甘さを控えた爽やかな味を舌で味わって、鼻に抜ける香りを堪能しながらゆっくりと飲み下す。もう何度も味わって覚えているのに、今夜も格段に美味しかった。
「浮奇、なんて言った?」
うっとりと酔いしれる浮奇を現実に戻すように、隣に座ったショウトが肩を掴んで揺らしてくる。行き慣れたバーであり一緒にいるのが昔馴染みとあって、やや飲みすぎている自覚のある頭がつられて揺れて浮奇は眉を顰めた。
「揺らさないで、吐く。」
「飲みすぎなんだよ!」
相変わらず良くも悪くも騒がしい友人は、なぜだか複雑な顔をしている。これ以上揺らされる前にと、浮奇はグラスを置いて向き直った。
「ふーふーちゃんを好きすぎて喧嘩にならないんだよね、って言ったの。」
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