ifififif 仄かに桃色に色付く唇。毛先を軽く巻いてもらった長い髪。
折角、咲希と穂波が仕立ててくれたのに、全力疾走しているからもう出来上がった当時のままではいかない。待ち合わせ時間が刻一刻と向かっているから急がなければという焦りと、髪やリップが風と汗で崩れてしまっている辛さに帰りたい気持ちに押し潰されそうだったが、寒い中彼を待たせてしまっている罪悪感が勝り、どうしても辿り着かなければいかない。
人生初の恋人が出来て初めてのクリスマスなのだから、絶対に後悔したくなかった。
『この日、放課後、時間貰っていい?』
スマートフォンのスケジュールアプリを開き、顔を真っ赤にしながら『二十三日』を指差す恋人——カイトは、とても愛おしく思えた。
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