引っ越し*
スカーとアステルはギルベルト王の強い勧めで、結婚後二人の新居を構える事になった。
「スカーさんッ……これは、ここに置いておいて良いですか?」
振り返った先で覚束ない足取りで重たい荷物を運ぼうとするアステルを見るなり、スカーはギョッと目を見開いて慌てて彼女の傍に駆け寄りアステルが荷物を落とさなように手を添える。
「いけない、そう言う重たい物は私が運ぶから、君はあちらの軽い荷物を運んでくれ」
それが自分を慮っての事と分かっていながら、アステルはどうしても納得がいかなかった。
「私だって誇り高き獅子騎士団の女騎士です、これくらいの荷物一人で運べます!!」
子供じみていると分かっていながらも、それでもスカーに早く追いつきたい、肩を並べたい、そんな気持ちが先走ってしまいついカッとなって言い返してしまう。
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