薄紫「え、」
ぴし、という効果音が聞こえるくらいに臣さんは“それ“を見て固まった。
「………」
なんで臣さんがこんなに中途半端な所でとまっているか分かっているが、それをこっちから言及する訳にはいかない。
それはその理由が下着にあるからだ。
明日は部活がオフ、それに臣さんの家に放課後遊びに行くとなった時から何となく察していた。だから、今日は新しくおろした下着をつけている。2人のお節介な先輩と買ったものを。
今までは誰にも見せないから全く気にしなかった。でも、臣さんとこういう関係になってからは、なんというか。少しは可愛い下着をつけた方が普通、恋人相手には良いのではないかって。
正直片手じゃ足りないくらい体を重ねてるし、今まではお世辞にも可愛いとは言えないスポーツタイプの下着。それに対して臣さんは何も言わなかったし、回数を重ねても特に何もなかった。
だから、臣さんは今、俺がこれまでとは違う下着をつけているからフリーズしている、と思う。
というか、制服が胸までたくしあがったところで下着が見えているのも、臣さんがそれを見ているこの体勢もそろそろ恥ずかしい。
それになんだその反応は。似合ってないのか、頑張って着たのに気合いが入ってるとでも思われたか、どちらにしても最悪だ。恥ずかしすぎる。
「……ねぇ、何、文句あるんならはっきり言えば。」
どうせ似合ってないとか、気合い入りすぎだろ、とか鼻で笑われるのがオチだ。これなら着なければよかった。
制服の裾をなおそうとすると、やっと臣さんは動き出しその手をとめた。
「文句ならある。」
「はぁ?何?」
「これ以上俺を煽ってどうすんだ」
「は?」
そのまま背中へと手をまわされ直ぐに開放感を感じる。
片手でホックを外しやがった、この男。
「ちょっ、」
「正直、お前がどんな下着着てようが相手がお前なだけで俺は興奮できるんだがなぁ。」
「っん、」
肩甲骨をゆるくなぞりつつ、下着が脱げるか脱げないかのギリギリにずらされる。
「侃がわざわざ俺のために考えてこーんなの着てんだなって思うと結構クる。」
「別に、お、みさんのためじゃないんだけど、勝手に言わないでくれる?」
「ふっ、はいはい。」
こいつ、見透かしたみたいに笑いやがって。
背中の手が腹にまわり、そのままその手は決して大きくはない胸に登る。
「なぁ、侃。」
「何?」
「煽った責任はとれよ?」
「責任って何?ていうか、俺は別に煽ってないんだけど。」
「俺が煽られてるんだからしょうがねぇだろ。なぁ、もういいか、」
「ん、」
あぁ、本当に余裕ないんだな、って今気づいた。手が、視線が、いつもよりあつい。
いいか、なんて聞くくせにその手は俺の了承なんか待ってくれないで進んでくるし。
ほんっとに俺様な奴だ。
せめてもの抵抗で首に腕をまわし、後頭部の髪をひっぱった。