身を空いていたもう一つのカップに注いだ。それを月島に差し出し、男はもう一度手元のカップの中身を煽った。
    3232

    recommended works