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    みずひ梠

    @mizu240

    主に妖怪松版ワンウィークチャレンジ参加作品となるSSを投げています
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    みずひ梠

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    狐神の師匠と天狗の弟子の初秋

    秋涼乾燥しきった冷たい風が、杯に入った酒を揺らした。
    水面に映る月と眼も揺れ、輪郭を失い溶けていく。
    俺はその様を只々眺めながら、酒に口を付けることなく物思いに耽っていた。



    「縁側で独り月見酒とは乙なものですね、師匠」
    「来たか、不肖の弟子よ。お前は何時も俺がひとりを嗜もうとすると横槍を入れに来る」
    「それは師匠が独りで美味い酒を呑もうとするからですよ。天狗という怪は酒好きな事、ご存知でしょう?」
    「戯言を。お前ならもう少しまともな法螺を吹けるだろうに」
    「相変わらずつれませんね、師匠。──おや、涼やかで良い風だ。もうすっかり秋ですね」
    「秋といえば豊穣神達があくせく働く頃……。彼らと同じ狐神として、何か想うところは」
    「無い。」
    「そう食い気味に答えなくても良いじゃありませんか、せっかくの酒の席なのに」
    「お前と呑んだ覚えは無いぞ、不肖の弟子。」
    「やれやれ、中々話が続きませんね。」
    「……仮にも、神の名を冠する者達が人間等という脆弱で愚かな者達に施しを与えようなぞ……無駄な事だ」
    「そんな擦れた事を告げておきながら、実際の所は働きたくないだけだったり」
    「応えた所で巫山戯るのなら会話を続ける意味は無い」
    「嫌だなあ、少し遊んだだけじゃないですか。その眼差し、此の風のように冷たいですね」
    「……。」
    「……ねえ師匠、私は春風も好きですが秋風も好きなんですよ」
    「春風が全てを芽吹かせる祝福の風ならば、秋風は全てを眠りに導く安息の風……というよりは」
    「命を次なる代に託す為の、結びの風だと想うのです」
    「人々は散りゆく木の葉などから寂しさを感じる節があるようですが、私はそうは思わない。」
    「だって、役目を終えて眠りにつく事こそ一番の救いじゃありませんか。」
    「……貴方はどう思いますか、師匠?」
    「知ったことか。詩を認めたいのなら人に化けてやれ」
    「ふふっ……こんなこと、私の事情を知らぬ者に告げたところできょとんとした顔をされるだけにございます。しかし、ああ──今宵は良い月だこと。師匠も面を上げて眺め観たら如何です?」
    「必要ない。酒に照り返される月ですらこうも輝いているというのに……直で観たが最期、眼を焼かれかねん」
    「師匠……意外に貴方も言葉遊びがお好きなようで何よりです」
    「……。」



    口を噤んだまま、杯に僅かに注がれた酒をぐいと呑み干した。
    生きる事を放棄した等とほざきながら、他者を気にかけずには居られなかった優しく愚かな不肖の弟子。それが手塩に掛け育て上げた童もこの社を出、ようやっと望み続けた真なる孤独を手に入れた、今になって。
    何故過去の事を想い起こしたりしたのだろうか。
    静寂轟く社には何の気配も無い。
    聞こえてくるのは秋風の残響だけだ。
    心臓に纏わりついてくる空虚の感は、弟子の創った出来の悪い酒を呑み干してしまった故の……いや。
    秋風に吹かれようが次なる代に何も託せない愚かしさから来るものだろう。
    そう想い綴る事にした。
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    Sasame

    DONE細雪んとこの獠香ちゃんさんは『浮気性』をお題に、140字でSSを書いてください。
    #shindanmaker


    原作以上の獠香ちゃん
    「香ちゃんってば、浮気性だったのね」
     あたしが持つスマホを覗き見した後、獠ちゃん悲しい……と、泣き真似をする獠に冷たい視線を向ける。
    「何言ってんの?」
    「おまぁこの前、新宿駅でナンパされてついて行こうとしてだろ?」
    「あれはナンパじゃなくて、ただ道を聞かれただけよ!」
     はぁ、と獠は息を溢して「とにかく今後男に道案内するな」と言われた。
    「あのね獠、あたしが浮気性なら今頃ここに居ないわよ!」
    「はぁ? それどう言う意味だよ?」
    「あたしが獠以外の人に興味がないから今でもここに居るんでしょ!」
     もう少しあたしを大事にしろ! と獠に向かって手元にあったクッションを投げたけど、簡単に受け止められた。
    「言ったな、じゃあお望み通りに」
     にやり、と獠が笑う。
    「えっ?」と声が出ると同時に獠の腕の中に閉じ込められた。
    「今からたぁぷり分からせてやるよ」と今度は肩に担がれ向かった先は獠の部屋。
    「ちょっ! 離してよ! 獠!!」
    「だぁめ! 香が浮気しようなんて考えないようにしないとな!」
     必死の抵抗も虚しく、翌朝、獠のベッドの上で「10%しかなかったのに……」と呟くと獠はそれさえも駄目だと 552

    Remma_KTG

    DOODLE診断メーカーで出たやつ書いてみた。

    蓮魔の長晋のBL本は
    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367
    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
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