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    hbnho210

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    ルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題をお借りしました。ヒロルクです。二人が一緒に過ごした一日をすべて切りとって大切にファイリングしておきたいという気持ち。太腿。研究所のオリジナルモブ研究員がでてきます。

    #ヒロルク
    heroin

    お題:「おそろい」「寄り掛かる」2/19 青いハンカチをもらった。ガーゼを何枚も重ねたふわふわの生地で四隅にそれぞれ違うカタチをした白い鳥の刺繍がしてある。自分専用のハンカチを持つのははじめてだった。嬉しくていつもポケットに入れて持ち歩いた。夜に洗って、また次の日の朝にきれいにたたんでポケットに入れる。乾くのが遅くて、まだハンカチが少し湿っていると持ってゆくことが出来ず、そんな日はポケットの中がなんだかさみしくて、心もとない気がした。ハンカチを使うことはそれほどなかったけれど、毎日洗濯を繰り返していると夏空のように青かった色は褪せ、刺繍にも綻びができはじめた。それでも、そのハンカチはお気に入りだったので、ずっと持ち歩いていた。

     そこには小さな池があったが、雨の降る日が少なくなるとその池はもっと小さくなり、水たまりのようになる。そのときだけ、普段は近づいてはいけないと言われているその池で子供たちは遊ぶことが許された。ヒーローとルークは待ちきれないとばかりに靴を脱ぎながら走って、池の中へ飛び込んだ。とはいっても、水嵩はふくらはぎくらいまでしかなく、子供の足で五、六歩も歩けば対岸へ渡ってしまえるくらいの小さな池だったが、二人にとってはじゅうぶん魅力的な遊び場だった。裸足の蹠が、池底の泥を踏む。水は生ぬるいが、蹠に触れる水底は冷たく、気持ちがいい。太腿の限界まで捲り上げたズボンが濡れるのも厭わずはしゃぐ二人の足に攪拌された池の水は様々な色と色が混ざりあい午后の陽光を反射させて、小さな太陽をそのままとじこめたように眩しく光る水滴が飛散って二人の頬をかがやかせた。
    「あ、」
     短い声をあげてヒーローが目を押さえる。
    「どうしたの?……目に、何か入った」
     何もいるはずはないと解っている池の中に凝、と目をこらしていたルークが顔をあげてヒーローの顔を覗き込む。ヒーローが目をこすろうとしたのをあわてて止めて、ポケットのなかにハンカチがあることを思いだしたルークはヒーローの目の端をハンカチでおさえた。泥がハンカチに小さな染みをつくる。
    「それ、ルークの大切なものだろう、よごれちゃうよ」
    「ハンカチはよごれるためにあるんだよ」
     凝っとしていて、そう言うとルークはハンカチで丁寧にヒーローの目のふちを拭い、濡れた瞼をおさえると、睫毛の先からきらきらと光る水のしずくがこぼれおちてヒーローの頬を濡らした。ルークは、赤く火照ったヒーローの頬にハンカチをあてながら、気づかれないようにその頬に、そっ、と指で触れた。
    「……もう大丈夫だよ、目を開けても」
    「……眩しい!」
     目を開けた瞬間、瞳のなかに飛び込んできた太陽の光にヒーローが思わず目をつむると、ルークは微笑いながら、ハンカチを胸のまえで大切そうに握りしめた。


    「ねえ、ルーク、見て!」
     灯りが消えたあと、いつものようにヒーローのベッドのなかにもぐり込んでいたルークに、ヒーローは得意満面の笑顔で一枚のハンハチをひろげて見せた。
    「作ってもらったんだ。ハンカチ持ち歩くのなんてめんどくさいなあ、と思ってたんだけど、やっぱりおれも持っていた方がいいかなと思って」
     そのハンカチは、海と空のあわいのような色をして、四隅には白い糸で鳥のカタチの刺繍がしてあった。
    「ヒーロー、これ、」
    「どんなハンカチがいいか訊かれたから、ルークとおそろいがいい! てお願いしたんだ」
    「……おそろいだ! おそろいだね! おんなじだあ! どっちがどっちのかわからなくなっちゃうくらいおんなじだね!」
    「そうかな? ざいしつ、とかけっこう違う気もするけど……」
    「ううん! おんなじだよ! ぼくとヒーローの、おそろいのハンカチ!」
     二人はベッドの上に二枚のハンカチを並べてじっくりと見比べてみた。ヒーローは、やっぱり間違えたりはしないだろうと思ったけれど、ルークは二枚のハンカチを交互に何度も見て、うっとりとため息をついた。
    「……ねえ、ヒーロー、ぼくいいことを思いついたんだ」

     翌朝、二人はいつも服の綻びを繕ってくれる研究所のミネルヴァに、ハンカチに名前を刺繍してほしいとお願いをした。そのお願いを快く引受けてくれたミネルヴァは、はっきりとした濃い赤い糸でハンカチに二人の名前の刺繍をした。ただ、ルークのハンカチには「HERO」、ヒーローのハンカチには「LUKE」と、赤い糸で綴られていた。それはルークの提案だった。
    「ぼくのものはヒーローのものだから。ぼくのものはぜんぶぜんぶヒーローのものだよ」
     二人はハンカチをまるめて鳥の形に模したり、カーテンをあけた窓にかざしてハンカチの向こうにぼんやりとみえる月を眺めたり、手首や足首にリボンのように巻いたりして、おそろいのハンカチを眺めては心をはずませて、飽きることなく戯れた。ヒーローが、このすみっこに刺繍してある鳥はムクドリかな、ねえ、ルークはどう思う、そう、たずねようと傍らを見ると、ルークはヒーローに寄り掛かるように体を預けていつの間にか眠っていた。
    「寝ちゃったの? ルーク」
     ルークの規則正しい寝息がかすかに聴こえる。ゆるやかに起伏する胸のまえで、しっかりとハンカチを握りしめているルークの手に、ヒーローは静かに自分の手を重ねた。そうして、傍らで眠るルークの頭に頬をすりよせると、ヒーローの胸のなかにルークの匂いがいっぱいにひろがった。
    「……ねえ、ルーク、君はおれに君のぜんぶをくれると言ってくれたけれど、でも、おれには君にあげられるものがあまりないんだ。おれは、何も持っていないから。……おれは君に何をあげたらいいんだろう」
    「ヒーロー……」
     ヒーローは少しびっくりして、ルークを見た。ルークは唇を、何かをしゃぶっているみたいに横に縦にわずかに動かしたあと、そのままふたたび静かに寝息をたてはじめた。
    「……ルーク、君と一緒にいるおれの”今”は、もうすべて君のものだけれど、おれには過去がないから、想いでをあげることができない。だから、おれの未来をきみにあげるよ。これからおれが手にするすべてをきみにあげる」
     見たものも、聴いたことも、触れたもの、感じたことすべて、君と一緒に分け合いたい。これから先ずっと、大人になっても、自分の未来には君がいて、そして君の未来には自分がいる。このハンカチのように、君の未来の物語に、自分の名前を記そう。そして、自分の未来の物語には、君の名前をいっぱい書くよ。自分の未来を、君でいっぱいにしたい。
     どうか、二人の人生が、ずっと『おそろい』でありますように。
     ヒーローは窓のむこう、きらめく星に祈りながら、目をとじた。星は、空の遥か彼方に瞬いて、地上のあまねくすべてが青い光のなかに沈んでゆく。
       
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    hbnho210

    DONEアーロンが宝石専門の怪盗ビーストとして世間を騒がせている頃のお話。ルークとは再会する前。オリジナルキャラがでてきます。※設定捏造アリ※本編と齟齬が生じている可能性アリ。展示①『Don't cry my hero』も読んで頂けたら嬉しいです。
    4/12「Hero`s echo」展示②『Give me a smile my hero』「またハズレか、……なかなか見つからねえもんだな」
     車のクラクション、海の遥か向こうの異国の言葉たち、石畳を歩く靴の音、店の前を通りすぎていった爆発音みたいな笑い声に店のドアにはめ込まれた色とりどりの色硝子が振動してカタカタと音を立てた。
    「おまえさんが何を探しているのか知らんが、どれも一級品だよ、まったくたいした腕だ」
    「ハッ、ドロボウの腕なんざ褒められても嬉しくねえんだよ」
     白昼の街の喧騒からうすい壁いちまいで隔てられた店の中はきれいに掃除が行き届いているのにどこか埃っぽく、店に並ぶ品はどれも古い映写機で映したように見える。何処かで嗅いだことのあるようなまったく知らないような不思議な匂いがして、壁に掛けられた時計の針が刻む音はどこかうさんくさい。アーロンは横目で時計を睨みながら店主が入れた茶を呑んだ。旨いが、何の茶なのかはわからない。
    2021

    hbnho210

    DONEアーロンがハスマリーで怪盗稼業をしていたときのお話。オリジナルキャラがでてきます。ルークはでてきませんが作中ではルーク(ヒーロー)の存在感がアリアリです。アーロンの心のなかにはいつでもヒーローがいるから……。アーロンが”怪盗ビースト”と呼ばれていますが、そのあたりは展示②の『Give me a smile my hero』を読んでいいただけると嬉しいです。※捏造設定アリ
    4/12「Hero`s echo」展示①『Don't cry my hero』「ねえ、聞いたかい? またでたってサ」
    「ああ、朝から物々しいからどうしたのかと思ったら、狙われたのは前々から黒いウワサのあった政府のお偉いさんの屋敷だっていうじゃねえか。相変わらず小気味がいいねえ」
     土埃と乾いた風、午前七時の太陽は容赦なく肌に照りつける、破れた幌の下にできたわずかな日陰で眠る猫、往来で市の支度をする者、共同水屋で衣類を洗ったり野菜を洗う女たち、野良犬を追いかける子ども、しきりに警笛を鳴らして怒鳴っている役人、いつもとおなじ変わることのない街の朝。だが、今朝の街はどことなくいつもより騒がしく街の人々もなにやら浮足立っていて、顔を合わせると目くばせをして何やら話し込んでいる。声をひそめながら、しかし時折、興奮して声が大きくなり相手にたしなめられている者もいた。
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    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題「歩幅」「メガネ」お借りしました!ルクアロです。老眼鏡が必要になりはじめた頃のルクアロです。ルクアロはおじいちゃんになっても骨になってもずっとずっと一緒にいると思っています。
    お題:「歩幅」「メガネ」3/19「お前、メガネなんか掛けてたか」
     洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
    「読書をするときだけだよ」
    「なるほど、老眼鏡ってやつか」
     アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
    「アーロン、君には必要なさそうだな」
    「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
     数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題「はちみつ」「恋」をおかりしました!ルクアロがいちゃいちゃいちゃいちゃしています。
    お題:「はちみつ」「恋」5/7 はちみつみたいに、あまい、あまい恋をしたの。
     それは、パンケーキに蜂蜜のチューブをまるまる一本かけたくらいあまい?
     そう訊いたら、パンケーキに蜂蜜をそんなにかけたことないから解らない、そう言われた。それはある日の放課後、クラスメイトの女子たちがクラスで流行っていた小説の一節を読み上げて聴かせてくれたときの会話だ。別の女子が、きっともっともっとあまいわ、スーパーの棚に並んでいる蜂蜜をぜんぶパンケーキにかけたよりもずっとあまいのよ、そう言って胸のまえで両手を強くにぎりしめてため息をついた。
     スーパーの棚に並んでいる蜂蜜ぜんぶをパンケーキにかけたよりもあまい。
     それはどれくらいあまいのだろう。想像もつかない。けれど、蜂蜜のチューブ一本まるまるパンケーキにかけたとき、脳がしびれるくらいあまかった。父さんにみつかって、蜂蜜のチューブ一本をまるまるパンケーキにかけることは禁止されてしまったけれど、ときどき思いだす、あのあまさを。あの、脳がびりびりっとして舌がどろどろにとけてしまうくらいあまい、あまい、はちみつよりもあまい「恋」とはどんなものかしら。そんなにあまい「恋」をしたら僕の舌はとろけて蜜になって口のなかはあまいあまい蜜でいっぱいになって息ができなくなってしまいそう。いっぱいになった蜜は口のなかからあふれて僕の体がすっかりと蜂蜜の瓶のなかにもぐってしまったみたいになったら、僕の心臓もひとくちかじると歯がじんじんするくらいにあまくなって、おなかのなかも頭のなかもあまい蜜でぱんぱんになった僕は、僕自身が世界中の蜂蜜をぜんぶかけたあまくてふわっふわのパンケーキみたいになってしまうんじゃないかしら。
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