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    @7_kankankan_100

    気の赴くままに書き物。今はエク霊、芹霊。(以前の分はヒプマイどひふです)
    正しい書き方はよく分かっていません。パッションだけです。
    書きかけ多数。

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    @7_kankankan_100

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    食堂シリーズの、新居に先生をお招きする話。上手くいけば書ききれる予定(何もかも曖昧……)

    新居へようこそ、寂雷先生。先生をお招き



    緑茶の甘みを最大限に引き出す氷出しという淹れ方がある。茶葉と氷を一緒に入れておいて、氷が溶けると共にお茶の成分が染み出してくるのだ。高い温度ではないものだから渋みが出ずに胸をすくようなすっきりとした味わいが楽しめるのだそうだ。

    ただ、この淹れ方は氷が溶けるのを待たなくてはいけないので時間がかかる。約束をした何時間も前に仕込まなくてはいけないので、一二三は準備の一番最初に氷出しのお茶に手を付けた。氷もすぐに溶けてしまう自宅の冷凍庫で作ったものではない。ホストをしていた頃に店に毎日氷を届けていてくれた氷業者を覚えていたのでそこまで買い付けに行った。山の湧き水を自然の氷池で凍らせた天然モノだ。不純物が少ないので溶けにくく口当たりが柔らかい。少々値も張るが、わざわざこんな物を用意するのも、全ては今日お招きした神宮寺寂雷先生のためだった。

    日々輝に引っ越してきて早半年、かねてより寂雷を招いて新居のお披露目をしようと思っていた日取りが、先日テラスが完成したのでようやく決まったのだ。天気の不安定な盛夏も過ぎ、秋晴れが続いて空気がパリッとしてきた。絶好のテラスパーティー日和である。







    「これは……なんて美味しい。軽やかで清々しくて、胸がすっきりしますね」

    初秋の涼やかな風が寂雷の豊かな髪をサラリと流す。

    夕方過ぎ、日が暮れ始めた頃に独歩と一二三の家へやって来た寂雷は、一二三が数ヶ月かけて作り上げたテラスに真っ先に通された。招かれた寂雷に一番最初に出されたのは、一二三が数時間前から仕込んでいたあの氷出しの緑茶だ。どんな反応が返ってくるか期待した目に見守られながら一口飲むと、爽やかな草原を彷彿とさせる飲み口だった。ここのところ趣味の釣りにも行けないほど多忙だった寂雷にとって肩の力が抜ける味であった。もちろん今日こうして二人の新居へ招かれるのもとても楽しみにしていた事だった。

    寂雷が暮れのオレンジの光が街を染めるような時間になってやって来たのは、決して遅れてきた時間ではなく、最初からこの時間に招かれていたからだった。

    独歩が定時に帰るとは意気込んでいたが一体どうなるか分からない。そのために一二三ができるだけ始める時間を遅く計画したのだった。寂雷も、その方がいいね、と独歩の仕事ぶりをよく知っている者として納得している。

    「せんせー! 氷出しのお茶どっすか気に入った?」

    「ええ、とても。淹れ方は知っていましたが初めて飲みました。時間がかかるものでしょう? 私のためにありがとう、一二三くん」

    「よかった〜! んへへ、褒められると嬉しーっす!」

    「一二三くんは褒められ慣れているんじゃないですか」

    「先生に言われるのは特別なんです」

    にこにこと明るい陽射しのように笑っている一二三だが、そう言うと瞳にはどこか憂いが帯びた。

    「ホント、先生がいなかったらあの頃の独歩どうなってたか……」

    「独歩くんだけじゃない、一二三くんもですよ。君も独歩くんも自分のことを後回しにしてしまうからね。本当に二人でよく頑張ってきたね」

    数年前、前任の担当が姿をくらましてしまった新宿中央病院への後任を独歩が担当した。前任者が連絡もなしに忽然と姿を消したせいで引き継ぎは難航し、もともと過剰業務だった独歩はさらに仕事に追われていた。

    退勤時間は深夜も明けそうな頃で、どうせ家に帰ってきても二〜三時間後には出勤になる。それならいっそ会社の近くのホテルに泊まれば、というのを数日繰り返したが、ついには会社に泊まり込むようになった。

    そんな現実に戻れない悪夢のような生活を二週間もしていれば当然体調を崩し、寂雷との面談の時に遂に倒れてしまったのだ。医療機器メーカーは多忙だというのは周知の事実であったし、業界では珍しい話ではなかった。

    だというのに寂雷が独歩を放っておけなかったのは、今まで数多くのメーカーの人間と接してきた中でも感じたことのない居心地の良さを感じていたからだった。独歩の発する声はまるで胸の内を優しく撫でるような柔らかさがあって、寂雷も医師として多忙であったが、そんな疲れを癒してくれるようだった。独歩とも約束が入っている日を楽しみにするほどだった。それに加えて配慮の行き届いた説明等に、独歩の真面目すぎる性格を見抜いていた。元々から心配していたのだ。

    だから寂雷はただの取引き先の相手ではなく、一人の人間として、後には友人として独歩を助けたいと思った。その後に独歩から一二三を紹介されるが、それはまた別の話になる。

    「ま、出会いこそあんなだったけど、そのおかげで寂雷さんをこうしてお招きしてるわけだし〜、災い転じてハッピーハッピー! っすね!」

    「ふふふ、そうだね。それにしても手作りとは思えない立派なテラスで驚いているよ。一二三くんは本当に器用なんですね」

    寂雷は改めてテラスをぐるりと見回す。レンガで組まれた小さな菜園も、一面に敷き詰められたウッドタイルもまるで備え付けのように均整が取れていた。

    「あざーっすっす! この屋根はさすがプロに頼んだんすけどね」

    「充分さ。これなら独歩くんも随分と寛いでいるんじゃないかい?」

    「ふひひ、独歩の奴、この前涼しくなったからってここもカーテンは閉めてたけどお風呂上がりに素っ裸でテラスに出てたんすよ」

    「ほう……全裸で。興味深いですね」

    「すんげー開放感ですよ」

    「一二三くんも?」

    「そうだ! 今度時間できたらみんなで露天付きの旅館とかどっかなー。そしたらせんせーにも風呂上がりに

    ※※※※
    途中です😅

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