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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。ヒロルク。そしてルークとアーロンが再会するもっとずっとまえ、まだ少年のルークと少年のアーロンの話。です。捏造アリ。

    #ルクアロ
    rquaro.
    #ヒロルク
    heroin

    お題:「意気地なし」「雪景色」11/27 雪をみるの、はじめてなの?
     埃のようにふわふわとしたものが空から降ってくる様子をいつまでも眺めていたら、不思議そうにそう訊かれた。ほんものを見るのははじめてだけれど、これが雪だということは知っていた。空から降ってくる真っ白なもの。さわると冷たい。何故、知っているのか。何かの本で見たことがあるのだろうか、それとも誰かが教えてくれたのか。誰が? 記憶を探ってみても、そこには地面にぽっかりと空いたように闇い穴しかなくて、何も見えない。その中に手をのばしてみても、手は虚空を彷徨うばかりで、何も掴むことは出来なかった。

     ルークは大人たちの目を盗んでドアを開け、外へ出た。振返って誰も気がついていないことを確かめると、そのまま、施設の門を出た。うっすらと雪のつもった地面を踏むと、蹠にしんしんとしみわたる冷たさに、魂までも凍ってしまう思いがした。空へむかって手をのばしてみたけれど、手のひらで受けとめた雪はすぐに溶けてしまう。ルークは空を見上げた。雪は、空のずっとむこう、銀鼠色の彼方から降ってくる。ルークの額に、頬に、睫毛に、雪はどんどん降ってくる。冷たい。冷たくて、そしてとても美しいと、ルークは思った。そして、この、真っ白で美しいものを、自分は知っている。雪のようで、雪ではない、でも、それが何であるのかは解らない。ルークは雪を、好きだと思った。この眼前にひろがる雪景色の見事さに胸がいっぱいになって、
    「ああ、ほんとうに、きれいだね」
     そう、声にだして言った。返事が返ってくるはずもないその声は、雪にすいこまれ消えてゆく。
    「これが雪なんだね、やっと見ることができたよ」
     この景色を、誰かと見るはずだった。でも、誰だかわからない。そんな誰かなんていないのかもしれない。でも、それでも、語りかけずにはいられなかった。その傍らには只々、雪が降りつもってゆくばかり。雪のほかには何もない。そのなかでひとり、ルークは雪の降る空をいつまでもいつまでも、見上げていた。


    「ゆき、ってなあに?」
    「空から降ってくる、白くて冷たいものだよ」
    「何でできているの?」
     本の挿絵には雪の降りつもる街の絵が白黒で描かれていた。しかし、少女に問われた少年も本物の雪を見たことはなく、どう説明したらいいのか困り果てていた。
    「水が凍ってできたのが雪だ」
    「アーロンは見たことあるの?」
     少年が讃嘆の眼差しでアーロンを見つめる。少女も雪について興味津々の様子だ。
    「……ねえよ。ハスマリーに雪はない」
     少女はがっかりした様子で、本のなかに描かれた雪景色を眺めている。
    「見てみたいなあ。ねえ、いつか見られる? このくにが“へいわ”になったら、ゆきもみられるの」
     ハスマリーが平和になったら、出来ることがたくさんある。アーロンはいつも子供たちにそう言っていた。眠れない夜、皆で一枚の毛布にくるまって、平和になったハスマリーでやりたいこと、食べたいもの、見たいものの話をした。いつか必ず、その日はくる。だから今は我慢をするときだ。それは祈りにも似た、皆の合言葉だった。
    「残念だがハスマリーで雪は見られねえな。ハスマリーの気候で雪が降ったらそれこそ天変地異だ」
    「えー! アーロンなんでもできるようになるっていったのに!」
    「でも、雪が降る場所へは行ける」
    「ほんとう?!」
    「ああ」
    「わたし、ここにいきたい!」
     少女はアーロンの目のまえで本をいっぱいに開いた。見開きに描かれていたのは、遠く街を望む森の樹々には真綿のような雪がかぶり、雪とおなじくらい白い二羽の兎が樹の下で戯れている、繊細な線で描かれた雪景色だった。その絵の端には文字が記されている。ところどころインクが掠れているその文字は、絵を描いた画家のサインかと思ったが、地名のようだ。
    「“ヴィンウェイにて”……雪の国だな」
    「びん…? そこへ、いけるの? へいわになったら」
    「ああ、行ける」
     少女は頬を紅潮させて、遠い異国の描かれた本の挿絵にいつまでも魅入っていた。アーロンは少女たちに、危なくなったらすぐにアラナのところへ行けよ、そう言って街へと向かった。
     
     行けるよ。
     そんな確証なんか何処にもないのに。自分は残酷なことを言っている。いま、この国には雪のかわりに爆弾が降っている。この街もいつ、燃えるかわからない。誰もが眠れぬ夜を過ごすこの国では、白昼に夢をみて、その夢に縋っていなければ生きていくことができない。毎日、生きる意味をみつけて、耐えている。俺の生きる意味は……

     ヒーロー……俺は、あいつらに雪を見せてやることが出来るのか、そして、ヒーローと雪を、見ることができるのか。
     絶対に出来るよ
     ヒーローならそう、言うだろう。本当は現実と向き合うことがこんなにも恐くてたまらない意気地なしの俺と違って。
     ルークは意気地なしなんかじゃないよ
     幻聴は、欲しい言葉をくれる。それなら、ヒーロー、……言ってくれ。いつか絶対に、また会えると。もう一度、会えるって、約束して。ねえ、ヒーロー…………



    「ヒーロー、雪を見たことないの?」
     仕掛け絵本から飛びだしてきたクリスマスツリーには青や赤のオーナメント、金銀のモールが飾られ、その頂上には大きな星が虹色に輝いている。クリスマスツリーの向こうには辺り一面真っ白の雪原が描かれていた。
    「あのね、つめたくて、ふわふわで、だけどべちょべちょしてて、そして、真っ白で……とってもきれいなんだ」
     ヒーローは白のうえに、ところどころ銀の箔が散りばめられている雪原の絵を熱心に見ていた。
    「いつか、ヒーローといっしょに見たいな」
    「うん! おれも見てみたい! 真っ白できれいなのかあ、ルークみたいだね」
    「え?!」
    「だってルークといっしょにいるとふわふわした気持ちになるから、洗いたての真っ白なリネンみたいだ。そしてルークの名前を呼ぶとさ、振向いたときの目がいつも雨上がりの草原みたいにキラキラしていてとってもきれいなんだもの」
     ルークはどうしようもなく頬が熱くなって、なんだか体がそのままふわりと空へと飛んでいってしまいそうな心地だった。
    「……ヒーローのほうがきれいだよ、このクリスマスツリーみたいにぴかぴかで、……ヒーローはクリスマスに雪が降ったときの景色みたいだ」
    「クリスマスに雪が降るの?」
    「そっか、ハスマリーのクリスマスに雪は降らないもんね。うん、僕の住んでいたところはクリスマスに雪が降るんだ。街も木も、道路もみんな真っ白になるんだよ。……いつか、雪の降るクリスマスをヒーローといっしょに過ごせたらいいのに」
    「うん。おれもルークと一緒にクリスマスに雪を見たいな」
    「うん! 約束だよ。いつかぜったいいっしょにクリスマスに雪を見ようね。キラキラしていて、とってもきれいなんだ。ヒーローといっしょに見ることができたら、もっとずっと何十倍も何百倍もきれいだよ!」

     その夜、ふたりは夢をみた。まったくおなじ夢を。あまりにも不思議なその現象を翌朝起きて大人たちに話したけれど、大人たちはお伽話を聴くように二人の話を聴いていた。ヒーローとルークは答合わせをするように夢の話をする。そう、夢のなかで二人は雪原を駆けていた。手をつないで走っていたらいつの間にか目のまえには、どこまでもどこまでも、果てなくひろがる真っ白な大地がひろがっていた。

     ここはどこなの、ヒーロー
     どこだろう、ルーク、はぐれないようにね
     うん
     でも、もし迷子になってもおれが絶対にみつけるよ、どんなに雪が深く道が険しく夜が暗くても、おれは必ず君をみつける
     ほんとう? ほんとうに? ヒーロー
     うん、もちろんだよ! 
     きっとだよ、ヒーロー!
     ああ、約束だ!

     だからそれまで、生きていて。せいいっぱい生きて生きて、生きつづけて。
     きっと、君をみつけてみせるから。
     
     
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題:「バカップル」「たばこ」お借りしました!闇バもでてくる。ルクアロだけどBOND諸君がみんなで仲良く?しています。
    お題:「バカップル」「たばこ」7/16「キスしたときにたばこの味がすると、オトナのキスだな、て感じがするってむかし同級生の女の子が言っていたんだけど」
    「……女とそういう話するのか、意外だな」
    「ハイスクールのときだよ。隣の席の子が付き合いはじめたばかりの年上の彼氏の話をはじめると止まらなくて……それでさ、アーロンはどんな味がした」
    「何」
    「僕とキスをしたとき」
     午后の気怠さのなか、どうでもいい話をしながら、なんとなく唇がふれあって、舌先でつつくように唇を舐めたり、歯で唇をかるく喰んだり、唇と唇をすり合わせて、まるで小鳥が花の蜜を吸うように戯れていた二人は、だんだんとじれったくなってどちらからともなくそのまま深く口吻けをした。そうして白昼堂々、リビングのソファで長い々キスをして、ようやく唇を離したが、離れがたいとばかりに追いかける唇と、舌をのばしてその唇をむかえようとする唇は、いつ果てるともわからぬ情動のまま口吻けをくりかえした。このままではキスだけではすまなくなると思った二人はようやく唇を解いて呼吸を整えた。身体の疼きがおさまってきたそのとき、ルークが意味不明な問答を仕掛けてきた。アーロンは、まだ冷めやらぬ肉体の熱を無理矢理に抑込みながら寝起きでも元気に庭を走りまわる犬のような顔をしたルークの顔をまじまじと見た。
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