モブくんがゴムつけるのを師匠が邪魔してくる話。 師匠はいつも、僕がコンドームをつけている最中にちょっかいをかけてくる。脇腹を指先でくすぐってきたり、うなじを舌でなぞってきたり、口の端のもどかしい位置にキスをしてきたり。
そんなことをされてしまうと、元々器用ではない手元は更に狂って、どうにもうまく装着が出来なくなってしまう。
こんな時ばかりじゃれてくる師匠は、鬱陶しいと思いきや、実のところすごく可愛い。でも、早く先に進みたい僕としては、とてももどかしくもある。
そんな僕の気持ちを知っているはずの師匠は、追い打ちをかけるように可愛い音を立ててキスをしてくる。
「モブ」
低くて優しくて、熱のこもった声が鼓膜を震わせる。そんな声で呼ばれると、とっくに限界まで張り詰めた僕の下半身は切なく痛んだ。
「ししょ………」
忍耐の許容範囲を超えてしまった僕は、どうしたらいいかわからなくて情けない声を出してしまう。
「もう、これ、つけられないです……」
半透明の薄い膜は、手のひらの上でぐしゃぐしゃになってうずくまっていた。まるで、何かの生き物の抜け殻みたいだ。
「あーあ、こんなにしちまって」
「……アンタのせいだろ」
そんな風に返しながらも、早く最奥まで繋がり合いたい僕の声は震えている。焦燥感で心臓をバクバクと鳴らしながら、僕は師匠の手首を掴む。すると師匠の手首の血管から、彼の早い脈動が伝わってきた。
この人だって興奮していて、とっくに待ちきれなくなってるんだ。
そう思うと、焦燥よりもずっと強い劣情が、ドロドロと僕の中に込み上げてくる。
「ねぇ、師匠……」
僕は師匠にぐしゃぐしゃな抜け殻を渡すと、そのまま手を引いて、熱く脈打つそこに触れさせた。
「それ、僕につけて」
〈おわり〉