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    youokita

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    歪みの国パロディの第2話です!pixivでは書かなかったエンディングの1つを書いてますのでネタバレ厳禁な方は要注意!

    歪みの国のさとし第2話「…ねえ、ほんとにここ?」


    さとしは傍らに立つブラックを見上げながら尋ねた。


    「ここです」

    「でもここ…公園だけど?」


    またいつの間にか人の消えた街を抜け、ブラックに連れられさとしはお茶会があるという公園までやってきた。道中の会話から肝田という兄弟二人がここでお茶会をしている、という事は分かった。そして、お茶会という程なので、イギリスの庭園のような所で優雅にお茶会をすると緊張していたさとしは、家からそう遠くない公園に連れてこられて拍子抜けした。


    「どんな所でもお茶は飲めます」

    「それは…そうだけど」

    「さとしくんは砂場が嫌なのですか?」

    「いや、そういう事じゃなくて…」



    ふいっと公園の中を見ると、東屋の中にログテーブルがあり、そこに二つの人影が見えた。暗くてよく見えないが、お茶会の知識も経験も無いさとしでも分かるほど、普通にお茶を飲んでいる動きをしていなかった。さとしは目を閉じて軽く深呼吸して心の準備をし、勇んで東屋へ向かった。



    ログテーブルには白いクロスがかけられ、銀色のトレーに銀のポット、そして銀色のカトラリーが並べられ、白い陶磁器のティーセットがあり、サンドイッチやスコーン、クッキーが美味しそうに並べられており、ここだけ見たらかなり本格的なお茶会に見えた。
    しかしそれよりも圧倒される程の時計が置かれており、余りの多さに足元にまで時計が置かれていた。
    そしてお茶会は荒れていた。食べこぼしがあちこちにあり、カップや皿も割れていた。少なくない数のカトラリーが地面に落ちており、ナイフやフォークが机に突き刺さっている。極めつけにテーブルの中央のチョコレートケーキに小さなアンティーク調の時計が突っ込まれていた。


    「…か、かなりアクロバティックにお茶会楽しんでいるんだ…」


    かなりの荒れように逆に清々しい気分で感心していると、椅子の上に立ち上がってカップに紅茶を注いでいた人物が勢い良く叫んだ。


    「遅いですよぉ!さとしくぅぅぅん!!!」


    ネットリとした声がして驚いていると更に叱られた。


    「今何時だと思ってるんですか!」

    「え?えーと…」


    さとしはテーブルの上に散らばる時計を見て、三時と確認した。『三時?夜中の?』と不思議に思いながら素直に答えた。


    「三時…かな」

    「三時になってからどれぐらい経ったと思ってるんですか!」

    「ええ?三十秒くらい?」

    「違います!気が遠くなるくらい長かったです!」

    「…?時計を見る限り三時になったばかりだけど」

    「そうですよ!三時になったばかりです!でも三時になったのはずっと昔の事なんです!!」

    「?」


    『なぞなぞかな?』と首を傾げているとそれまでお茶を飲んでいたさとしより年上の青年が話しかけた。


    「おい、少年。この兄者自らが茶を淹れるからありがたく飲むがいい」


    と青年はお茶を淹れてくれたが、勢い良くカップを置いたせいでお茶が飛んできた。しかしブラックが咄嗟に弟の方を引っ張ってさとしを庇ったので、さとしは無事だが弟の方はお茶が全て被った。


    「あっつー!!兄ちゃん熱い!!」

    「ありがとうブラック…あの、シロウサギを探してるんだけど…知らない?」

    「あ!あいつか。あいつなら通ったぞ。なぁ弟者」


    紅茶を飲もうとした弟の背中をバシン!と背中を叩いた事で液体は全て零れそのほとんどが弟にかかってしまった。


    「あちちち!は、はい。確かに通りましたぞ」

    「いつ通ったの?」


    二人からは真逆の答えが返ってきた。



    「ついさっき」

    「だいぶ前ですが」

    「……どっち?」

    「三時になる前でしたぞ」


    どうしてもお茶を飲みたいのか、弟の方はもう一度紅茶を並々まで注ぎ、カップを持たずに身をかがめてズズッ…とお茶を飲んだ。さとしは『マナー違反だろ…』と心の中でツッコミつつ肝田兄弟から得た情報を整理した。


    「えーと…今は三時になったばかりだけど、三時になって随分経つから…三時になる前にシロウサギがここに来たって事は…ついさっき来た…でもそれは随分前の事で…」


    整理しようとすればする程、さとしの頭の中はグルグルと回った。とりあえずいつ来たかは置いといて、どこへ行ったのか聞く事にした。


    「どっちに行ったの?」

    「あちらです」


    弟が指さした先はバラが絡んだ美しい門があった。そこは公園のバラ園で、入り口のアーチには白いバラの蔓がびっしりと絡んでいた。


    「ありがとう!行ってくる!」


    さとしがバラ園の門に駆け寄ると…


    「さとしくん!!」


    背後から珍しく緊迫したブラックの声が飛んできた。


    「え、なん…痛っ!!」


    振り返るより早くさとしの右腕に痛みが走った。


    「な、なんだこれ…!?」


    バラの蔓がさとしの右腕に絡みつき、ギリギリと腕を締め上げ、肉に棘がくい込んだ。


    「痛い!」

    見る見るうちにさとしの右腕が赤く染まった。


    「放せ!」


    さとしは振り切ろうとするが蔓の力は強く、さとしをジリジリと自分の方へと引き寄せ、さとしの首に蔓が伸びようとした。さとしは絡まってない左手で抗うが、抗えば抗う程、棘はさとしの皮膚を引き裂いた。


    「た、助けて!」

    「お茶会してる時に席立つのはマナー違反ですぞ!」


    兄弟は体をガタガタ震わせながら首を振った。


    「ブラック助けて!!」


    するとブラックは音も立てずに駆け寄り、余りに静かに素早い動きで瞬間移動したのかと驚いた。そして、いつの間にか握っていたナイフで、勢い良く自身の腕を斬った。


    「な、なんで自分を…!?」


    するとさとしの腕に絡みついていた蔓はスルスルと外れていき、真っ直ぐブラックの腕に絡みついた。ブラックは自分に絡みつく蔓は無視してさとしの腕に絡む残りの蔓の引き剥がしにかかった。引き剥がす際、皮膚が引き裂かれたが、蔓から解放されたさとしは地面に転がった。そしてさとしに絡まっていた蔓は、さとし以上の勢いでブラックに絡まった。


    「ブラック!」

    「あ、あれは、まずいかも」


    ガタガタ震える兄弟は放置して、さとしはブラックを助けようと手元にあった花瓶を掴み、バラに投げつけた。しかし、バラは少しだけ身をくねらせたが、解放しようとしなかった。
    これじゃ駄目か。と今度はスコーンとサンドイッチの乗った三段トレーを投げつけた。


    「あああああ!!!何してるんですか!?」


    さとしは叫び声を無視して、手当り次第物を掴んで投げつけた。大量の時計、ケーキ皿、銀のトレーにその上に乗ったカップも投げつけたが、それでも蔓はブラックを解放しない。


    「まだ駄目なのか!」

    「さとしくんやめるのです!お茶会出来なくなりますぅ!」


    テーブルの上を駆け寄ってきた男が止めようとさとしの腕を掴んだ。その瞬間、さとしの頭に血が上った。


    「早く、早くしないと、ブラックが!オレのブラックが、死んじゃう!!」


    するとさとしは男を背負い投げするように抱き上げた。


    「な、ななな、何を!?」

    「うるさい!邪魔するな!俺はブラックを助けるんだ!!!」

    「いーやーぁぁぁぁ!!!」


    普段じゃ有り得ない馬鹿力で弟をバラの蔓目掛けてぶん投げた。すると蔓も弟の血はマズイと思ったのか、激しく蔓がうねった拍子に、ブラックに絡んでいた蔓の力が弱まり、なんとか蔓から解放された。

    解放されたブラックを見てさとしは地面にへたりこんだ。


    「こういうのって火事場の馬鹿力って言うのかな…?」






    真っ暗なブラックの服が赤のまだら模様になってしまっていて、とても小さな声で謝ったがブラックは全く気にしていなかった。


    「さとしくんおバカですね。白バラは血を吸うのです。血を吸って赤くなるのです」


    ちらりと見ると先程まで白かったバラが薄らとピンク色になっていた。普段ならそんな馬鹿なと一蹴するが怪我した事に変わりは無いため、さとしはひたすら謝った。


    「ごめん…ブラック…ケガを…手当てしないと…」


    さとしの声は震え、体も震わせながら右往左往した。
    さとしの頭の中は、もしブラックがいなくなると、自分の味方は誰もいなくなる。とかなり大事に考えていた。


    「オレ…オレ…」


    オロオロするさとしの手首を、血だらけのブラックの手が掴んだ。


    「ブラック……」


    きつく掴まれた手首が熱くなった。


    「…」

    「………あ、あの…?」


    どうしたの、と言おうとしたさとしは息を飲んだ。

    一瞬、ブラックの顔が歪んだ気がした。

    さとしは見た事が信じられず、目を擦った。


    「どうかしました?」


    そう言ってブラックはさとしの手を離した。さとしは穴の空くほどブラックを見つめた。


    「なんでもない…」


    いつの間にか体の震えは収まっているが、今のさとしには何かを考える事が出来ずにしばらく呆然とした。



    それからしばらくして冷静さを取り戻したさとしは、数枚ナプキンを手に取った。


    「ブラック。キズを洗いに行こう」

    「必要ありません」


    さとしが動揺してた間に悪魔の力でブラックの傷とボロボロになっていた服は完全に治っていた。ブラックの傷が治ったと安心すると、今度は自分自身の傷が痛くなり顔を歪ませるとブラックはさとしを水場まで連れていき、丁寧に腕の血を洗い流してくれた。
    改めて傷を確認すると、それ程深手な傷ではなく、放っといても大丈夫な感じで、ホッとしている間にブラックがナプキンで傷を綺麗に拭き、今度は清潔そうなテーブルクロスの一部を兄弟の許可なく引きちぎると丁寧に巻いてくれた。



    「ありがとう。でも、こんな危ない門はどうやって通ればいいんだ?」

    「バラが眠ってる時に通ればいいのです」

    「眠る?バラっていつ眠るんだ?」

    「四時になれば眠ります。バラは早寝早起きですので」

    「四時…」


    さとしは荒れ果てたテーブルに散らばる時計を見つめた。あれだけの騒動があったにも関わらず、時計は三時を差しており、ピクリとも針は動いていなかった。


    「ここ三時ピッタリなんだろ。いつ眠るんだ?」

    「四時にならないと眠りません」

    「だからいつ四時になるんだ?」

    「時計の針が進めば四時になります」

    「…分かった。四時になればいいんだな」


    するとさとしは適当な時計を手に取り、背面にある時計の針を動かすネジを捻った。しかしネジは非常に固くて回らなかった。


    「あ、あれ?」

    「おバカですねぇ!時計を動かせるのは【時計くん】だけですよ!」


    涙を流しながら笑い飛ばすブラックにイラッとしたが、ここで怒っても進まないと分かっているさとしは若干睨みながら質問した。


    「時計って?」

    「【時計くん】ですよ」

    「…じゃあその時計くんに針動かして貰えるようにお願いすればいいの?そろそろ二人もお茶会そろそろ飽きたのじゃないの?」

    「それが…時計くん…捕まりました」

    「捕まった?誰に?」

    「女王陛下に…」

    「女王陛下?」

    「時間くんは体がないから首もないんです。だから捕まっちゃったですぅ!」

    「はぁ?」


    うわあああと泣き出した弟にどうしようかと考えていると


    「女王様は首のないものが嫌いですから」


    ブラックがよく分からない補足をしてくれて、意味はよく分かっていないが、さとしなりに考えてみた。


    「えーと、女王様は首がないものが嫌いで、時間くんは首がないから怒りに触れて捕まってしまった…と。じゃあオレ達は大丈夫だよな?首あるから。……オレでも会いに行く事出来るのか?」

    「もちろん会えますよ。さとしくんですから」

    「そ、そう?じゃあ、女王様に時間くんを出して貰えるように頼んでみるよ。女王様の所はどう行けばいいんだ?」

    「土管を通って海を渡れば行けますよ」


    ブラックが指差す方を見ると公園の砂場の向こう側に土管がポツンと二つ寝転がっていた。


    「土管って…あれ通ったってここに出るんじゃ」

    「大丈夫です。赤い土管を通りましょう」





    土管は三メートル程の長さで、向こうの景色が見えていた。土管の縁に【でぐち】と書かれており、逆に回るとそちらには【いりぐち】と書かれていた。【いりぐち】側から向こうの景色を見ても、兄弟二人がギャーギャー騒いでる景色しか見えず、どこかに繋がってる感じはまったくない。


    「仕方ない。騙されたと思って入ってみるか」


    そう言いながら青い土管に入ろうとするとブラックがグイッと引っ張った。


    「赤い土管です」

    「あれ?そう?ボンヤリしてた…」


    そう言いながらさとしは赤い土管へと入った。

    土管の穴の向こう側は入る前に見た夜の公園の景色が見えていた。さとしはここから入っても公園に出るんじゃ?と半信半疑の気持ちのまま四つん這いで土管を進んだ。
    すぐに出られると思っていたが、景色が近付いてこない。むしろ進むにつれて出口の風景は暗くなり、段々と距離感が掴めなくなってきた。


    「これちゃんと進んでいる…?」

    「心配ありません」


    そう言われ真っ直ぐ進んだが未だに出口は真っ暗なままであった。さとしは不安になり後ろにいるブラックに声をかけた。


    「本当に大丈夫?」

    「心配ありません」


    そのまま更にしばらく進んだが一向に出口の向こう側が見えないままだった。


    「あの…全然出口近づいてこないけど…」

    「心配ありません」

    「……」


    さとしはピタリと止まった。こういうのどこかで聞いたような…?と考えて、【三枚のお札】という昔話を思い出した。山姥から逃げるお坊さんが厠でお札に身代わりをさせたという描写と同じだと気づいたさとしは、バッと後ろに居るはずのブラックの方を振り向いた。そこにはいつもの笑顔のブラックがいた。


    「どうかしました?」

    「なんでもない…」


    茶番はここまでにして前に進めと言われた気がしたさとしはそのまま黙々と土管を進んで行った。





    長すぎる土管を進み、やがて出口が徐々に明るくなってきた。


    「やっと出口だ…」


    ほぼ休むことなく進んだ為、腰が痛くなってきていたさとしはほっと息をついた。

    土管から這って出ると手が白い砂を掴み、ザァ、と波の音がした。顔を上げるとそこには深い、深い、赤い水の海が広がっていた。海上には赤いモヤがかかっており、白い砂以外赤一色の世界が広がっていた。
    潮の香りはしない事から、もしかすると海ではないかもしれない、と思ったが、舐めて確かめようとは思えなかった。
    モヤの中に黒い影が薄ら見え、目をこらすと…


    「…あっ!」


    そこには白の青年が海から数歩入った所にさとしに背を向けて立っていた。今まで会った中で一番近くの距離にいて、心臓が跳ねた。さとしはゆっくりと砂を踏みしめながら白の青年に近づいた。
    逃げようとしない白の青年にさとしの呼吸は早くなる。さとしの足を赤い波がかかった。

    ﹣手を伸ばせば届く﹣

    その事実にさとしの心臓は激しく音を立てた。


    ﹣本当に、捕まえて、いいのか?﹣


    そう考えてしまい、さとしは捕まえようとした腕を下ろした。


    ﹣怖い…。捕まえてしまうと、戻ってこれなくなる気がする﹣


    白の青年から後ずさろうとした足が動かなかった。驚いて足元を見ると、無数の手が足首を掴んでいた。


    「うわぁぁぁっ!!!」


    そしてそのまま物凄い力でさとしは海に引きずり込まれていった。
    一歩くらいしか海に入っていなかったのにまるで沖にいるかのように深かった。さとしはどんどん沈んでいき、視界が赤い水で満たされた。
    視界の端で何かが揺らめき、そこを見ると腕があった。


    ﹣この腕、オレの?﹣

    腕はさとしの腕だった。気がつくと自分の足、腹、首がさとしの周辺に腕が浮いていた。

    ﹣これは、ちぎれて血の海をたゆたうオレの体たち﹣


    濃紺の髪を揺らめかせて頭が近づいてきた。表情はとても幸せそうに笑っている。


    「これは、オレの血」


    生首の口が動いた。


    「そして、お前の血」


    ﹣オレ?でもこんなに血を流したら死んでしまう﹣


    すると生首が笑いだした。


    「心だって傷つけば血を流す」


    ﹣心の血?オレ、そんなに痛かったのか?﹣


    生首は笑ってくるりと向いた。


    ﹣そうなんだ。そんなに悲しかったんだ﹣

    ﹣だから、オレは……﹣



    その瞬間、さとしは力強い力で海上へ引き上げられた。


    「さとしくん、血の海は底なしです」

    ブラックはそう言って笑った。さとしは咳き込んで赤い水を吐き出した。


    ﹣波間を漂うオレのかけら。今のは幻?﹣


    「…オレが、いた。海の中、バラバラで…それで…」

    「海で泳ぐのは危ないですよ」


    そう言いながらブラックは翼を広げてさとしを抱き上げるとゆっくりと飛び出した。さとしはブラックの肩に掴まりつつ反論した。


    「引きずり込まれたんだよ。手がいっぱい出てきて…」


    足首を掴まれた感触を思い出しさとしの身体はブルっと震えた。


    「さっきのはなんだったんだろう…?そうだ!ねえ、さっき真っ白な男の人見なかった?」

    「見てません」

    「さっき…」

    「海は危険がいっぱいです。恐らく…幻覚を見たのでは?」

    「そう…かな」

    「さ、行きましょう。女王さまのお城は血の海の向こう側です」







    ﹣﹣﹣﹣﹣
    青い土管を選んだら?


    さとしは青い土管に入った。穴の向こう側は夜の公園が丸く見えて、「このまま進んだって、公園に出るだけじゃん…」とひとりごちた。



    ﹣あおーくなーれ…

    「?」


    どこからか声がしてさとしは進むのを止めた。その声は、とても遠くから聞こえるような、すぐ耳元で囁いているような不思議な声だった。



    ﹣あおーくなーれ…。あおはしあわせ。えいえんのいろ。あおーくなーれ…


    かちゃん


    手が突然固い何かに触れて、手を退けるとそこにはナイフが落ちていた。

    それは柄も刃も青いナイフで鞘はどこにも無かった。珍しいナイフだな、とさとしは何気なくそれを拾い上げた。すると、ナイフを握っていた手がぬるりと滑ってナイフを落としてしまった。



    「え」

    真っ青なナイフが真っ赤に染まっていて手を切ったのかとさとしは自分の手を確認した。すると腕も真っ赤に染まりきっていた。




    「なにこ…っ!?」


    悲鳴はゴポリと噎せて音にならなかった。口から血が溢れ出て、耳の中もゴポゴポと水がながれるような音。視界も赤く塗りつぶされる。耳からも目からも血が溢れ出し、身体中の穴から血が流れ出していた。



    ﹣あおーくなーれ…あおーくなーれ…


    低くて高い笑い声が響いた。



    ﹣あおーくなーれ…あおーくなーれ…


    呆然とするさとしの身体から、血は一滴残らず染み出していった…。










    土管から外に出ると外はもう日が高かった。見上げると清々しい青空が広がりさとしは一人微笑んだ。
    泣き声が聞こえてそちらを見ると、小さな男の子がブランコに乗って泣いていた。心配になったさとしは驚かさないようにゆっくりと近づいた。



    「こんにちは。キミ一人で何で泣いているの?」


    男の子は真っ赤に泣き腫らした目をあげた。



    「良くない色」


    小さく呟いてさとしは眉を寄せたが少年は気づいておらず泣いていた理由を話した。



    「お母さんが…お母さんに怒られたんだ…何も悪いことしてないのに、ぶってくるんだ」

    「そうなんだ…かわいそうに」


    そう言って少年の頭を撫でると少年は大きな声でまた泣いた。

    少し落ち着いたのを見計らって、さとしは閃いたと口を開いた。



    「そうだ!赤い色が良くないんだ!」

    「あかいいろ?」

    「ほら、キミの目も、ほっぺたも真っ赤…」


    そう言ってさとしは少年の頬をさり気なく触った。



    温かい。生命の温度。こんなものがあるから悲しいんだ。



    不思議な事を言うさとしに少年は不思議そうに見上げた。



    「お兄ちゃんは、顔青いよ?病気?」

    「ううん。違うよ。お兄ちゃんは幸せだから青いんだ」

    「しあわせ?」

    「ねえ、キミも幸せにしてあげようか?そしたらお母さんにぶたれても悲しくないよ」

    「ほんと?」

    少年は涙に濡れた目をキラキラと輝かせて、さとしは満ち足りた思いで微笑んだ。



    「そうだ。ミンナ幸せになるんだ。オレと同じように」


    さとしは、後ろ手に握った青いナイフの感触をそっと確かめた。



    「ねえ、青は、好き?」
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    youokita

    TRAINING書く予定無かったけど寝てる時に「風魔小太郎もイかせてやれ」とお告げが聞こえたので書きましたが、どのパターンでイカせるか悩み中。
    どれが1番良いですか?
    風魔小太郎氏も抜いてあげないと辛いだろうから佐助さん抜いてあげて①佐助がお口でご奉仕するよ☆イマラ…からのゴックンって正にレイプ物のワンシーンだね( ◜ᴗ◝ )

    いざ佐助の後孔に挿入しようとする小太郎。しかし佐助は小太郎のサイズを見て、こんなのが入ったら自分のアレが裂けてしまうとゾッとして挿入しようと動かす小太郎の腰を抑えた。



    「…」

    「なぁ!これ絶対入らないからせめて口でシちゃダメか…?」

    「…」


    抑えつけられた時は不満そうにした小太郎だが暫く悩んだ末、佐助の後孔から引いていきホッとすると腕を引っ張られ無理やり起こされた。



    「うわ!」


    しかし起こされたと思ったらそのまま倒れ込み、倒れた先は胡座をかく小太郎の股の間で、佐助の目の前には先程自分の中に入ろうとしてきたイチモツがありその大きさに佐助はゾッとした。チラリと上を見ると兜を被っていて目元は見えないがどこか期待した様子の小太郎がこちらを見下ろしていて、観念した佐助は恐る恐る口に咥えた。先走りのせいか独特の苦味と匂いがしてきて今すぐにでも口から離したかったが口ですると言ってしまった手前、佐助はせめて目を閉じて精一杯小太郎のモノを口で奉仕した。
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