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    hidaruun

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    hidaruun

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    さみさに♀/雨さに♀

    #さみさに
    onInformationAndBeliefs
    #雨さに
    inTheRain

    伝書犬五月雨に封筒を差し出された。白く、簡素ではあるが上品さも窺えるようなものだった。受け取りながら顔を見れば五月雨は、なんというかめちゃくちゃ機嫌が悪そうである。
    「なにこれ」
    「本当は破ろうかと思いました」
    突然物騒なことを言うでは無いか。彼女が眉を寄せてなお五月雨の顔を見つめてもぷいっとそっぽを向いて襟巻きを引き上げられる。
    「しかし……大切に綴られた文字であることには違いないので、大変不服ですが伝書犬をすることにしました」
    伝書犬という聞きなれない単語はおそらく伝書鳩を文字っているのであろうが、また不思議なことを言うと思いながら封筒を裏返せばどこかの審神者の名前が記されていた。これは確か備前国の同期の男審神者だ。随分と綺麗な字を書くらしい。
    「これ」
    「渡しましたので。それから」
    この手紙はどこで貰ったのかなどを尋ねようとしたが、遮られた上に相変わらずに不機嫌そうな五月雨は何故だか一歩詰めてくる。靡いた襟巻きの端が彼女の腕に触れた。
    「本当はお渡ししたくなかった、とはお伝えしておきます」
    ようやく目が合ったかと思えばそれだけ言い切ると五月雨はそのまま去って行ってしまった。なんだったのかとその背を見送りながら手元の封筒を開けて手紙を読むと、まあ……つまるところそれは恋文であった。その内容を把握した瞬間に、先程の機嫌の悪そうな五月雨の顔が浮かんだ。破ろうかと、渡したくなかったと、言っていた低い声も再生される。
    「……」
    彼女は手紙を開いて閉じてまた開くなどしてしまう。ぱさぱさと手元で意味のない音がする。
    「いや…ちょっと、さぁ……」
    彼女はもう一度手紙に目を通す。しかし、申し訳ないことに思い浮かぶのは五月雨のことばかりだった。
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