Keycase「ほら」
念仏と名高い古典の授業を放棄して、ヌイグルミの様なペンポーチを枕に爆睡していたミスタの頬に、冷たい金属片が宛てがわれた。
「ギャ!なんっ…!!」
放課後の喧騒に突付かれて小さく覚醒の糸に触れたかどうかの隙間に飛び込んで来た、リアルな感覚に飛び上がって叫ぶ。
その目の先に。
「あ!『某ブランド』の、限定キーホルダーじゃん!!」
シルバーアクセサリーの高級ブランドが発売した、動物モチーフのキーホルダーは、男子高校生の『カッコイイけど、買うには敷居が高い』一品だ。ドラマに出てくるような金持ちの学生は知らん。
まぁ、そんなブランドのグッズを珍しく欲しがって居たのだ。こっそり。
トライバルの美しい流線型で象られた狐の横顔と、鍵を収納する尾は鉄媒染のレザーで出来ていて、実用性もある。一目惚れだった。
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