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    現在GW:T(K暁とCPなしメイン、たまに暁K、)作品になります
    (アイコンはいかてんころもさん(@Ikaten_koromo)作です☺️ありがとうございます☺️)

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    『ひとりぼっちのヒーローと幽霊の相棒』
    そのお話の、KK視点の物語になります。

    心残りは、なかったはずなのに。

    #K暁

    幽霊の相棒とひとりぼっちだった青年のおはなし「おやすみ、KK」
     微かに暁人の声が聞こえて、KKは眠りについた。

     ――すべて、終わったんだ。
     般若の男に命を奪われ身体を失った時、KKは酷く狼狽した。『このままだと消える…!何もかも、終わりになっちまう……ッ!』誰でもいい、身体を乗っ取れそうな人間を探すも……生きている人間には入り込めるはずがなく、弾かれてしまう。まずい、まずい…ッと辺りを見渡すと……幸か不幸か、事故で瀕死の状態になった青年がそこに倒れていた。
     それが普通の大学生――伊月暁人と、亡霊の男――KKとの最悪な出会いだった。

    「嘘みたいだよなぁ……あんな出会い方した奴が、まさか相棒とまで思える仲にまでなるなんてよ」
     賽の河原をゆっくり歩きながら、KKは一人呟く。ポケットから煙草を取り出し、ライターで火をつける。随分と久しぶりに吸ったような感覚だった。
    「……アイツの身体を借りてでも吸いたがったが、さすがに非喫煙者の肺を汚すのもな」
     以前のKKだったら絶対にそんなことは言わなかっただろう、暁人の意見など聞かず無理やりにでも吸っていたかもしれない。 
     だが、出会ったばかりの暁人は断固として屈しなかった。KKが身体を乗っ取ろうとした時も抵抗するぐらいに、彼の意思は強かった。KKとしては好き勝手に身体を使わせてもらった方が好都合だったが、幸いなことに暁人には”才能”があったのだ。彼はKKと同じく"適合者"だった。
     素直に従ってくれないことにKKは最初こそ苛立ちを覚えたものの、適応力が高く素直な暁人に戦い方を教えるのは嫌ではなかった。生意気だが素質はある、上手く使ってやれば般若の男の野望を阻止できるかもしれない――というよりも、KKにはこの青年に託す他なかった。
     
     しばらく河原を歩いてると、白装束姿に顔を白い紙で覆った人間――死者たちが列を成しているのが見えた。オレもあそこに並べばいいのか、とKKは煙草の火を消してその列へと向かっていく。もう思い残すことは無い、安心して祖父の元へ行ける――と。
     だが列の最後尾に並ぼうとすると、列を整列させている亡者に無言で阻止された。この亡者も白装束に紙をつけていて顔が分からない。
    「あ?……いや、オレはもう死んでるんだ。死んだヤツはここに並ぶんだろ」
     その亡者はふるふると横に首を振った。どうしてかダメなのかは説明されず、半ば強引に列から離された。KKは困惑しながらもひとまず考える。
    「……まさか、白装束とあの紙つけてねぇとダメなのか?」
     KKの今の姿は、あの夜と同じく戦闘服であるタクティカルジャケットのままだった。そうは言っても、どこでその白装束に着替えられるかは教えてもらえなさそうで、KKは困り果てた。このままだと、あの世に行けない。
     ――あの世に行くにはまだ早い、お前には心残りがあるだろう。
     ふと、祖父の声が聞こえたような気がした。
    「心残り……?」
     ――般若の男は倒した、恐ろしい計画は阻止して渋谷の人々は戻った、残してきた家族はきっと今頃幸せになっているはず……もう心残りなどなかったつもりだ、それなのに――KKの脳裏にあの青年、暁人の姿が過ぎった。
     ――アイツは、あの後どうなった?
     こちらに来ていないということは死んではいない、生きて現世に戻れたはずだ。だが、もしも…………
     考えるよりも先に身体は動き出していて、KKはあの世の列に背を向けて反対方向へ走り出す。現世へと向かう足取りは、不思議と軽かった。
     その姿を、静かに見送る亡者がひとり。

     ――交差点を歩く大勢の人々、高いビルがいくつも並ぶ街。渋谷の街は、あの夜の事件などまるでなかったかのように賑わいを見せていた。
     KKは上空からその様を見下ろし、本当にあの計画を阻止できたことを実感した。この光景が、その証拠だ。となれば、暁人もどこかにいるはずとKKは探し始めた。
     ……だが、そう簡単に見つかることはなく、KKはビルの屋上で空を見上げ途方に暮れていた。妹が入院していた病院に行ったが、既に病室は片付けられ手がかりは無くなっていた。考えてみれば、KKは暁人の住処も通っているであろう大学も知らないのだ。
     それならば、とまずはゼロに近い手がかりを探すことから始める。やることは刑事だった頃と同じだ、慣れたものである。それに、今は霊体姿のおかげで人目を気にすることも障害物を気にすることもない。KKはビルの上から降りて、まずはあれからどれくらいの時が経っているか、それを確認することにした。

     数日渋谷の街を浮遊し、何とか手がかりを見つける。あの出来事から数日たっていることと、どうやら暁人は自らマレビト退治や悪霊を祓いに、夜な夜な街を出歩いているという情報を妖怪たちから聞くことが出来た。その話を聞いたKKは表情を曇らせる。おそらく、暁人が”適合者”だからだろう、自身の力が継承されてしまったのかもしれない。
     力が暁人に継がれてしまった以上、危険に巻き込まれていないか不安が過ぎったがそこは上手いことやっているようで、KKは少しだけ安堵した。だが油断はできない、今の暁人では太刀打ちできない悪霊にそのうち遭遇するかもしれない。その前に、なんとか接触しておきたいところだった。
     暁人を探して夜の街を彷徨っていると、ふと何かの気配を感じた。おそらく悪霊、怪異の類であろう……それも、並大抵のものではない。能力を持たない今のKKにとってそれは脅威であった。下手に近づかないほうが身のためと思い、その場を離れようとした。その時――
     路地裏へ入っていく見知った青年の姿を、KKは捉えた。

     暁人の姿を見た途端、悪霊が作り出した空間に飛び込んでいた。間違いなく、あれは確かに暁人の姿だった。ただの霊体の姿でこの空間に長く留まるのは悪霊に取り込まれてしまう可能性があるため危険は承知の上、ようやく見つけた相棒の姿をKKは急いで探す。
    『暁人……どこだ、どこにいる……!?』
     奥へ奥へと進んでいくと、この空間を作り出した張本人であろう禍々しい悪霊が、暁人の体を乗っ取ろうとしている様子が見えた。暁人が苦しみに耐えきれず叫んでいる。まずい、このままでは……
     そんなことはさせない、なんとか阻止しようと悪霊に近づく。すると、KKの頭の中に暁人の謝罪する声が流れ込んできた。
     ――約束、守れなくてごめん……
     今まさに死んでしまうかもしれない状況で、この青年は他人のことを想うのか。そんな青年を、暁人を……こんな悪霊に奪われてたまるか。
    『暁人、諦めるなッ!こんな悪霊なんかに…負けるんじゃねぇッ!』
     そう叫んだ瞬間、暁人の瞳に光が再び宿る。必死に身体を動かし悪霊に札を貼り付け、しっかりと印を結ぶ。いつの間にか一人でも正確に印結びができているのを見て、この数日間での暁人の成長ぶりをKKは目の当たりにした。
     無事に悪霊が祓われ、作り出された空間が崩れていく。特に大きな怪我もなく無事なことに、KKは安堵した。すると、キョロキョロと辺りを見渡していた暁人の視線がKKのいる場所に向けられる。
    「……KK、そこにいるの?」
     すぐには、応えなかった。先程までは軽く声をかけて、無事を確認したら今度こそあの世に逝くつもりだった。だが、気が変わりかけていた。だからこそ、すぐには暁人の声に応えられなかったのだ。
     しばらくして、暁人が痺れを切らしたように手のひらを浮かせエーテルの雫を地面に垂らし”霊視”をする。すると、霊視の波がぶわりと広がり、それはKKの姿を具現化させるには十分だった。観念したように暁人の前に姿を現す。
    「…………KK」
    『……よぉ』
     何を話せばいいのか。とりあえず暁人を励まそうと、軽く会話をする。いざ久しぶりの会話となると少し説教臭くなってしまったのを少し反省しつつも、その手は無意識に、触れることも出来ない暁人の頭を撫でていた。
     すると、ふっと糸が切れたようにポロポロと涙を流し始めた暁人を見て内心少し焦りつつも、なかなか踏ん切りがつかなかないでいたKKは、あることを決意した。

     ***
    「どうしたのKK、考え事?」
    『あー……ちょっとな』
    「もー、戦闘中なのに…アドバイス、頼んだよ!」
     迫り来るマレビトたちに火のエーテルを飛ばして派手に爆発させる。だんだん戦い方が自分に似てきたなと、KKは密かに思っていた。再会した頃より格段に戦い方が様になってきている、あの夜と同じく、いや、それ以上に。暁人はすっかり能力を使いこなしていた。
    『もうオレのアドバイスなんて必要ないぐらいだろ』
    「僕の相棒だろ!職務放棄しないでくれる?」
     こんな軽口を叩けるほどになった暁人の成長ぶりを内心嬉しく感じながらも、へいへいと返事をしてマレビト達の動きを観察する。
    『 暁人、右から三体くる』
    「了解!」
     咄嗟に印を結び、火のエーテルを火炎放射のようにマレビトたちに容赦なく浴びせていく。「炎上しちゃってるね!」と楽しそうにしている暁人が少しだけ怖かった。
     無事マレビト達を退治し、異空間となっていた場所が元の廃墟へと戻っていく。奥にいた悪霊はすぐに祓ったので、この場所で起きていた怪奇現象は解消されただろう。
    『成長したなぁ、オマエ』
    「ほんと!?」
    『あぁ、動きに無駄が無くなってる』
    「そう?KKの特訓のおかげだね」
     たいしたことはしていないとKKが否定するも「そこは素直に喜んでよ」と暁人が笑みを浮かべる。
    『あまりにもデキる弟子だから何も言うことがなくて暇すぎてな……つい、思い出しちまってよ』
    「何を?」
    『……教えてやらねぇ』
    「ふーん?……まあ、いいけどね!」
     暁人の腹の虫がぐぅー、と鳴き出す。
    「……お腹すいちゃった」
    『あ?……さっき食ったばっかだろ』
    「戦ってたからね、帰って夜食でも作ろうかな。んー、KK何食べたい?」
    『そうだなぁ……まぁ、たまにはジャンクフードをたらふく食べるのもいいんじゃねぇか?』
     ちょうど近くに、深夜でも営業しているハンバーガー屋が見えた。
    「じゃあ……お言葉に甘えてたくさん食べようかな」
    『今ならポテトが増量中だってよ』
    「やった!!」
     
     暁人と再会した日のことを、未だにKKは思い出す時がある。あの時、KKは心に決めたことがあった。
     ――暁人が天寿を全うするまで、守り抜くこと。
     だが、それだけのはずだったのに、暁人と共にいることで別の感情が芽生え始めていることにKKは気づいてしまった。霊体となってしまった身で我ながら無責任だからと、その思いは暁人に告げるつもりはなかったが。
    「……ねぇ、KK」
    『あ?』
    「……ううん、なんでもない」
     暁人が何か言いかけて、すぐに笑って誤魔化した。それをKKは特に追求することなく、そういえばな、と呟く。
    『……暁人。油物たくさん食うなら今のうちだぞ、20代後半になると急に胃に来るからな』
    「うわ、40代のKKに言われると説得力があるなぁ……うん、今のうちにたくさん食べておくね」
     実はこの時暁人も、KKと同じように別の感情が芽生えていたが……まだそれを伝えることはできなかった。それ以上は聞いてこないKKのことを有難く思いつつ、ハンバーガー屋へと歩みを進める。

     ――二人が互いの想いを打ち明けるのは、そう遠くない未来の話。 
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    DONE2024年2月25日
    K暁オンリーイベント、開催おめでとうございます🥳
    K暁デーネットプリント企画、お題「バレンタインデー」で書かせていただきました。
    同棲軸の二人のはなしです🍚
    ※既にお知らせしていますが、本部様のネップリアンソロに申請させていただいた予約番号は不備があったためすでに削除しています。白黒版、修正したカラー版を登録し直したので、詳細はTwitter(X)をご覧下さい!
    ビターな思い出を塗り替えて「KK、いつもありがとう」
     お皿の上にちょこんと乗せられたそれは、どうやらチョコレートケーキのようだ。
    「あ?……昨日作っていたのは、それだったのか」
     昨日の夕方頃、帰宅すると部屋中チョコレートの甘い香りで包まれていて、その残り香が甘ったるくてつい顔を顰めてしまった。その香りの正体が、これだというわけだ。
    「甘さ控えめにしたからさ、KKでも食べられると思うよ」
     食べてみて苦手なら残してもいいからさ、と暁人は皿をずずいっとオレの前に差し出してくる。残してもいいと言うが、せっかく作ってくれたものを食べないわけにもいかない。とりあえず一口、と控えめにスプーンですくって口へと運ぶ。
    「…………美味いな、これ」
    1959

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