割れるような歓声が大地を揺らす。
倒れ伏したヴィランと、急いで拘束にかかる警察。泣き崩れる観衆や抱き合って喜びを分かち合う人々。
「ありがとう!ヒーローデク!!」
誰かがあげたその言葉は空気に波及して、熱としてその場に渦巻く。ありがとう、ありがとう、と口々に呟かれたその言葉に、誰もいない湿った路地裏でボロボロの青年が静かに目を閉じた。
胸糞の悪い事件だった。
警察やプロヒーローを大幅に巻き込むこととなったこの事件の幕を引いたのは第二の平和の象徴と名高い新人ヒーロー、デク。
戦闘時に大立ち回りをして、自らも半端でないダメージを背負いながらも最終的には解決にこぎつけた。「英雄」ともてはやされる青年は、表で自らを待ち構えるカメラのフラッシュを感じながらも路地裏に座りこんだまま立てずにいる。
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