ブレッシング・オブ・セイント EX『貴方のために練り上げた、当世最高の呪符であると申し上げましょう。』
『それでは、拙僧は。是にて。』
──。
「ハァ~、コレがお返し…」
カルデア内マイルームで藤丸立香は蘆屋道満からのバレンタインの返礼品を見ながらため息をついた。
三方に置かれた数枚の和紙。人形(ひとがた)に似た形に目を模したであろうチャーミング(?)な意匠のその呪符は見た目はわからないがなんとも禍々しい雰囲気を漂わせている。
見返りを求めるつもりは無いと思いたいが日頃の感謝と想いがあり聖女からの祝福を得られるという“特別なチョコ”を渡したのだが先のやり取りを思い出し少し複雑な気分に思っていた。
「たっぷりの《アレ》ねぇ…」
呪符を眺めながらまたも独り呟く。
“……何か裏があって実はイイものなのでは?
等と思ってはいけませんよ”
「!?」
遠くから誰かの声が聞こえたような、気のせいのような、そんな気配を感じて部屋を見回すが部屋には自分1人しかいない。
(まぁ、私に《愛》なんてくれないだろうけど私のために練り上げた、ってのはウソじゃなさそうかな…)
そう思いながら今宵は眠りに就いた──。
『おはようございます!マイマスター!』
明くる朝。道満がマイルームに迎えに来て挨拶をくれる。
「うん、おはよう道満。今日も周回宜しくね」
『はい。万事拙僧にお任せあれ!』
「フフフ、頼りにしてるよ」
(…いつもと変わらないかな?まぁ頼りにしてるのは本当だし今日も一緒に周回頑張ろう)
─シミュレーター戦闘中─
「道満!お願い!」
『ンンッ! いいですねぇ!』
『光の時、これまで! 疑似神核、並列接続! 暗黒太陽、臨界!〈狂瀾怒濤・悪霊左府〉!! ンンンンンン! ごちそうさまぁ~っ!!』
開幕序盤に道満が宝具を放つ。一掃される敵エネミー達。“私のアルターエゴ”は本当に頼りになる。
そうして数々のシミュレーションをこなし今日の周回が終了する。
「みんな!お疲れ様!」
はい、おつかれ~、と数名のサーヴァントは散り散りと帰っていく。
そこに私を待っていてくれたかのように道満が最後まで残っていた。
「道満もお疲れ様!今日も活躍してたね、いつも助かってるよ。ありがとう!」
『ンフフフフ、まぁそれ程でも…マスターのお力添えあってこその事ですな』
「やったね♪イエーイ!」
と手を掲げる。道満は少し怪訝そうな顔をしたがそれに応えてくれた。そうしてハイタッチを交わす。
道満と少しでも距離が縮まった気がした。
その後少し浮かれた気持ちでマイルームに戻り今日のレポート作成を進める。
「今日の編成は…道満と、開幕で道満の宝具が……アレ?」
「最初からNPチャージしたっけ…?」
ふと思い出してみれば開幕早々スキルも使わず礼装の加護も無しに道満が宝具を放っていた事を思い出す。
「祝福の効果…?」
思い当たる節といえばそれくらいである。
「そっか…チョコ食べてくれたんだ…」
立香は赤面し、はにかんだような笑顔を浮かべる。
昨夜とは違った気持ちでまた床に就く─。
今宵は眠れないかもしれない。そんな想いの夜であった。
~了~