バレンタインモブ霊「師匠、バレンタインのチョコです。食べてください」
「お、おう、ありがとな。そんな食べさせようとしなくても、ちゃんと食べるぞ?」
「僕が食べさせたいんです。どうぞ」
「ん。んん、美味いなこれ、中にシロップが入って……………って、お前、これ………」
「ふふふ、そうです。お酒入りのチョコです。アンタ、酔ってないと素直になれないから。これでたっぷり甘やかしてあげますからね」
「………………」
「あれ、師匠、怒りました?おかしいな、僕の予想では、一粒で可愛くなるはずなのに」
「…………詰めが甘いぞ、モブくん。これを見ろ」
「ウ、ウコンのパワー…………だと………?!」
「そうだ、俺は他所の俺が酒入りチョコを食べさせられて、なす術もなくお前にいいようにされているのを、たくさん見てきた」
「何言ってんだアンタ…………やっぱ酔ってるんじゃ…………」
「黙らっしゃい!!いいか、ともかく俺は、別の時空の俺に学び、先を見越してウコンのパワーを飲んだ。故にこの身体、お前の好きにはさせん!!」
「そんなに、僕とするの、嫌ですか?」
「……………え?いや、そんなわけでは」
「もういいです。師匠なんか、ずっとウコンのパワーでも飲んでたらいいんだ」
「あっ、モブ、どこ行くんだよ」
「先に寝ます。おやすみなさい」
「モ、モブ……………」
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「モブ〜お前いつまで不貞寝してんだよ〜」
「………………………」
「なあモブ、許してくれよ………寝ちゃったのか?」
「寝てはないです」
「なあ、俺、酔っ払いたくなかったんだよ」
「どうして?」
「バレンタインくらい、お前に、本音を言いたかったんだよ………酒の力とか、借りないで…………ッ、…………」
「え、ちょっと、泣いてるんですか?!って、顔真っ赤だ」
「おれは、弱い人間だから、結局酒の力を借りちゃったけど」
「もしかしてあのチョコ、全部食べちゃったんですか?」
「お前のチョコで、おれのウコンは除霊された」
「何言ってるんだ………ほら、ちょっと、危ないからベッドに座って」
「なあモブ、おれ、お前のことすげえ好きだよ」
「ッ、………………うん」
「本当は、普段からもっと言ってやりたいんだけど…………情けない恋人で、ごめんな」
「情けなくなんか無いよ。素直じゃないアンタも、僕はちゃんと好きだよ。ああ、ほら、そんなに泣かないで」
「なあモブ、お前、さっき言ってたよな……あの、さ」
「うん。おいで、新隆さん。たくさん甘やかしてあげるから」