Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

    ・オタクの二次
    ・文章の無断転載・引用・無許可の翻訳を禁じています。
    ・Don't use, repost or translate my Fanfiction Novel without my permission. If you do so, I ask for payment.

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍰 🎈 🎁 🍮
    POIPOI 127

    @t_utumiiiii

    ☆quiet follow

    ※謎時空探偵パロ(1990年代を想定)
    Mr.ミステリーが男やもめのレオ・ベイカーの依頼を受けて失踪した娘の行方を探す二次妄想です(還…パロ)

    4「子ども部屋」に入ったMr.ミステリーの目を引いたのは、その部屋全体に埃が薄っすらと積もっていること、そして、ベッドの上に吊るされたモビールだった。
    レオの話を聞くに、娘のリサは初等科に通う8歳の子供で、赤ん坊を寝かせておくベッドの上よろしく、天井からモビールを吊るしておくような寝たきりの年齢ではない。埃を撒き散らすカーテンを開けてみても薄暗い部屋でよく目を凝らしてみると、天井から吊り下げられた円形にぶら下がっているのはすべて、十字架や何らかの羽根、羊の頭を象ったシンボル、藍色のガラス玉、目玉など、何らかの宗教的意味合いを帯びたお守りであることが容易に想像のつく形をしていた。

    「あれは」とMr.ミステリーが問うと、レオは特段憚ることもなく、何となれば、壮年の男性らしくどこか頑なさのある口元を幾分綻ばせながら、「お守りです」と答えた。
    「あの“羊飼い”の言う通り、このモビールを通して御方に見守られるようになってからというもの、リサは夜中に魘されることもなく眠れるようになったんです……」
    「……その、“羊飼い”というのは?」
    その時ばかりは、事務所に駆け込んできたその時から常にある焦燥ぶりが落ち着き、レオはいつになく穏やかに見えた。そこに、いくらか怪訝に眉を寄せながらさらに探偵が問うてみると、レオの方もまた訝られているとも思っていない様子で、事もなげに答える。

    曰く、ここからそう離れていないホワイトサンドストリートの一角に祈祷所を構える祈祷師がおり、彼は主の意向を伺うだけでなく「託宣」を授かり、それを迷える子羊ーー要は、己の信者たちーーに伝える能力を以て、社会に奉仕する善行者であるらしい。
    西洋とは異なるルーツを持つMr.ミステリーは大した疑問を挟まず(そういうものか)とその説明を受容したし、仮に彼が疑問を呈したところで、それを根っから信奉している様子でめぼしい家具も売り払い祈祷道具を購入している状態にあるレオは聞き入れなかっただろう。
    レオはさらに、Mr.ミステリーが彼の説明に一旦納得した様子で口を噤んだのをよそに、“羊飼い”が家族のーー主に父と娘の生活において、いかに重要な働きをしたのかについて熱心に続けていた。医者に匙を投げられたリサの体調は、あそこに通うようになってから改善しただの、今は工場の経営についても託宣をお願いしているだの。
    熱心に信奉している様子のレオの姿に注意を払うというより、むしろ子供部屋の学習机の上に並べられたノート、女児の持ちそうな匂い袋、そして、机に所狭しと貼ってある折り紙の花を観察していたMr.ミステリーが何気なく、「娘の行方について、その“羊飼い”には聞いたのか」と問いかけてみると、それまで熱心に羊飼いの功績について語っていたレオの口がふと止まり、レオは、彼自身も困惑しているように首を傾ぐ。

    依頼人の記憶喪失(或いは記憶の混乱)は、年単位のものなのかもしれない。Mr.ミステリーはやや(参ったな)と言いたげに首を竦めたが、彼はあまり表情が表に出ないタイプということもあり、レオにそれを見咎められることはなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
    2791