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    hidaruun

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    hidaruun

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    さみさに♀/雨さに♀

    #雨さに
    inTheRain
    #さみさに
    onInformationAndBeliefs

    ダウンコートを買った審神者寒くて寒くて、今年はついにダウンコートを買った。それもかなりもこもこのやつ。
    着た姿を鏡で見た時は我ながら声を出して笑ってしまった。健康を守ってくれる某白いキャラクターみたいだ。そうは言ってもとにかく暖かい。雪が降ってから冷蔵庫みたいな寒さから一向に気温が上向かない。だから彼女はここしばらくは外に出かける時には毎回それを着ていた。
    「……五月雨、なんかご不満?」
    さて、出かけようかと今日ももこもこダウンコートを着て玄関から出れば一緒に出かける五月雨が彼女の手を取りながらちらりとこちらを見た。というかダウンコートを見た。
    指摘された五月雨はうろうろと前に向けた目をまたうろうろとこちらに戻してきて口を開く。
    「その……達磨みたいな上着ですが」
    「そんな風に思ってたの?」
    それほど着膨れ感がすごいらしい。達磨と言われたら確かにそうかもしれないと彼女がカラカラ笑う一方、五月雨はやはりどこか不満そうな雰囲気で襟巻きを少し引き上げた。表情の変化を見られたくない時の五月雨のちょっとした癖。
    「……その上着は量があるので」
    一歩踏み出すよりもずっとゆっくりに、ぽつりと落とされた言葉に彼女は耳を傾ける。
    「それが暖かいのは分かるのですが……頭とくっついた時に距離が出来てしまうので」
    ふさふさの耳をしょもりと下げてしまいそうな声の小ささに彼女は自分の上着を手のひらで撫でた。このダウンコートは五月雨が言うようにかなり量があって、緩衝材みたいで何かに触れたりしてもあまり分からなかったりする。なので五月雨が彼女に抱きついてきた時に普通のコートより確かに座布団を一枚挟んでいるかのような距離は感じるかもしれない。五月雨はそれが嫌だと言う。別に目の前にいるのに。離れていくわけでもない。手だって繋いでいるのに。触れられる距離が少しでも何かに隔てられるのが不満らしい。
    隠してはいるが、口を尖らせそうな五月雨とは対照的に彼女は口を緩ませる。
    「寂しいの?」
    「そうなります」
    「そうなんだ」
    素直な返事に思わず伸ばした彼女の手を五月雨はなんの抵抗もなく受け入れる。わさわさ、ぐるぐる髪を撫で回すと小さく「わん」と鳴かれて彼女は息を漏らすように笑った。
    存分に撫で回したその手をダウンコートのジッパーへと移す。引っかかりなくジッパーを下げて前を開ければひやりと冷たい空気が流れ込んできてワンピース越しに伝わる。やはりダウンコートは偉大だ。でも、仕方ない。
    「はい、どうぞ」
    「?」
    彼女の行動に不思議そうにする五月雨にダウンコートの前を広げて見せる。洋服があるのは流石に許してほしい。
    「これならそんな邪魔しないでしょ」
    その言葉でようやく理解したらしい五月雨は途端に笑顔になると勢いよく飛びついてきては彼女をぐっと抱きしめた。ダウンコートの擦れる音がして少し肩からずり落ちてしまいそう。五月雨の襟巻きに顔が埋まる。背中に回った手は確かにあまり感じないけれど隔てる物の減った正面の近さは鼓動が聞こえるほどで、それぞれの熱が交互に伝わり合って離れがたい。
    「ふふ。あったかい」
    もっと、と思って擦り寄った彼女を五月雨がもう一度しっかりと抱きしめなおした。
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