しょっちゅう喧嘩しては別れる🎈🌟の話ふんふふ〜んと鼻歌を歌いながら昼休みの校内を歩く。
本当は今日は登校するつもりなかったんだけど、古い知人にお願いされたものが完成したので昼から登校したのだ。
今回のはすっっっごく可愛くできたから見せるのがとても楽しみだ。
そんなわくわくとした気持ちで校内を歩いているとふと、聞き覚えのある大きめな声がした。
このよく響く大きな声は間違いなく彼だろう。
せっかくきたんだし挨拶ぐらいはしよう、と声のする方へと進むとそこには予想していた通り、司先輩がいた。
予想外なことにその側には冬弥くんと弟くんもいる。
この組み合わせで類がいないのは珍しいな〜と思いながらボクは3人に声をかけた。
「やっほ〜!司先輩に冬弥くんに弟くん!3人で何してるの〜?ボクも混ぜて混ぜて!」
「お!暁山か。二人には少し愚痴を聞いてもらっていただけだぞ。」
「え〜!司先輩が愚痴を言うなんて珍しくない!?というか今日は類は一緒じゃないの?」
ボクがそう言った途端司先輩の肩がピクリ、と反応した。
あれ、もしかして不味かった?
そう思って弟くんの方を見ると弟くんはめんどくさそうにため息をついていた。
あ〜〜〜なんとなく、状況が分かった‥。
「‥‥あいつなんて知らん!!」
司先輩はそう言って口を膨らませながらぷい、とそっぽを向いた。
え、怒り方可愛くない!?
ぷりぷりと怒っている司先輩を真剣に宥めようとしている冬弥くんを片目に弟くんに小声で話しかける。
「あの二人、また喧嘩してるの?」
「まぁ、喧嘩っつうか別れたらしいけどな。」
「いやいや、あの二人の別れたは別れてないでしょ。一ヶ月前も喧嘩して別れてたじゃん。」
「正確に言うと3日前も別れてるぞ。アイツら週に一回は別れてるって言っても過言じゃねぇからな‥。」
週に一回って‥。
会うたび喧嘩したり別れたりしてるなぁとは思ってたけどさぁ‥。
衝撃の事実に思わず引いてしまう。
これだけ喧嘩しても仲良いんだからボクが気にすることではないと思うけどさ‥。
「類と別れた原因は何なの?」
「神代先輩が司先輩に変な‥変わった?服を着させようとしたらしい。」
いつから聞いていたのか、冬弥くんがボクの方を向いてそう言った。
「変な服って?」
「それが俺にもわからなくて‥。」
そう言って冬弥くんは困ったように司先輩を見る。
それに気づいた司先輩はまだ怒っている様子でボクの質問に答える。
「変な服、というよりはオレが着るにはふさわしくない服、だ!オレはカッコいいスターになる男だぞ!?それなのにあんな、女性が着る可愛い服をを‥!!」
ん、?んん??
女性が着る可愛い服。
なんだか心当たりがあってボクは手に持っている紙袋を見る。
ここに入っているのは類から頼まれたかわいい〜メイド服だ。
完成した時に類に写真送ったなぁ。
それを類が司先輩に見せて着てって頼んだ、とか?
てっきりショーで使うものだと思ってたからまさか司先輩に着せようとしてたことに驚きだよ。
いや、ショーでメイド服?とも思っていたけどさぁ!
知らなかった類の思惑に今度こそドン引く。
たしかに司先輩こういう服似合いそうだけどさぁ。
本人が嫌がるならダメでしょ。
うん、今回は類が悪い。
ボクは心の中で全面的に司先輩の味方をすること宣言した。
と、その時だった。
「司くんっ!!!」
そう言って現れたとは類。
必死に司先輩を探していたのか額には汗が伝っている。
そんな類はボクたちのことなど目に入っていないのか真っ直ぐと司先輩の方に向かって両手を掴んだ。
司先輩はそれに対してふん、と類から顔を背ける。
あ、手は振り解かないんだ‥。
「司くん、僕が悪かったよ。もう二度とあんなこと言わないから、許してくれ‥!」
「‥どうせオレは可愛くもない男だ‥。類だってああいう服が似合う女の子がいいんだろ!」
そう言う司先輩の目には涙が溜まっていた。
「それは違う!司くんが可愛いからきっと似合うと思って言ってしまっただけなんだ!決して女性がいいからと言うわけではない!ボクには司くんだけだよ‥!」
「‥‥‥オレは可愛くはない。カッコイイだ‥。」
あ、司先輩絆されかけてるな〜〜。
「もちろん君はカッコいいよ。でもボクにとっては司くんはかっこよくて可愛い大切な人なんだ。だからつい‥。君が嫌だと言うならあの服は着なくてもいいんだ。僕は君が側にいてくれればそれで‥!」
「‥本当にオレでいいのか‥?」
「もちろんだよっ!!!司くんじゃなきゃダメなんだ!!」
「類‥!!!」
そう言って二人は強く抱きしめあっていた。
うーん、これは仲直り、でいいのかな?
そう思って隣にいる二人を見るとと冬弥くんはよかった‥!と喜んでいたが、弟くんははぁ、と大きなため息をついていた。
これも多分、いつものことなんだろうな、うん。
ちょっと弟くんに同情した。
「というかこれどーしよ。」
ボクは司先輩が着るはずだったふりっふりのメイド服が入った紙袋を見つめる。
あの様子じゃ多分、出番ないよねこれ。
作らせたくせに着ないってのは気に入らないので後日ふりっふりのかわいい〜メイド服は類のサイズにリメイクして類の机の上に置いといた。