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    くまだ

    @enbun_yum

    文章のみです。主に、ぴくしぶにあげられないような、書きかけて力尽きたもの、短すぎるものを投稿します。

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    くまだ

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    いつの間にか消してた、続きが一向に書けない芹霊を再掲しますなんかもったいなくて(何が?)。同じアパートのお隣さんになっちゃうシチュが死ぬほど好きです。

    #芹霊
    Serirei

    お隣さん傘の外へ踏み出してから、随分と自分の居場所というものが増えたと思う。

    職場、学校、一人暮らしを始めたアパート。
    それと。

    「おう、おつかれ、芹沢」

    「お邪魔します、霊幻さん」

    俺が住み始めたアパートの隣室。一方的に想いを募らせてしまっている、自分の上司の住む部屋だ。

    *******

    「へえ、良いんじゃねえか、一人暮らし」

    相談所の仕事を始めてから、幾度目かの春を迎えようとしていた頃。
    夜間学校のクラスメイトの何人かが一人暮らしを始めると聞いて、自分も一人での生活を始めてみようかと思うようになった。

    「俺、生活は母に頼りきりだったから、色々と初めてだらけにはなると思うんですけど。新しい生活で、得られることもたくさんあると思うんですよね」

    そう言うと、霊幻さんは目を細めて俺を見た。この人は時々、こんな顔をして俺を見る。ほんの少し眩しそうに、でも、目元はとても優しくて。
    眩しがる要素なんて、俺には少しもないけど、でもそれが、子供の成長を見守るような、大人の顔なのだと最近は気が付いていた。
    霊幻さんは俺よりも年下だ。けれど確かに、知識も経験も多く積み上げてきたこの人と比べれば、俺は子供みたいに何も知らない。だから、仕事の時も、あの人の安定していて頼もしい背中に付いていくと、とても安心してしまう。

    「内見、付いて行ってやろうか?どういうところを見ればいいとか、わかんないだろ」

    一瞬、甘えたい気持ちが首をもたげた。新しい生活へのワクワク感はあるものの、やはり不安ではあったから。
    でも、こんなにもべったり頼りきるのは、やはり駄目だろう、と思う。

    「いえ、一人でやってみようと思います。これも経験だし」

    「そうか。じゃあ、見るべきポイント、教えといてやるよ。不動産屋、結構ゴリ押してくる奴もいるからな。変な物件掴まされないようにしねえと」

    "ゴリ押してくる不動産屋"を想像して、ほんの少し怖気付いてしまって、俺は食い気味にお願いします、と言った。
    今思えば、もし内見の付き添いをお願いしていたら、俺が今置かれている状況も、だいぶ変わったものになっていただろう。


    *******


    「これ、俺の新しい住所です」

    「おー」

    記入するように言われていた書類を提出すると、霊幻さんの視線が、紙面をすらすらとなぞっていく。しかしその瞳が、一瞬だけ動きを止めた。
    何か間違えたところがあっただろうか、と不安になったが、結局霊幻さんは何も言わずに目を通し終え、書類をデスクの引き出しに仕舞った。

    「どうだ、新生活は」

    「新鮮ですね。形だけだけど、まともな大人に近づけた気がします。でも、家事との両立が結構大変で。母のありがたみを痛感しました」

    「おまえには学校もあるしな」

    あんまり頑張りすぎんなよ、と霊幻さんの手が、ぽん、と俺の肩を優しく叩いた。

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