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    L5XU2BQpn8sTSCA

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    血ハロ直後に、泣けない、泣いちゃいけないマイキーくんとドラケンくんに寄り添うエマちゃんの話。

    ⚠︎血ハロ後捏造
    ⚠︎距離感バグ佐野兄妹

    #ドラエマ
    drayma
    #きみ恋2
    #マイエマ卍

    愛を手渡す柔らかな手で 嫌な予感がしていた。
     マイキーがかなり前から隠そうと努めていたピリピリした雰囲気をついに隠さなかったから。学校の行き帰りについて心配されたから。マイキーの目が何かを迷っていたから。

    「大丈夫だよ。マイキーなら」

     いつもは寝ぼけているくせに、今日に限って眉間に皺を寄せて怖い顔をしていて、どうにかして取れないかなと指先で伸ばしてみた。
     お気に入りのタオルケットを持っていない両手が、背中に回る。

    「どうしたの?」

     寝癖だらけの頭を撫でても返事はない。

    「帰ってきたらお菓子いっぱい食べよ。今日はハロウィンだよ」
    「……うん」

     か細い声が返ってきて安心して離れたが、マイキーはなぜかエマのエプロンの裾を弱々しく摘んで、エマの後を追って歩いた。料理がしづらいったらありゃしない。
     けれど、それを蔑ろにはできなかった。
     マイキーには、無敵のマイキーになりたくない日がある。きっと今日がそうなのだろう。何が原因なのかは知らないし、きっと知らなくていいこと。
     エマはなんてことない風に卵焼きを焼いた。

    ----------

     ドラケンが髪を自分で結ばない日。その理由もエマにはわからない。
     けれど、そういう日は大抵マイキーもドラケンも大怪我を負って帰ってくる。もしかして、エマが結ぶことで不幸が襲ってくるのではないかと考えて、相談したこともあった。
     しかし、ドラケンは血塗れの顔でカラッと笑って「エマが結んだからこの怪我で済んでんだよ」と言うもので、しかもマイキーまでそれに頷くから、エマは納得できないながらも、頼まれたら結んであげるようにしていた。
     少しでも怪我が少なく済むように、彼らが帰って来てくれるように。決してバレないようにしていたつもりだが、実際にはバレバレで、優しい手つきが彼らのお気に入りの一つだった。
     今日も、結んでくれと頼まれたので、意気込んで櫛とゴムを持ってきたのだが、やはりマイキーと同様にドラケンも様子がおかしい。
     ピリついて、ずっと何かに気を張っている。
     何があったの、とは聞けない。男の子の世界にエマは足を踏み入れないと決めているから。
     喧嘩ばっかりで、いつまでもガキみたいなことで笑ってて、よくわからない世界。仲間はずれみたいで拗ねちゃうこともあるけど、マイキーとドラケンの笑顔が見られるなら許してしまう。
     でも、そんな苦しそうな顔するならやめてしまえばいいと思うのだ。したいことをして、笑っていられるならそれでいいだろう。そう伝えられたらどれだけいいか。
     マイキーもドラケンも、確かにワガママを言える立場である。しかし、同時に甘えたことは言えないのだ。上に立つ者には、それなりの責任が伴う。
     弱味を見せたら、下の者が不安になる。そして崩れてしまう。それは避けなければならない。
     エマにはよくわからない。ただ、エマは、彼らがそう決めたならそれを応援することしかできないのだ。

    ----------

     ドラケンとマイキーの髪を、きっちり結んでやって、エマは学校へ行くためにローファーに足を入れた。

    「じゃあ行って来ます!」

     できる限りいつも通りに。彼らに余計な心配をかけないように。
     茶の間から「おう」と応えるばかりの彼らは、珍しく玄関まで来てエマを見送る。

    「マイキーも、ドラケンも……」

     頑張ってね、は違うか。負けないでね、も違う。何か相応しい言葉はないだろうか。頭を巡らせる。

    「エマ?」

     心配したマイキーがエマの顔を覗き込む。パチリと目が合って、ふと思いついた。

    「晩ごはん、カツカレーだから。早く帰ってきてね」

     ニッと笑ってエマは家を出た。
     カツカレー、カツカレー。男の子はみんなお肉が好き。そんで、カレーも好き。だからカツカレーはみんな好き。太っちゃうかもしれないけど、今日くらいいいもんね。
     マイキーたちが帰ってくるまで何しようかな。ヒナと一緒に仮装してハロウィンを楽しみに行くのもいいだろうし、ちょっとお高めのお肉探しに行くのもいいだろう。
     そんな風に、できるだけ楽しいことを考えていたエマに届いた報せは、目の前を真っ暗に染めるには十分だった。

    ----------

     聞き慣れたエンジン音が聞こえて、止まったかと思えば、ガタガタっと玄関が開く。
     台所でこくりこくりと船を漕いでいたエマは、慌てて頭を左右に振り、眠気を吹き飛ばして玄関へ向かった。時計の短針はすでに11を過ぎていた。

    「マイキー、ドラケン?」

     広い玄関に横たわる比較的小さな影と、上り框に俯いて座り込む大きな影。どちらとも血と砂埃の匂いがする。

    「……おかえり」

     恐る恐る声をかけるが、反応がない。どうしたのだろう。疲れ切ってしまったのだろうか。

    「…………ただいま」

     振り絞るような声でマイキーが返事をした。驚きつつも、エマは、2人がお腹を空かせているはずだと台所のカレーを温め直しに行こうと踵を返す。しかし、片手をマイキーに取られてしまい、足を止める。

    「ど、どうしたの?」

     返事はない。そのままマイキーはエマから手を離して、1人で元ガレージの自室へと戻ってしまった。それを追いかけようとも思ったが、俯いたまま動かないドラケンの方が放っておけない。

    「ねえドラケン、2人ともどうしたの?何があったの」
    「……場地が」
    「うん」

     ここ最近話を聞かなかった幼馴染の名前が出てきて、頭の隅に追いやった嫌な予感が目を覚ます。

    「場地が、死んだ」

     すこーんと頭を殴られたような衝撃が走った。
     場地?場地って、あの?幼馴染の、東卍の創設組の場地圭介?
     情報を飲み込むより先に、体が動いた。

    「っドラケン……!」

     少しもこちらを見てくれなくてもよかった。ぎゅっとその頭を抱え込んだ。
     悲しい、寂しい、どうして場地が?急すぎる。様々な思いが駆け巡りながらも、エマはドラケンを離さない。
     ドラケンやマイキー、創設組にとって場地がどれだけ大事な存在だったか知っている。バカを言い合って、バイクで一緒に走って、学校も違うのに。それでも毎日のように会っていたのは、一緒にいたかったからだ。
     しかし最近は話に出ていなかった。マイキーとドラケンがピリつき始めた時期と、話題に出なくなった時期は重なる。
     点と点がつながっていく。けれど、推測で線を描くのを抑えて、エマは腕の中にいる彼をどうにかしなければという思いに集中する。
     なんと声をかけたらいいのだろう。何を言っても無駄な気がして、パクパクと口を動かすだけだ。

    「……なぁ」
    「!、なに?」

     低い声は覇気がない。
     エマが応えると同時に腕を引っ張られて、逆にドラケンの腕の中に引き寄せられた。

    「きゃっ」

     小さな悲鳴だけが響いたが、すぐに夜の闇に吸い込まれて消える。玄関には布擦れの音と、男の荒い呼吸だけが聞こえる。

    「っ……」

     いつも強くて、涙を見せることはないドラケンが、自分よりかなり小柄な少女を抱えて体を震えている。細い腕に触れた冷たい雫は、おそらく涙であろう。声を上げることは憚られた。
     エマはそっと彼の大きな背中に腕を回すことしかできなかった。

    「ごめん、ごめっ」

     今だけ。日付が変わるまででいい。この腕の中にいてほしい。
     目の前で大事な友人を失ったドラケンには、自分がどうしてエマを抱きしめているのかもわからなかった。
     人肌恋しかったのだろうか。いや、彼はただ、自分の一等大事な者がちゃんと手の届く範囲にあるかどうかを実感したかったのだ。自分の手からこぼれ落ちてしまわないように腕の中に閉じ込めて、奪われないように。

    「大丈夫。大丈夫だよ、ドラケン」

     エマはここにいるから。
     少女の優しさが、大柄な少年の焦燥感を治めていった。

    ----------

     翌日、いつのまにか自室から出てきていたマイキーが道場にポツンと座っていた。いつまでも起きてこないと心配になって見に行ったら自室にいなくて、家中を探したのだ。
     キラキラと日光が差し込んで、道場を明るく照らす。その中で、マイキーは何か考え事をしているようだ。

    「マイキー」
    「……ん?」
    「おはよ」

     もう太陽は空の真ん中を通り過ぎている。
     エマの声にマイキーが振り向いて、エマは柔らかく笑いマイキーの隣に腰掛けた。

    「ケースケ、死んじゃったって。ドラケンに教えてもらった」

     コツンとマイキーの肩に頭を乗せて話す。マイキーからの返事はない。

    「……また、寂しくなるね」

     また。真一郎を失ったときと同じ。彼はもう二度と戻ってこない。

    「ケースケってば、マイキーより弱いくせに毎回マイキーに挑んで、負けて。次こそぜってえ勝つ!って……ふふっ」

     2人が白い道着に身を包んでいた頃は、いつもそうやってルールが決まっているケンカをしていた。

    「でも、ウチ、ケースケにもいっぱい助けてもらってたなぁ」

     マイキーがいないときに変な不良やナンパに絡まれて、ちょうど場地が通りかかったことが何度かあった。その度に助けてくれた。終わった後は、めんどくせえとか言いながら、マイキーやドラケンと合流するまで一緒にいてくれた。

    「ケースケって、意外と優しかったよね」
    「……うん」

     初めて、マイキーから返事が返ってきた。
     そんな優しい友人を失った痛みを、エマが完全に理解してあげることはできない。
     エマは膝立ちになってマイキーの前に立ち、両腕を広げる。そうすれば、マイキーもあぐらをかいたまま、ゆるゆると腕を広げる。エマは笑ってその腕の中に飛び込んだ。

    「うぉ」

     どさっ。まさか抱きつかれると思っていなかったマイキーは、後ろに倒れる。

    「もう、エマが重いみたいじゃん!」
    「重い重い」
    「重くない!」

     バタバタと両脚をばたつかせて、反抗する。

    「…………エマ」
    「なぁに」

     ポツリと溢れた名前にも、絶対に返事をしてあげる。

    「葬式って、何で出ればいい?」
    「制服でいいと思うけど」
    「そっか」
    「あとで準備しとくね」

     エマはマイキーの首へ腕を回し、マイキーはエマの背中をさする。ドクンドクンと2人の心臓の音が重なる。

    「エマ」
    「なーに」
    「俺が、悪かったのかな」

     どうして場地が死んだのか、何があったのか。全部教えてもらっていないエマにはわからない。ただ、

    「マイキーのせいでケースケが死んだなんて、ドラケン言ってなかったよ」

     ドラケンはエマに嘘を吐かない。昨夜、ドラケンはエマに場地が死んだということだけを教えて帰った。そこにマイキーが怒られる理由はなかったというわけだ。

    「マイキーが悪いことしたら、ドラケン、めっちゃ怒って、エマからも言っておけ!って言うもん。だから、マイキーは悪くないんだよ」

     マイキーの腕にぎゅっと力が入る。

    「俺は、許されるの?」
    「わかんない」

     世の中の正しさなんて、まだ子どもだからわからない。でも、エマは常にマイキーの味方でいたい。

    「マイキーが自分のこと許せなくても、エマはマイキーのこと許しちゃう」

     エマとの約束を破って喧嘩しに行っちゃっても、2人でお出かけしたときにお腹いっぱいになって寝ちゃっても、今まで許してきたでしょ。

    「俺は、」
    「エマが許すから。」

     この弱い1人の男の子が、必要以上に自分を責めなくていいように。
     あなたは罪人なんかじゃない。それをどうしてもわかってくれない、分からず屋なあなただから、そばにいてあげたいと思ってしまう。

    「マイキー、大好きだよ。……ねえ今度デートしよ」

     嫌でもこれから大切な友人を失った事実と対峙しなければならないのだから、せめて今だけは楽しいことだけ考えていられるように。甘くてキラキラの夢の中で、好きなことだけ考えていられるように。
     道場にはいつも3人で揃っていたのに、寂しくなる。なんでマイキーを置いていっちゃったの。なんて、返事が届くわけもない。
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    DONE⚠︎最初から最後まで全部『ONE PIECE FILM RED』の結末のネタバレです。自己責任で。
    ⚠︎ONE PIECEを少し齧っている人間が書きました。原作と異なる点があるかと思います、ご容赦ください。

    REDからしばらく経ったある夜の話。

    見終わった後、速攻マブに連絡して生まれたオタクの幻覚です。
    マブに支部の垢バレるの恥ずかしいのでポイピクで。
    赤髪海賊団の音楽家 今晩レッドフォース号の不寝番を担当するのは、副船長のベン・ベックマンと何人かの船員。ベックは今日は甲板の担当だ。他は晩飯を食べ終わって、自由に過ごして勝手に自分の部屋で寝て始まる。
     僅かに残っている夜更かし共が集まる食堂にベックは足を運んだ。

    「まだ起きてんのか。誰か俺と当番代わってくれんのかよ」

     そう言うと全員揃って首を横に振る。自由にする夜更かしが好きなだけで、義務の夜更かしである不寝番は嫌なのだ。それを分かった上で揶揄ったベックはくつくつと笑いながら、小さな宝箱を開ける。あ、と小さく溢したのは誰だっただろうか。
     ベックはその中の電伝虫を手に取って、シーっと人差し指を口元に立てた。
     今日の波は穏やかで、雲ひとつない星空は宝箱と見間違うほど輝いている。そんな中、ベックはハンドレールに置いた電伝虫を起こした。
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