見渡す限りの枯れた荒野を、どれほど歩いたのか分からない。
疲れを感じず、そして空腹も、喉の乾きも無く、ただひたすらに足を動かし続けていた。
挙句の果てには自分が歩いている目的ですらも分からなかった。
ただ1つ脳裏に焼き付いているのはあの忌々しい男の貼り付けたような笑顔。
幸せに満ち、長年の夢が叶ったような満面の笑みを見せていた。
そうして男が動かなくなった後、オレはこの荒野を彷徨い始めたのだ。
そう、彷徨っているのだ。
目的が分からないのも思えば道理である。
一人納得をして一度瞬きをすると、何も無かった荒野がざわつき始め、暗雲立ち込める空から1本の太い雷が落ちてきた。
その中から伸びてきた赤腕が雷を裂き、荒々しい音を立てて男は現界する。
1937