「おーい」「おーぃ…」
宵闇に包まれた参道、その傍から声が聞こえた気がした。思わず立ち止まった暁人は辺りをきょろきょろと見渡すが、自身の歩む石灯籠に照らされた参道以外、夜の闇に呑まれてしまい目を凝らしたとて何も見えはしなかった。……それにあんな暗闇の中に誰某かが居るとも思えない。
きっと空耳か何かであったのだろう。そう思った彼は再び歩を進めようと足を踏み出したが……。
「……ぉーい」
やはり、声がする。
先程のと比べて、今度は方角が分かる程度には自身の耳へと届いた。……それは恐らく後方から。
きっと誰かが己に呼び掛けているに違いない。もしかしたら何かトラブルにでも見舞われ困っているのかも。そう思い至った彼が振り返ろうとした瞬間だった。
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