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    SATY_THE_FOOL

    @SATY_THE_FOOL

    書きたいものを書いてゆきます。

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    SATY_THE_FOOL

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    ここもR指定ないターンだから全体公開しちゃいます。
    推敲大好きマンなので絶対に頒布するときと文章が変わってると思います。これは叩き台だから!という気持ち😂

    タイトル未定ピリカラパロゆも・その3            3


     受けたい授業を選ぶっていうより、効率よく単位をとれるように講義を選んでるから、一日中学校にいる日と、午前中に講義を終わらせて午後から夜までバイトの日と、午前中は休みにできるから前の日の夜に深夜帯のシフトに入る日でローテーションが出来ている。
     金曜日の夜はだいたいゲームのイベントが入ってるから、土曜日はバイトも休み。日曜日は空きが出たら入る。あと店長のSOSが入った時も、タイミングが合えば出てあげるかな。
     オレの希望は週に二十時間くらい働くのがベストなんだけど、卒業と同時にバイト辞めた子が多くて、ここんところ 少し時間数を越えてしまっている。扶養の範囲で収めるためにはそろそろ仕事量をセーブしておかないといけない。
     店長兼オーナーの狗丸さんは四十代のおじさんで、寝癖そのままで接客したり、無精髭が残っていたり、時々だらしないところもあるけれど、基本的には良い人だ。奥さんは専業主婦やってるらしくて顔も見たことはないんだけれど、最近何人目かのお子さんが生まれたとかで、育児もしつつ店長業務をやってるから、慢性的な寝不足が酷いらしい。
     今日は夕方のピークを含めた三時間だけ三人体制になって接客をしてたんだけど、今やっと客足が落ち着いて、オレは空いた棚を埋めるために品出しをやっている。ポテトチップス系のかさばる商品は中身が壊れない程度に軽く振って、偏りを少なくしてから平らに整えて棚に並べていく。そうすると見栄えがいいし、棚にもたくさん詰めることが出来る。
     単調な仕事を続けていると、ついつい余計なことを考えてしまう。よくないなーって分かってるんだけど。後ろ向きな考えって、一人で悶々としてるとどんどん加速していっちゃうんだよね。
     実は最近、ユキと会えてない。今週に入ってからずっとだ。先週末にお泊まりデートをしてから、声も聞いてない。ラビチャだけは変な時間に送られてくる。
    『ごめん。週末も会うの無理そう』
     いつも通り、素っ気ないくらいの短文だ。出勤前にロッカーでスマホを確認して、オレは落胆を通り越して暴れたいような気持ちになってしまった。
     今日は木曜日。
     図らずもユキ禁させられて、今日でとうとう、四日目になる。この上、さらに週末のお泊まりもなしだなんて。
     ――やっぱり嫌になっちゃったのかなあ。
     自然と溜息が漏れてしまった。
     オレは床に膝をつきながら、アルミ蒸着フィルムのパッケージを整えて、整然と棚に押し込めていく。
     二人きりだとすぐえっちなことになっちゃうんだけど、ユキ、本当はそういうことしたい訳じゃなくて、オレが物欲しそうにしてるから合わせてくれてただけなのかもしれない。だから全然、その……ひろげてくれないし、自分のいない時に勝手に触っちゃダメとか言うんじゃないのかな。正直、オレが自分で開発した方が早いんじゃないかなって思ったりするんだけど。
     本当はユキ、オレとセックスしたくないから遠回しに避けてるんじゃないのかなって、実はちょっとだけ疑ってたりするんだよね。ちょっとだけね。どうしたってオレの身体は男だし。触ってても面白いことはないと思うんだよね。オレは触られて気持ちいいから複雑な気持ちになるんだけど。
     考えてたら本気で落ち込んできた。
     せめて声だけでも聞きたいのに、迷惑かな、とか、忙しいなら通話してる場合じゃないよね、とか、ぐるぐる余計なことばかり考えてしまって、こちらからは連絡できていない。恋人なんだから察してくれてもいいじゃんって気持ちと、恋人なんだから分かってあげなきゃね、の気持ちで、めちゃくちゃ揺れてる。
    『お仕事頑張ってね、オレも今からバイトだよ♡』
     会いたいよーって書いたら泣いてしまいそうで、良い子のフリしてお行儀よく返信しておいた。本当は寂しいよって、ちゃんと書けば良かったのかな。そういうこと言っていいのかな。困らせちゃわないかな。ユキが優しいから、大人だからって、甘えすぎたらダメだと思うんだよね。ちゃんと我慢しておかないと。
     ゲームにログインしてる気配もないから、本当に暇がないみたいだ。ユキの最終ログインは五日前、一緒にデイリークエストを消化した日が最後だった。もうね、ユキの痕跡だけでもないかなって、つい探しちゃうんだよね。ストーカーの素質まであるじゃんオレ。浅ましくて嫌になる。もしユキが数時間前とかにログインしてるの発見しちゃったら、なんで誘ってくれなかったのとか、やっぱりオレに会いたくないんでしょとか、恨み節が出るの分かってるのに。
     社長さんだもんね、忙しいのは仕方ないんだけど、ゲーム以外に接点がなんにもないんだなーって事実を再確認させられて、少しへこんだ。同じ学校の子とか同じバイトの子とかだったらさ、ちらっと顔を見に行くことだって出来るのに。
     絶対にダメなのは分かってるけど、ユキを誰にも会わせないように、どこにも行かせないように、どっかに監禁しちゃえたらいいのに、なんて、犯罪者みたいなことを考えては悶々としてる。オレ、自分で思ってるよりも、だいぶ危ないヤツだったみたい。
     あっ。でもこれはユキのことを信じてないからっていうよりも、オレが自分でユキにふさわしくないって思ってしまっているせいなのかもしれない。そうでもしないと、ユキをつなぎとめられないだろうなって自分で思っちゃってるの。二人きりなら、嫌でもオレしか見えなくなるじゃん?
     ダメだ。どう言い訳してもヤバい人じゃんオレ。
    「――恋人同士って、もっと楽しいもんだと思ってたのになあ……」
     思わず、溜息と同時にぼやいてしまう。こんなことなら、一人でこっそり好きだな~って思いながら、たまに会えるのをドキドキワクワクしてる方が良かったんじゃないかな。いつでも会える権利と正当性を手に入れてしまったことによって、オレの中のモンスターが目を覚ましてしまった。こんな自分、知らなきゃ知らないままでいられた方が幸せだったんじゃないだろうか。
    「百さんがそういうこと言ってるの初めて聞いたかも。ボクで良かったら話しだけでも聞きますけど?」
    「うわあん。天~~~!」
     一人言に反応があって、ぎくりとした。相手を確認して、後輩の男子大学生だと分かった途端、オレは思わず泣きついてしまった。
     天は仕方がないな、とでも言うように眉を下げて苦笑している。女の子みたいに整った顔立ちをしているのに、性格が男前だからか可愛いっていうより凛々しいって感じの表現が似合う。なんというか少女漫画の王子様って感じなんだよね。オレのが年上なんだけど、天の包容力が凄くてついつい甘えたくなってしまう。
     天はフルネームを七瀬天という。一つ歳下の大学二年生で、オレと同じ大学の法政学部に通っている。法政学部って、同じ文系でもエリートって感じだよね。天なら家庭教師とかもっと割のいいバイトが出来そうなのに、人間観察にもってこいだからってコンビニを選んだんだって。知識欲が貪欲なんだろうな。大学でもたまに一般教養のコマで見かけるけど、必要単位以上に勉強してるっぽくてびっくりしてしまう。
     天の優しさに甘えることにして、カウンターの中で資材の補充をしながらオレはいまの現状を相談することにした。こんな話、本当なら誰かに相談できる訳がないんだけど。一人で考えていても何の解決策も思い浮かばないんだもん。
     考えあぐねた末に、オレは色々と濁しながら話を切り出した。
    「あー……恋愛っていっても、オレの話じゃなくて、友達の話なんだけどね? なかなか彼氏が身体の関係に踏み込んでくれない、って相談を受けたんだけど」
    「そ、それはまた赤裸々な相談ですね……」
    「友達ね、友達の話だから!」
     オレは慌てて手を振った。赤裸々。確かにそうかもしれない。恥ずかしくて顔が火照ってしまう。
     なかなか会えない現状だとか、相手は立場のある人だとか、年齢差だとか、同性であるとか、問題はいくつもあるのだけれど、結局のところ、オレの不満はユキがなかなか抱いてくれないということに収束してしまう。
     ちゃんと抱かれてたら、会えなくてもこんなに不安じゃなかったんじゃないかな、って――立場とか、年齢とか、性別だって超えて、愛されてるって自信が持てるんじゃないかなって、そんなことばかり考えてしまう。
     いや、違うな。色々と言い訳じみたことを考えてはいるけど、オレ、ただ単に欲求不満なだけなのかも。
    「……ええと、彼氏さんってことは、つまり、それって女の子からの相談ってことなんですよね?」
     不意に天は眉間に皺を寄せた。自分の話だと気付かれてしまったかと内心焦ったのだけれど、どうやら杞憂だったようだ。
    「それ、百さん狙われてません? 大丈夫なんですか、その人」
    「あ、いや。多分、そういう話じゃないとは思うんだけど……」
     思いもしない方向から心配されて、思わす苦笑が漏れてしまう。けれど、自分のついた下手な嘘を検証した結果、天の心配がリアルに感じられて焦ってしまった。
    「――あれ? もしかして、そういう話になっちゃう、のか?」
     確かに、オレの話が本当なら、同性でもないオレにそんな相談をするなんて、ちょっと変わった女の子だなって評価になってしまうのかもしれない。何だか雲行きが怪しくなってきたぞ。天の眉間の皺が、どんどん深くなってしまっている。
    「彼氏さんがいるのに他の男にそんな話をするなんて、その人の貞操観念を疑いますね。――ぶっちゃけ、その彼女さんに魅力がないだけの話なんじゃないですか?」
    「魅力……そ、そうなのかな……」
     的外れとも言い難いアドバイスに胸がざわめく。まあ、その人にカノジョとしての魅力なんてある訳ないよね。だってオレ、どうしたって男な訳だし。
    「ウケるー。面白い話してんじゃん。そーゆー話ならウチも入れてよお!」
     ケタケタと笑いながら花巻さんが後ろから声をかけてきて、オレは飛び上がるほど驚いてしまった。花巻すみれさん。服飾系の専門学校に通っている、オレと同学年のギャルだ。
     普段はハーフアップツインテールにしているけれど、仕事中は少し高めの位置でポニーテールにしている。男女共用の制服をこっそりカスタマイズして、自分のスタイルがよりよく見えるように改造しているのを知った時には正直驚いた。何をどういじっているのかオレには全く分からないんだけど、花巻さんが着ている制服は、確かに女性らしいシルエットを拾って、スラッとして見えるような気がする。
     凄い技術持ってるんだなあって感心しつつ、そんなことして大丈夫なの?って心配にもなったんだけど、店長が黙認してるのを裏で確認してからはオレも右にならえをして黙っている。フランチャイズ的には多分、アウトなんだろうけど、別に誰の迷惑になる訳でもないしって気が付かないフリをしているらしい。店長のそういう図太いとこ、結構好きなんだよねオレ。
    「そりゃあさー、ウチのツレなら春原くんのこと狙ってそーゆー相談する可能性はあるかもしんないけどォ、春原くんのお友達なら本気でそういう悩みを抱えてるのかもじゃん? 決めつけは良くないと思うよお?」
    「……はあ。すみません」
     不服そうな顔をして、それでも天は謝った。花巻さんはにこっと笑って、天の背中をバシバシと叩く。
    「やだー。天くん可愛い!」
    「ちょっと。痛いですよ、花巻さん!」
     二人のやり取りに笑ってしまいながら、オレは何気なく花巻さんにも声をかけた。まぜてって言われて、断る理由もないし。オレの話じゃないってことになってるから、特に問題ないだろうと思っちゃったんだよね。
    「あ。ねえねえ、花巻さんだったら、その子に何てアドバイスする? オレもどうしたらいいのか分かんなくて困ってるんだよねえ」
    「ええー? ウチがその子にぃ? ……そうだなあ」
     花巻さんは胸の下で腕を組むと、うーんと唸った。細い指を頬に当てて、魔女みたいに目を細めてこちらを見てくる。
    「例えばの話なんだけどお……、その彼氏って人さー、時々春原くんに会いに来てるお客さんの――ロン毛のイケメンみたいな感じだったり、する?」
     探るように見つめられて、ギクリとしてしまった。
     そう。そんなに忙しくなかった頃、ユキは時々、うちのコンビニに買い物に来ていたのだ。リムジン送迎なのに、わざわざ車から降りて、店まで来てくれていたらしい。まだ付き合う前のことだけれど、花巻さんが顔を覚えてしまうくらいには何度かそういうことがあったと思う。
     ユキってちょっと人見知りなところがあるから、知ってる人と知らない相手では態度が全然、違うんだよね。だから、ユキがオレ目当てで来ていたのは(これは別に変な意味じゃなくってもね)誰の目にも明らかだった。花巻さんはからかいながら「彼氏きてるよー」とか教えてくれたりして、オレはその冗談にのって「ホントだあ♡」なーんて返事をしていたりしたんだけど。
     今現在、オレはユキと本当に付き合ってしまっているので、冗談にならなくなってしまっているんだよなあ。
    「あー、そうデスね……。大体そんな感じ……?」
    「ふうん。そうなんだー、なるほどねー」
     思わず目が泳いでしまう。そんな感じっていうか、そのものズバリなんだけれど。花巻さんはにやにやと笑いながら何も言わない。
     あ。これは、マズったかもしんない。
     うちの姉ちゃんもそうなんだけど、女の人って、嘘とか作り話とか見抜く能力が凄いと思う。エスパーかよ!ってレベル。
     うん。多分、これは、バレたな。
     こうなってしまっては仕方がない。オレは頭を切り替えた。どうせ知られてしまっているのなら、もう少し踏み込んだ相談にのってもらうのもアリかもしんない。
    「花巻さん、ちょーっとだけ話を聞いてもらってもいいかな」
     時計にチラリと目を当てると、そろそろ花巻さんは上がる時間だった。天には休憩行ってくると言い残して、オレも一緒に休憩室を兼ねた事務所に向かった。制服をハンガーにかけていた花巻さんは、備品の消臭スプレーをこれでもかってほど吹きかけている。
    「えー。なあにー? 友達のハナシなんでしょー?」
     花巻さんはバタンと音を立てて共用のロッカーを閉めた。ピタピタのTシャツにカーゴパンツのスタイルだ。その上から、裾の短すぎるジャケットを羽織っている。上着のくせしてお腹の辺りをカバーできていなくて、冷えないのかなーって少しだけ心配になる。
     オレは休憩の勤怠を打つと、休憩スペースの丸椅子に座って花巻さんに声をかけた。普通なら着替え終わった時点で帰る準備は整っているんだけれど、花巻さんには髪を直す時間がある。
    「花巻さんさあ、さっきの話、分かってて分かんない振りしてくれたでしょ。そういうのいいから、聞いてくんない? オレの話だよ」
    「あらー。あらあらあら……♡」
     何せ下世話な話だし、どこからどこまで説明しておくべきだろう。オレは悩みながらぽつりぽつりと話していたんだけど、意外にも花巻さんは聞き上手だった。話し終える頃には根掘り葉掘り、ユキとのことを全部話す羽目になってしまっていた。
    「色々準備が必要なのは分かったんだけどさ、それって春原くんが自分で準備するんじゃダメなの?」
     いい匂いのするスプレーをして、何度もブラシで髪をとかしながら、鏡越しに花巻さんが言う。
    「でも、自分でやらない方がいいってユキが……」
    「そのユキサンがおっそいから焦れてんでしょー? 別にいいじゃん。自分から襲うくらいの気持ちでガッといきなさいよ! 何で遠慮してんのよ」
     鼻の頭に皺を寄せるようにして、花巻さんが唸った。
    「は、はい……スミマセン」
     しゅんとして謝ると、花巻さんは少しイライラしたように顎をそらした。話している間も、花巻さんの手は止まらない。コームの柄で線を描くようにして、結ぶ部分の髪をブロック分けしはじめる。
    「相手のさー、言いなりになるっていうかー。そーゆーのフツーに良くないと思うよー?」
     口調は軽いけれど、本当に心配してくれているのだと伝わってきた。オレは深々と頭を下げた。
    「うん……そうだよね。ありがとう」
    「まあ、言うこと聞いてたらなんか良いことがあるかもって期待しちゃうのも分かるけどね……好かれたいし、嫌われたくないじゃん? まあ、見返りばっかり期待しすぎんのもダメだけどさあ」
    「もしかして、花巻さんにもそういうことが?」
    「んふふふふー。そんなの秘密に決まってんじゃん! いいオンナには言えない過去の一つや二つあんのさあ!」
     花巻さんはVサインを突き出して笑った。 
     話が終わって、急いでフロアに戻ると、少しだけ天が拗ねていた。確かに話を聞くよって言ってくれたのは天の方が先なのに、花巻さんを選んだみたいな感じになっちゃったもんね。
     めちゃくちゃ謝って、結局、天にも本当のことを打ち明けた。
    「自分の話なら自分の話って、最初から打ち明けてくれても良かったんですよ? 信用できない奴って思われてたんなら、ちょっとショックですね」
    「わーん、違うんだよお~! だってだって、色ボケしてる自分のこと、天にはちょっと言いづらかったんだもん……」
    「大丈夫ですよ。何があっても、ボクは百さんの味方なので。むしろ百さんがすることに文句言うような相手だったら、さっさと別れちゃったらどうですって言いたいですね」
    「天、イケメンだなあ……」
    「百さんだってイケメンですよ」
     アドバイスっていうか、結局、二人ともオレの背中を押してくれたんだと思う。
     最終的にオレは、一つの覚悟を決めた。
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    SATY_THE_FOOL

    SPUR MEモモ視点。モモ視点だとウェッティ全開になりすぎちゃうし、ユキ視点だとモモが可愛くなりすぎちゃうし、自分の好みの感じに調整するのがめちゃくちゃ難しいよ~…。これちゃんと面白いのか謎すぎる…。ずっと賢者タイム。
    出来たら応援スタンプお願いします😭 泣き言ばっかすみません😂 次はユキ視点で初夜!エロ!!
    タイトル未定ピリカラパロゆも・その5            5


     ユキとは、もう二週間も会ってない。
     今度の週末には会おうって言ってくれていたのに、オレの方が燻ってて、用事もないのに「用事があるから」って断ってしまった。
     今日は金曜日。バイトは休み。特別なイベントはない日だけど、オンラインゲームのクエストに参加している。没頭するために部屋の明かりは暗くして、ヘッドセットを装備して、人をダメにするビーズクッションのソファに身体を預けて、オレは苦学生には不釣り合いなほどの大型モニタに向かってコントローラーを動かしていた。
     フレンド欄にあるユキの名前は、ずっとオフラインのままだ。最終ログインは十五日前であるらしい。
     ずっとユキのことが好きだったけれど、恋愛として好きなのかはよく分かんなくて、バトルロイヤル形式のイベントの時に、お互い「何か一つだけお願いしてもいい権利」を賭けて勝負をした。それが、およそ一ヶ月前のことだ。
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