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    @t_utumiiiii

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    @t_utumiiiii

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    ミルエダ+オフェンス(※エダは不在)
    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理などから捏造
    ※19世紀末を想定した差別・偏見描写
    ※捏造設定荘園

    患者(ミルエダ+オフェンス) 荘園においてエミールに与えられた肩書き(ロール)は「患者」であるので、試合の場で彼が、およそ患者らしからぬ立体的な動き――鉤爪を使った逃走――を見せようと、多くのサバイバーは彼を「患者」と認識して疑わなかったし、彼が何故患者になったのかの来歴に興味を持つような奇特な者もいなかった。
     彼は常に、例の女の「心理学者」に連れられ、彼女よりも背の高い身体の肩を丸めながら女の影に隠れるようにしているが、試合の場での動きには申し分なかった。肉体に問題がないという事であれば、彼の病は精神か頭に関するものなのだろうと、消去法で推測することはサバイバーらにとってそう難しいことでもない。
     それ以前に、試合の場での活躍を見ずとも、日頃エミールが身に付けているのは、時に攻撃的な態度を見せる精神病者のための薄汚れた拘束衣だった (「心理学者」による治療は一定の成果を上げているようで、患者がそのような攻撃的な態度を荘園で見せたことはなかったが)し、汚れた包帯を巻き付けたボサボサ頭に拘束衣、しかも裸足という、少なくともあまり身なりに気を払っている風には見えない彼の容貌、特にその下瞼は、およそ「通常の人間」らしからぬ引き攣り方をしていたから、患者を一目見た時点で、彼の抱える「病気」が、精神か或いは脳機能に起因するものと検討を付けることもできない話ではない――つまり、エミールは一見して「患者らしい」容貌と身なりをしているということだ。しかも、彼の治療を行っているという「心理学者」に聞けば、その辺りの事情は特段の隠し立てもなく開示される。
     兎に角、エミールがその頭脳か精神かに何らかの「問題」ないし「障害」を抱えているということはサバイバーらにとっては知れたことで、それは特段、特別なことでもなかった。「精神を病んでいる」ということは、サバイバーの多くが属している19世紀末の西欧社会でなら兎も角、そこから隔離され、今や荘園の中に閉じ込められているサバイバーの面子には、そう珍しいことでもない。
     故に、患者エミールは、サバイバーの中で妙な目立ち方をするでもなく、「いつも例の「心理学者」に連れられている患者の男」、という程度の見られ方をしていた。

     荘園に閉じ込められたサバイバーの一人、オフェンスことウィリアム・ウェッブ・エリスはいたって陽気な性質であり、彼自身がスポーツ選手としての経歴を持つことから、チーム戦におけるチームメイトとの結束の重要性をよくよく理解している。
     その朝、時間を問わず夜のはじめのように薄暗い試合前待機(マッチング待機)での待ち時間は、刻一刻と伸びていた。ハンターの側の調整に不具合が起きているのかもしれない。今朝の試合の面子として掲示されていた一等航海士は、まあどこかで酔い潰れているのだろう。もう一人、ここに姿を表していない顔ぶれの踊り子は、化粧に時間が掛かっているか、衣装選びに時間が掛かっているか、アクセサリーの選択に時間が掛かっているか、或いは、他人に試合の代理出席を頼むのを忘れて、すっかり寝こけているか。兎に角、彼は長机の置かれた試合前待機室で待たされており、彼の横で所在なさげに肩を丸めながら座っているのは、例の薄汚れた拘束衣を身に着けた患者であった。
     時間を持て余しながら、その状況でウィリアムが思ったことはこうだ。俺はこれまでこの男とはあまり話したことはないが、これを機に親交を深めておいてもいいだろう。即席とはいえ、チームメイトだ。チームメイトとは関係を築き、信頼し合い、結束しておくに越したことはない。

     ウィリアムの予想に反して、声をかけられたエミールはいたって自然な受け答えをした。挨拶をすれば鳥の巣めいてぼさぼさとした頭を揺らしながら挨拶を返し、質問をすれば拙いながらも、的をそこまで外さない答えが返ってくる。
    「きみは患者だっていうからさ、もっと話が通じないと思っていた」
     ウィリアムは清潔感を感じさせる程度に短く刈り込まれ、整えられた髭の生えた自らの顎を擦りながら、そう言って人好きのするように清々しくカラッと笑う。エミールはそれを、普段通り平常ではない目元――下瞼の引き攣りはあるものの、別段気を悪くした風もなく聞いている。試合が開始になるような気配は、一向にない。
    「まあ、早く良くなると良いな」
     ウィリアムは社交辞令程度の言葉としてそう言ったし、現に、それは彼の本心でもあった。そこからさらに続けた「試合に勝ったら、荘園主が特効薬を出してくれるかもしれないし」というのは、病に苦しんでいるやもしれない患者相手には若干軽率な軽口だったかもしれないが、荘園主が招待状の中で提示した条件というのは、得てしてそういうことだ。金が本当の望みであれば望むままに金で報いられ、物の奪還が目的であればその物で報いられる。ウィリアムが望んだものは、ゲームの創始者としての「正当な評価」とそのための援助だった。
     しかし、エミールはそれに「ううん」と首を振って、だらしなくうねり、乱れている癖毛の黒髪を揺らしつつ否定する。
    「俺はそれ、いらない」
    「……は?」
     引き攣った普段の病者の顔のまま、微笑むような面で治癒を否定したエミールの言葉は、ウィリアムの理解を越えていた。え? どういうことだ。俺の聞き間違いか? だって病気なんだから、当然、治った方がいいもんだろ? ウィリアムが改めてそのようなことを聞いてみると、エミールは拙い故に和やかに響く声で、「俺は、エダがいればいいから、」と改めて答えた。
    「エダは、俺の治療を完成させるためにここに来たんだ。エダは、ここで俺がじぶんを取り戻せるって言ってた。俺は、エダがいればいいから、しょうひんとかは、いらない……俺を治してくれるのは、彼女だけだから」
    「……あ、ああ、そうか……」
     予想外の回答に驚くままに目を丸くしていたウィリアムは、ぎょっと驚いたところからすぐには戻ってこれず、半ば茫然としながらも、首を竦めて軽く了承した。俺からしたら、怪我なんて手段は何でもいいから直してほしいもんだが、彼にとってはそうではないらしい。
    「……ま、兎に角、早いこと治ると良いな。俺はそう思うよ」
     そもそも身の回りに大病を患った者がいるかいないかといえば、ウィリアムの周りにはそうそういなかったが、治療の「され方」に拘りがある患者というのはあまり聞いたことのある話ではないし、それは一般的な患者の――病に苦しめられている者の――態度ではないと、ウィリアムは思う。
     しかし、前述の通り病気とは縁の無い暮らしをしてきた彼に、病気や治療にあたって一家言あるという訳もなく、さらに言えばエミールに対して、「即席のチームメイト」以上の関心を持っているわけでもないウィリアムは、それ以上その会話を続けようとは思わなかった。
     とはいえ、そうやって適当に会話を打ち切ったところで、試合待機室に近づいてくる人影の気配もなければ、試合開始の(或いはそもそも今回の試合の再現がキャンセルされるような)予兆もない。これは相当待機時間が掛かっているな、と思いながら、ウィリアムは次なる暇潰しに、ラグビーボールを指先の上で回転させ始めた。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE公共マップ泥庭

    ※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定
    一曲分(泥庭) 大勢の招待客(サバイバー)を招待し、顔も見せずに長らく荘園に閉じ込めている張本人であるのだが、その荘園主の計らいとして時折門戸を開く公共マップと言う場所は、所謂試合のためのマップを流用した娯楽用のマップであり、そのマップの中にもハンターは現れるが、それらと遭遇したところで、普段の試合のように、氷でできた手で心臓をきつく握られるような不愉快な緊張が走ることもないし、向こうは向こうで、例のような攻撃を加えてくることはない。
     日々試合の再現と荘園との往復ばかりで、およそ気晴らしらしいものに飢えているサバイバーは、思い思いにそのマップを利用していた――期間中頻繁に繰り出して、支度されている様々な娯楽を熱狂的に楽しむものもいれば、電飾で彩られたそれを一頻り見回してから、もう十分とそれきり全く足を運ばないものもいる。荘園に囚われたサバイバーの一人であるピアソンは、公共マップの利用に伴うタスク報酬と、そこで提供される無料の飲食を目当てに時折足を運ぶ程度だった。無論気が向けば、そのマップで提供される他の娯楽に興じることもあったが、公共マップ内に設けられた大きな目玉の一つであるダンスホールに、彼が敢えて足を踏み入れることは殆どなかった。当然二人一組になって踊る社交ダンスのエリアは、二人一組でなければ立ち入ることもできないからである。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE※日記のないキャラクターの言動を背景推理等から捏造
    ※捏造荘園設定

    マーサが香水使ってたらエブリンさん超怒りそう みたいな
    嫌いなもの:全ての香水の匂い(広義のウィラマサでエブマサ) チェス盤から逃れることを望んだ駒であった彼女は、空を飛び立つことを夢見た鷹の姿に身を包んでこの荘園を訪れ、その結果、煉獄のようなこの荘園に囚われることとなった。そこにあったのは、天国というにはあまりに苦痛が多く、しかし地獄というにはどうにも生ぬるい生活の繰り返しである。命を懸けた試合の末に絶命しようとも、次の瞬間には、荘園に用意された、自分の部屋の中に戻される――繰り返される試合の再現、訪れ続ける招待客(サバイバー)、未だに姿を見せない荘園主、荘園主からの通知を時折伝えに来る仮面の〝女〟(ナイチンゲールと名乗る〝それ〟は、一見して、特に上半身は女性の形を取ってはいるものの、鳥籠を模したスカートの骨組みの下には猛禽類の脚があり、常に嘴の付いた仮面で顔を隠している。招待客の殆どは、彼女のそれを「悪趣味な仮装」だと思って真剣に見ていなかったが、彼女には、それがメイクの類等ではないことがわかっていた。)――彼女はその内に、現状について生真面目に考えることを止め、考え方を変えることにした。考えてみれば、この荘園に囚われていることで、少なくとも、あのチェス盤の上から逃げおおせることには成功している。
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    @t_utumiiiii

    DOODLEクリスマスシーズンだけど寮に残ってる傭兵とオフェンスの象牙衣装学パロ二次妄想ですが、デモリー学院イベントの設定に準じたものではないです。
    the Holdover's Party(傭兵とオフェンス ※学パロ) 冬休み期間を迎えた学園構内は火が消えたように静かで、小鳥が枝から飛び立つ時のささやかな羽ばたきが、窓の外からその木が見える寮の自室で、所持品の整理をしている――大事に持っている小刀で、丁寧に鉛筆を削って揃えていた。彼はあまり真面目に授業に出る性質ではなく、これらの尖った鉛筆はもっぱら、不良生徒に絡まれた時の飛び道具として活用される――ナワーブの耳にも、はっきりと聞こえてくる程だった。この時期になると、クリスマスや年越しの期間を家族と過ごすために、ほとんどの生徒が各々荷物をまとめて、学園から引き払う。普段は外泊のために届け出が必要な寮も、逆に「寮に残るための申請」を提出する必要がある。
     それほどまでに人数が減り、時に耳鳴りがするほど静まり返っている構内に対して、ナワーブはこれといった感慨を持たなかった――「帝国版図を広く視野に入れた学生を育成するため」というお題目から、毎年ごく少数入学を許可される「保護国からの留学生」である彼には、故郷に戻るための軍資金がなかった。それはナワーブにとっての悲劇でも何でもない。ありふれた事実としての貧乏である。それに、この時期にありがちな孤独というのも、彼にとっては大した問題でもなかった。毎年彼の先輩や、或いは優秀であった同輩、後輩といった留学生が、ここの“風潮”に押し潰され、ある時は素行の悪い生徒に搾取されるなどして、ひとり一人、廃人のようにされて戻されてくる様を目の当たりにしていた彼は、自分が「留学生」の枠としてこの学園に送り込まれることを知ったとき、ここでの「学友」と一定の距離を置くことを、戒律として己に課していたからだ。あらゆる人付き合いをフードを被ってやり過ごしていた彼にとって、学園での孤独はすっかり慣れっこだった。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE象牙衣装泥庭二人とも怪我してるみたいで可愛いね🎶という趣旨の象牙衣装学パロ二次妄想(デモリー学院イベントの設定ではない)です
    可哀想な人(泥庭医 ※学パロ) 施設育ちのピアソンが、少なくとも両親の揃った中流階級以上の生徒が多いその学園に入学することになった経緯は、ある種“お恵み”のようなものであった。
     そこには施設へ多額の寄付したとある富豪の意向があり、また、学園側にもその富豪の意向と、「生徒たちの社会学習と寛容さを養う機会として」(露悪的な言い方になるが、要はひとつの「社会的な教材」として)という題目があり、かくして国内でも有数の貧困問題地区に位置するバイシャストリートの孤児院から、何人かの孤児の身柄を「特別給費生」として学園に預けることになったのだ。
     当然、そこには選抜が必須であり、学園側からの要求は「幼児教育の場ではない」のでつまりはハイティーン、少なくとも10代の、ある程度は文章を読み書きできるもの(学園には「アルファベットから教える余裕はない」のだ)であり、その時点で相当対象者が絞れてしまった――自活できる年齢になると、設備の悪い孤児院に子供がわざわざ留まる理由もない。彼らは勝手に出ていくか、そうでなければ大人に目をつけられ、誘惑ないしだまし討ちのようにして屋根の下から連れ出されるものだ。あとに残るのは自分の下の世話もおぼつかないウスノロか、自分の名前のスペルだけようやっと覚えた子供ばかり――兎も角、そういうわけでそもそも数少ない対象者の中で、学園側が課した小論文試験を通ったものの内の一人がピアソンだった。
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