五月雨がココアを持ってきてくれる話「休憩いかがですか」という声と共に差し出されたマグカップを受け取るとココアの湖の中にぷかりと浮かぶ白い頭が見えた。
「マシュマロ入ってる!」
作業からの作業で疲れていた気持ちも吹っ飛んでご機嫌になった彼女はすぐに、ふぅっとココアに一息かけては両手で抱えたマグカップを傾けた。温かな甘さが口に広がって自然と頬が動いていく。「美味しい〜」と息を吐いた彼女の目に小目に腰掛けた五月雨の薄く笑みを浮かべた顔が飛び込んできた。瞬きの間に消えてしまいそうな、そんな顔。
「……」
「美味しいですか?」
「うん……」
「お好きと聞いたので」
だから持ってきてくれたのかと、彼女はマグカップの中に視線を落とす。何かと甘い飲み物が好きだ。体中に巡っていくと活力になる。清光や乱、それから意外と蜻蛉切も同じように甘い飲み物が好きで一緒にそういうお店に行ったりすることがある。その時期の限定メニューもあったりして発売日に並んだりもする。
五月雨も好きかな……。今度の休みに誘ってみようかな。浮かぶマシュマロにかぷりと齧りつきながら、彼女は先程の細雨みたいな微笑みを思い浮かべた。