ここはシプヤ⁉︎交わるセカイの歌声いいぜ!〜〜♪
「よし、新曲も大分詰められたし今日の練習はここまでにするか」
「二人での練習は久しぶりで、つい歌い過ぎてしまったな。隣から彰人の歌声が良く聴こえた、また一段と力が入っているな」
「……ったく、ちゃんと水分補給しとけよ、ほら」
「ありがとう、彰人」
「BAD DOGSとしてライブに招かれたのは久々だし、お前の隣で半端な真似出来ねえからな」
「ふっ……そうだな、俺も同じ気持ちだ。イベント、必ず成功させよう」
「当然。それじゃあ、crase caféにでも寄ってくか。メイコさんに試食も頼まれてたし……」
「ああ、確か白桃を使った新作パンケーキが出来たと言っていたな、それは楽しみだな」
「ま、まぁな」
「ふふ、では向かうとするか。……ん?何か落ちているな」
冬弥の視線の先には何かキラリと光るチケットの様な物が落ちていた。グラフティアートやライブイベントのポスターで埋め尽くされた、ストリートのセカイには馴染みのないものだった。
「あ?冬弥あんま変なもん触るなよ、想いのカケラにあんま良い思い出ねえし……」
「いや、何かのチケットの様だな。これは……俺と彰人?」
「おま!言ったそばから拾うなよ!何があるか分かんねえんだから」
「すまない、つい……。しかし、これは何だろう。俺と彰人の写真がホログラム加工されて印刷されているチケットのようだ」
「何だこれ…それにこの衣装この前、漣さん達とASTRO FESに出た時の個人衣装じゃねえか」
「俺のチケットにはシヴァルラス・カジュアルコーデと書かれているな、彰人の方は……」
「オレの方はノウブル・ストリートスタイルだな。何だこの横の数字、3939いいね?」
「この数字は何を意味するのだろうか……ん?急にチケットが光って……!」
「んなっ!」
まじまじとチケットを観察していると、突然チケットが発光し光が二人を包み込んだ。辺りには2人分のマイクと機材だけが残されていた。
***
ゆっくりと目を開けると、目の前には馴染みのある街頭ビジョンとスクランブル交差点があった。
「ここは……シブヤか?」
「シブヤのスクランブル交差点のように見えるが、どこか違うような……」
見慣れているはずの街頭ビジョンに映っていたのは見た事のないアーティスト達だった。
『(〜〜♪ 時計の針がふたつ交わる)朝から!夜まで…キミと一緒にWITH!WITHの5thライブを収録した「ALWAYS WITH YOU in パパラドーム」Blu-ray&DVD大好評発売中!マジヤッベー!』
「見た事のない男性アイドルだな、この曲も初めて聴いた」
「だな、けどこの曲……」
「ああ、彼らからはファンを楽しませようという、強い想いを感じるな。俺達のライブとはまた違うが、演出もとても工夫されている」
「このセカイにも熱い奴らがいるみたいだな」
「しかし、このセカイは一体……。どうすれば元のセカイに戻れるのだろう。スマホも圏外のようだし『Ready Steady』も再生出来ない」
「マジか……とりあえず、あるかは分からねえがビビッドストリートの方に……」
その時、ぐぅぅとお腹の鳴る音が。放課後になってからずっと二人で歌の練習をしていて、小腹を満たすためにカフェでも寄ろうかというところだったのだ。
「すまない……思いのほか、空腹だったようだ」
「気にするなよ冬弥。けど、このセカイにも食べ物とかあるのか?」
「向こうの方に店がいくつかあるようだから行ってみよう」
「だな、ここで立ち止まってる訳にもいかねえし」
「ああ」
「遠くから足音が聞こえるような、それも大勢……」
「一体なんだ?……ってうわっ!」
「……」
角を曲がろうとした所で人とぶつかり二人は思わずよろけた。
「痛たた……ぶつかってしまってすみません、怪我してませんか?」
「俺達チョー急いでて前見てなかった、マジごめんなさい!」
「うっ……すみません、ぶつかってしまって」
「いえ、こちらこそ、ちゃんと前を見ていなかった俺達も悪いので」
「こっちこそ、ぶつかって悪い……って」
「あなた達はさっき街頭ビジョンに映ってた……」
続