彰冬 土曜日の午前。こはねと杏は用事があるようで、今日のチーム練習は午後から始まる。彰人達は次のイベントで着る衣装を探しに、駅近のショッピングモールに来ていた。
先に会計を終えて店の外へ出た彰人は、出入口の自動ドアのセンサーに引っ掛からないよう、ガラス扉から横にずれて冬弥を待った。暇つぶしにズボンのポケットからスマホを取り出そうとしたが、隣の自動ドアが開く。右肩に大袋のショッパーバッグを掛けた冬弥が辺りを見渡していた。
「冬弥。こっちだ」
スマホを戻して冬弥に声を掛けた。冬弥は長くクラシックをやっていた経験から、鋭い聴覚を持つ。通行人の賑わう中でもすぐに彰人の声と姿を見つけ出したようで、出入口を行き交う人々をくぐり抜けて小走りで合流に来る。
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