大きな扉がゆっくりと開き、盛大な拍手の中、前髪をワックスで整えた辻ちゃんと真っ白なドレスに身に包んだ金髪の女の子が入ってくる。辻ちゃんは顔を少し赤らめて、けど嬉しそうに女の子に笑いかけた。
思ってた数十倍、きっついなぁ。
その感想を飲み込み、おれも観衆と一緒になって手を叩いた。
昔、辻ちゃんとおれはどちらから告白しただとか、そういう明確な言葉を掛け合わずに付き合っていた。普段はただの先輩後輩で、でも2人きりになったら手なんか繋いだりして。付き合ってることは誰にも言ってなかったけれど、ひゃみちゃん辺りは察してたかもしれない。
けれど、ある日突然辻ちゃんから自分じゃおれのことを幸せに出来ないと思う、という理由で別れを告げられた。引き止めればよかったのに、おれは物分りのいい男を演じ、頷いた。頷いて、しまった。
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