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    hbnho210

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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。

    お題:「狙い撃ち」「桜」4/10「ルーク、」
     傍らで、うなされているルークにアーロンが声をかける。声に反応してルークが目をあける。額はうっすらと汗をかき、前髪が濡れている。アーロンの手がルークの額の汗をぬぐい、肌にはりいついた前髪を丁寧に退ける。
    「どうした、」
    「夢…、」
     うつつのなかでまだ夢をみているようにぼんやりと、ルークは暗い天井を見上げた。
    「…昼間、チェズレイと話をしていて、…ああ、何の話をしていたんだっけ、そのうちに、桜の下には死体が埋まっていると云う話をチェズレイがしてくれたんだ、何だかそれがとても印象深くて…忘れられなくて、」
     アーロンが舌打ちをする。
    「クソ詐欺師の話なんか忘れろ、眠れ、」
     今夜の月は、光が異様にうるさくて、窓硝子の何処かに隙間がないかと這入りこむ隙を狙っているように煌々と部屋のなかをてらしていた。ルークはアーロンの胸に額をぴたり、とつけて目を閉じた。冷たい肉が熱のこもった額に心地よく、ルークは強く額をこすりつけて舌で冷たい肉を舐めた。発熱した子供の体温に似たルークの熱い舌に、されるがまま身をゆだねていたアーロンはやがて寝息を立てはじめ眠るルークの顔を覗き込んで、その傍に寝た。程なくして、何者かに起こされたアーロンは鋭く瞳を光らせる。部屋のなかには誰もいない。ふたたびうなされているルークと、自分だけ。アーロンは、窓硝子を破って侵入りこんできそうなほどにいっそうと強くかがやく月を牽制するように睨めつけて、部屋を出た。電話がつながると、まず舌打ちをしてきたアーロンを軽くたしなめたチェズレイが要件を訊く前にアーロンは怒気を込めた声で低く言った。
    「ルークに何しやがった」
    「何のことでしょう」
    「お前が昼間にした話がよほど怖かったんだろうよ、ずっとうなされてるんだよ、…でもそれだけであんなにうなされるわけがねえ、…何をした」
     ほんの少しの沈黙のあと、チェズレイが微笑う。アーロンが言葉にならない何かを言いかけたのをチェズレイが制した。
    「私は何もやってはいませんよ、ボスにそんなことするわけないでしょう、でも…ボスは感受性がとても強いのでしょうね、それこそ怖い話を聴いて眠れなくなる子供のように、まさかそんなに怖がらせていたとは思いませんでした、これは私が悪かったと認めざるを得ませんね」
    「じゃあ何だ、本当に子供みたいに怪談話が夢にでてきてうなされている、てだけなのか?」
     アーロンはこめかみに皺をよせて長いため息をついた。
    「…でも、それだけではないかもしれません」
     アーロンが猫のように怒りで全身の毛を逆立てた。その姿は見えなくとも手にとるようにわかる。アーロンを揶揄いたい気持ちは否めないながらもチェズレイは真剣な声で話す。
    「私は何もしていませんよ、これは本当です、ですが…ボスの子供のように純粋で無垢な心につけ込んで何か邪なモノが這入りこんだ可能性はありますね、ボスはどんな物ノ怪にでさえ心をひらいてしまう、そんな方ですから、」
     それについては同意だと思いながら、いささか話が何処かよからぬところへ向かっていることにアーロンは動揺した。
    「目に見えるものだけが“存在しているもの”と云うわけではないのですよ、この世界はあらゆる奇跡と驚きに満ちているのですから」
     それにも同意だ、と思いながらもあまり深入りしたくない、そう思ったアーロンは早々とこの問題を解決する方法をチェズレイに問いつめた。
    「怪盗殿、あなたをボスの夢のなかへと誘いましょう、そこでボスを見つけてこちら側へ連れて還ってきて下さい」
     荒唐無稽。しかし真夜中に狐のような男とこれ以上無駄話をする気はない。アーロンは言いたいことが百はある言葉を呑込んで、何をすればいいのかを問うた。簡単な催眠をかけるのでその後、そのまま寝室へ戻りもとの通りにボスの横で眠ってください。チェズレイは実に何でもないふうにそう言ったが、アーロンはいくつもの言いたくてたまらない言葉が口からでてこないよう歯を喰いしばって、まったく何ひとつ承知できないと云う声で、解った、とだけこたえた。チェズレイは、おりこうさん、と言って、そこから先、アーロンの意識は途切れた。

     白い花がいくつも落ちている。形は様々で、足もとに、小さいのが、ひとつ。三寸先に、また小さい、花ひとつ。点々と、歩くその先に落ちている花は、よくみるとそれは花ではなく、白い骨だった。あれは小指。爪の先程しかない。まあるいこれは何処の骨。人間。動物。何の骨。本当に骨なのか。白いそれは、ぼんやりとした花のようで、ひとつひとつ、拾いながら歩くけれど骨は指の隙間からこぼれおちてゆく。何ひとつ手にはのこらず、掴むことができない。いつのまにか歩いてきた道には手からこぼれ落ちた骨が山のように積み上がっていた。アーロンは走った。前へ前へ。今までもずっと前へと走ってきた。振り返ることのなかったその道には、千、万、億、那由多の骨がころがり落ちて積み上がっていた。走っているこの道は何処へとつづく道なのか、此処は何処なのか。いつのまにか目のまえに大きな白い骨の山が現れた。骨の山と思ったそれは、一本の桜の木だった。木に咲いているのは花と云うよりは溶けることのない雪のようで、重たげに枝をしならせている。その下に、誰かがいる。しゃがんで、土を掘っている。小さな手は泥だらけで、爪のあいだは土まみれだ。近づいて、声をかけようとすると、顔を上げてこちらを見たその顔は。
    「“ルーク”、」
     ハスマリーが燃えたあの夜に、ひとりおきざりにされのこされた小さな子供。持てるものすべてを失い、いちばん大切なものさえ手放した、あの、“ルーク”だった。幼い自分の姿を対面で見る、と云う奇妙な事に戸惑いながらも、いちばん思いだしたくない記憶がそこに在り、アーロンは足がそれ以上動かなくなった。小さな“ルーク”は土を掘りつづけている。やめろ。何を掘り起こすつもりだ。掘り起こすな。思いだすな。其処からでてくるものは何だ、俺は何を掘ろうとしている、俺は何をしている、俺は何故ここにいる、俺は、何だ。乾いた木を叩くような音が、長く々のびて空に木霊した。それは狐の鳴声にも似て、何処かで聴いたことのあるような声でもあった。アーロンは自分の手を見た。そして、自分自身が今、此処に在ることを確かめる。自分は此処に在る。“あれ”は自分ではない。もう、あの夜に泣いていた“ルーク”は、在ない。
    「てめえは、誰だ、…いや、“何”だ、」
     風の気配も無いのに花弁がひとつ、ふたつと舞上がり、やがて土砂降りの豪雨のようにアーロンの行く手を阻む。視界を遮られ、まるで花弁の一枚々が意志を持った生きもののようにアーロンの身体にまとわりついてくる。足にしがみついてくる花弁の群れに足をとられ、うまく歩けない。アーロンは力の限り足を蹴上げ花弁を散らし、鉤爪で花闇を引裂いた。裂目の向こうに見えたのは、立ち尽くし、凝、と昏い目をしてこちらを見ている、子供。そして土塊だらけの手が握っていたのは土のなかから伸びる、白い、手。アーロンは全身から血が抜けて崩れ堕ちてゆきそうになるのを唇を噛み、足を踏張り耐えた。白い手はだらり、として筋肉も神経も、骨さえ存在がわからないほど、到底生きている人間の手には見えなかったが、その手が誰の手であるかをアーロンは知っていた。昏闇の中に、何度その白い手を探しただろう。在るはずがないと解っていても、このざらついた手を握ってくれた優しい手を、どうしても忘れることは出来なかった。自分の手が大きくなる度に同じくらい大きくなった優しい手を想像した。何年経っても、この手は優しい、愛おしい手を忘れることなんて出来なかった。
    「、ヒーロー…、」
     花弁が折れたナイフの刃先となってアーロンへ向かって飛んでくる。しかしどれもアーロンの速さには及ばない。すべて叩き落され、あるいは砕かれた。
     哀れだな、
     未だその手を離すことのできない昏い目をした“ル-ク”が哀れで々仕方なく、無尽の花弁の襲撃を受けながらアーロンの瞳は灰色に哀しく、曇った。泥だらけの小さな手は、白い手を強く握っている。昏い瞳が叫ぶ。もう誰にもわたしたくない、自分からこの手を奪うものは許さない、この手は、自分だけの“手”だ。
    「…嗚呼、そうだな、だけどな、“ルーク”、その手はもうヒーローの手じゃない、そして、お前も“俺”じゃない。俺は此処に在る、そしてヒーローは、今、俺の隣に在るんだよ、おまえが何者だか知らねえが、俺はもう二度と、その手を離さない、何があっても、絶対に、…だから安心しろ、」
     “ルーク”、お前はもう悪夢は見ない。もう、ひとりじゃない。あの頃のお前にそれを教えてやることが出来たらどんなにいいだろう。そうしたらこんな悪夢も見ることはなかった。さみしくて泣く夜も、焦がれて焦がれて心臓が捩じ切れそうになってしまうことも。でも、もういい。今、俺の隣にはルークがいる。それだけでいい。すべては報われた。そうだろう、“ルーク”
    「動くなよ、すべて消し去ってやる、この悪夢まるごとぜんぶ、狙い撃ちだ、」


     狐に化かされたみたいだ。
     目が醒めると、眩しい朝陽が部屋に満ちて小鳥がうるさいくらいに鳴いている。空の青さはどこか胡散臭く、絵の具で塗りたくったような青をしていた。アーロンは傍らで眠るルークを見た。もうこんなにも太陽は明るく、樹々も風も鳥も目覚めていると云うのに、この上なく気持ちのよさそうな顔をして眠っている。まだまだ起きる気はないらしい。アーロンはルークの口の端についた涎を指でぬぐった。そして、そっと、手を握る。微睡のなかで、握り返してくるその手の愛おしさ。ずっと求め焦がれていた手。いつかまた、この手をはなさなくてはならない日が来るのだろうか。この手をはなした瞬間、地獄になるだろう。あの悪夢は過去なのか、それとも未来か。たとえこの朝が永遠ではなくとも、今は、やっとふたたびこの手につかんだ幸せを、感じていたい。

     それにしても。あれはほんとうにルークの夢だったのか。それとも俺の。あるいはこの世界ではない、まったく違う何処かこの世ならざる地であったのか。何故か“夢”のなかでチェズレイの声を、それは獣の鳴き声にも似ていたが、聴いたような気がして、そもそものはじまりはあのうさんくさい詐欺師の所為だと云うことを思いだしたアーロンは、やっぱりあのクソ詐欺師が何かしやがったとしか思えない、と忌々しくも腹立たしく、今すぐ一発お見舞いしてやりたい衝動を抑えながら、虚空にむかって吠えた。
     はたして、ほんとうにこれはチェズレイの仕掛けた質の悪い悪戯だったのだろうか。今となっては何も解らない。





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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「バカップル」「たばこ」お借りしました!闇バもでてくる。ルクアロだけどBOND諸君がみんなで仲良く?しています。
    お題:「バカップル」「たばこ」7/16「キスしたときにたばこの味がすると、オトナのキスだな、て感じがするってむかし同級生の女の子が言っていたんだけど」
    「……女とそういう話するのか、意外だな」
    「ハイスクールのときだよ。隣の席の子が付き合いはじめたばかりの年上の彼氏の話をはじめると止まらなくて……それでさ、アーロンはどんな味がした」
    「何」
    「僕とキスをしたとき」
     午后の気怠さのなか、どうでもいい話をしながら、なんとなく唇がふれあって、舌先でつつくように唇を舐めたり、歯で唇をかるく喰んだり、唇と唇をすり合わせて、まるで小鳥が花の蜜を吸うように戯れていた二人は、だんだんとじれったくなってどちらからともなくそのまま深く口吻けをした。そうして白昼堂々、リビングのソファで長い々キスをして、ようやく唇を離したが、離れがたいとばかりに追いかける唇と、舌をのばしてその唇をむかえようとする唇は、いつ果てるともわからぬ情動のまま口吻けをくりかえした。このままではキスだけではすまなくなると思った二人はようやく唇を解いて呼吸を整えた。身体の疼きがおさまってきたそのとき、ルークが意味不明な問答を仕掛けてきた。アーロンは、まだ冷めやらぬ肉体の熱を無理矢理に抑込みながら寝起きでも元気に庭を走りまわる犬のような顔をしたルークの顔をまじまじと見た。
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