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    hidaruun

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    hidaruun

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    さみさに♀/雨さに♀

    #雨さに
    inTheRain
    #さみさに
    onInformationAndBeliefs

    告白される話手からペンをぽろりと落としてしまった。
    それくらい彼女はとても驚いていた。何故なら目の前の涼しげな顔をした男にたった今、愛の告白をされたからだ。戦績の報告をするかのようにやってきては近侍の最中に歌を詠みあげるのと変わらぬ声色で彼、五月雨は彼女に好意を告げた。「ひとりの女性として」なんて枕詞をつけられて「好きです」と、聞き間違いも勘違いもできないくらいはっきりと伝えられてしまった。
    「あ、の……」
    ペンを落とした彼女もまた、五月雨に恋心を抱いていた。でもそれは隠し通すつもりだった。こんなものあったってしょうがない。きっといつか困らせる。初期刀にだって言ってないし、気づかれてもいない。誰にも伝えることなくいつか消えていくはずのもの。だから、この告白に対しても刀と審神者の間柄であるべきだとペンを拾いながら主らしく諭すべきだったのに声が震えてしまったことに彼女はしくじったと思った。穏やかな海のように凪いでいた五月雨の瞳に波が起こる。
    五月雨もまた、実るものでは無いと思いながら告げたのだろう。実際、彼女は自分の気持ちを上手く隠していた。今の今までは。
    「頭」
    想いを伝えた時とは打って変わって声に期待が篭っているのがわかって、彼女は目を伏せる。なんとか誤魔化さなければと思うが既に遅く、五月雨は畳の音すら立てずに素早く彼女との距離をつめてきた。
    「ま、待って」
    突然近づかれたその距離を保つ為に咄嗟に手のひらを五月雨の方へと向ける。
    「あ、の。その……待ってほしくて…」
    このまま流されてはいけない。なんとかしないと。何か上手く言わなければと考えていた彼女の手のひらに柔らかな感覚が触れる。同時に静かなリップ音が耳に届いて彼女は勢いよく顔を上げた。五月雨の顔が手のひらからゆっくりと離れていく。
    「なぁっ!?は……えっ!?」
    「頭が望むのでしたら待ちましょう。待ては得意です」
    「え、あ……」
    なんでそんなに普通の態度なんだと、告白しにきたくせにと、言えもしない言葉が胸の内だけで巡る。口付けられた手を反対側の手で守るように抱え込みながら、最早まともに言語を紡げない彼女を尻目に五月雨は淡々と続けた。
    「しかし……これを無かったことにはしませんので」
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    hidaruun

    DOODLEさみさに♀/雨さに♀
    食事を持ってきてくれる五月雨「やっと解放された……」
    深くため息をつき、彼女は壁に背中を預けてもたれ掛かる。豪華なシャンデリアのぶら下がる華やかなホテルの宴会場の端で、周りの楽しげな様子を彼女はぼんやりと眺めていた。
    審神者五年目研修会、という政府の大きな研修会に参加した。強制参加と言われてげんなりしていたけれど同期との交流は新鮮で楽しかったし、一週間みっちりと座学やら実技やらいろんな研修を行ったのは疲れもしたが大変為になったと思う。その打ち上げだと言われて連れてこられたのがこの宴会場だ。まさかこんな豪華なところでやるとは思ってもみなかった。立食パーティーのような形ではあったけれど、座学のレポート発表会でうっかり良い成績を残してしまった彼女は政府のお偉いさんやら先輩審神者はもちろん、同期からもたくさん声をかけられてしまい食事どころではなくなってしまった。近侍は研修の間、毎日交代するように言われていたのだが今日は五月雨だった。レポートの中身もよく知らない五月雨を巻き込むのも申し訳なく、他の刀剣男士も自由にしていたので五月雨にも「好きにご飯食べてきていいよ」と伝えた後はひたすらお喋りに巻き込まれて、それがようやく終わったのがつい先ほど。
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