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    th8n9s

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    1ケ月ぶりに休みが合って舞い上がる大人アツオサ
    #あつおさワンドロライ
    お題:「酔っ払い」+3h お借りしました!

    ##あつおさ

    好きが止まらない 侑と直接会うのは今日がなんと約一か月ぶりのことだった。侑の日本代表としての海外遠征に、今度はリーグ戦に復帰したと思ったら試合が遠方の会場と、なんともスケジュールが噛み合わない中、やっとのことで掴んだ休日だ。
     練習が終わった侑が、治のひとり暮らしの家に駆け足でやってきたのはつい数時間前のことだった。侑が来るまでに手持無沙汰で作っていた料理をすっかり全部腹に収めて、ちょっといい酒で乾杯して、それからだらだらと片づけをしている内にもうすっかり夜は深くなる。
    「おさきー」
     治が先に風呂から上がると、侑の姿はそこにはなかった。どうせソファーでだらけているのだろうと「おいツム、お前も入ってこいや」と上から覗き込む。
    「あ、サムぅ、遅いやんか! 何時間待ったと思うねん。待ちくたびれて家帰るところやったわ」
    「アホ、そんなかかっとるわけないやろ」
     酒はちょびっと飲んでいたとはいえ、さっきまではまだもう少ししゃんとしていたはずなのに、侑の顔はすっかりと緩んでいる。ソファーに全身がくっついてしまうぐらいに体を預け、ゆっくりと顔だけを治に向ける姿は、どう見ても酔っ払いのそれだ。
    「なんや、また飲んでんのか? 今日飲みすぎちゃうか、ツム」
     机の上には、さっきまで無かったビールの缶が何本か転がっている。それを呆れた顔で見ていると、侑は腕だけを高く上げて「そんな飲んでへん! ちょびっとだけ、ちょびぃっとだけ飲んだだけや!」と声高に叫んだ。それに背中を向け、冷蔵庫の扉を開く。
    「酔っ払いが何言うとんねん。それにいつもはお前、こんなに飲まへんやんか……って、おい! ツム、冷蔵庫のビール全部飲んだんか!」
    「ええやんか! 俺かて久しぶりの連休やねんもん! ちょっとぐらい飲ましてぇな!」
     じたばたとソファーの上で子供みたいに暴れる侑が、勢いよく起き上がる。
    「ちょお、サムどこ行くねん。こっち座れや」
    「何言うとんねん。お前もはよ風呂入ってこいって」
    「なあ、はよぉサムぅ。サムが来てくれんと俺は動かんー!」
     侑は自分の隣のスペースを何度も叩きながら、はよはよと治を呼びつける。酔っぱらった侑は一度言い出したら煩いから面倒だ。しぶしぶ隣に座ってやると、「ええ子やなぁ、治くんは」と今度は治の肩にかけていたタオルを奪い、頭を少し乱暴に撫でまわす。
    「フッフ、任せとき。俺がキレイに乾かしたるからなー」
    「力強いねん! 自分でできるからええって、離せや」
    「嫌や! 俺にさせてぇや! なぁ、サムぅ優しくするから!」
     面倒なことになったと好きにさせていると、侑は鼻歌交じりにタオルをガシガシと動かした。
    「ふ、ふふふ」
    「何やねん急に笑って。ツム、何や今日お前ちょっと変やで。こんな酒の飲み方せぇへんかったやん」
    「やって、ちゃんと会うの一か月ぶりなんやで! そんなん舞い上がるに決まってるやん!」
    「お前は子供か」
    「はあ⁉ サムかって、今日の飯めちゃくちゃ豪華やったやん! 俺の好きなもんばっか作りやがって!」
    「ぐ、それはたまたまや! ようさん材料あったから勿体なくて作っただけやし!」
    「嘘つけ! わざわざ準備したんやろ! 知っとるわ!」
     そう言うと、侑はタオルを持つ手をピタりと止める。
    「せやねん、そんなん知っとるねん。そうなんやけどな……!」
     急に侑の声が震え出す。え、と驚いていると、コツンと背中に侑が頭をくっつけてきた。
    「何や俺、めっちゃ愛されてるやん! って、そう思ったらな、何かヤバなってんや! 頭ん中爆発してまいそうになって、どないしよってなって、そしたらそんなん飲むしかないやろ……!」
     後ろから腕をぎゅっと回される。治の背中にぴたりとくっついて、侑は治の肩口にするりと頬を寄せてきた。
    「けどな、飲んでも飲んでもサムのこと、めっちゃ好きやってなってもうて、全然抑えられんねん! 酔っぱらったらちょっとはマシになるかと思ったら、全然アカン! ……なあ、サム、サムのこと考えたら、めちゃくちゃ好きが止まらんくなんねん、どないしよう……」
     耳元で、侑が吐く息は熱い。さっきまで風呂に入ってたのはこっちなのに、侑の方から熱が伝わってきている気がするくらいだ。まだ少し濡れた髪が鼻先に触れることをおかまいなしに、侑はサム、と名前を呼びながら首筋に何度もキスをしてくる。
    「サム、好き……好きや。なあ、サムは? 俺のこと、好き?」
    「そんなん、今さらやわ」
     振り返って侑の顔を見ると、いい歳した大人が何とも子供みたいな顔をしてこっちを見ている。その姿に、胸の奥がじんと疼く。
     今さら、そんなこと聞かんくてもわかるやろ。そう言ってやってもよかったけれど。
     日本代表として第一線で戦ってるこいつが、バケモン相手にボール打ってバンバン活躍してるこの男が、今やただの小さなおにぎりを握ってる自分のことがこんなにも好きやと言って、涙目になって頬を赤らませてる姿が、何とも愛おしくて仕方がない。
    「好きに、決まっとるやろ」
     少し照れくさくなってすぐに顔を背けると、「治ー! 俺も好きや! んー」と頬へ唇を押し付けられた。侑はにやつきを抑えられない様子で、へへっと笑う。
    「なあ、もっとしてもええ?」
    「しゃあないなあ、侑くんは」
    「お前かって、したいって顔に書いてるやんか」
    「何や、わかっとるやん」
     侑の体を引き寄せる。緩みきった侑の顔を見ていると、自分も今同じ顔なんやろうなと思う。それって、すごく、幸せやな。そう思っていると、「俺、今幸せや」と侑の声が聞こえた気がした。
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