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    mmmmmmochi

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    クリスマスの準備をする台牧と最近引き取られた葬君の話

    クリスマスがやってくる「ニコ、サンタさんになに頼むの?僕たちにこっそり教えて」
     この家に引き取られて初めてのクリスマスがやってくる。ニコラスはツリーの飾り付けをしながらヴァッシュからの問いかけに困ったように眉を下げた。
     学校でも尋ねられた問いかけをまさか両親にも尋ねられるとはニコラスは不安でドキドキと鳴り出した胸をそっと抑えた。
     サンタはよい子にのみやってくる。
     悪い子のニコラスにはサンタがやってきたことは今までに一度だってなかった。
     でも悪い子なことは誰にも知られたくなくて、クラスメイトに尋ねられてもいつだって考え中と濁してきた。
     クリスマスは冬休み期間中だ。休みが明ける頃には話題は終わっているのでそれ以上言及されることもない。しかし、一緒に暮らしている両親となれば話は別だ。
     どうしようと思った。この人たちにサンタが来ないことがバレたら自分が悪い子だと知られてしまう。
     朝、プレゼントが届かなかったニコラスを見て彼等はどう思うだろう。サンタお墨付きの悪い子供だと前いたところに送り返されてしまうかもしれない。不安は募るばかりだ。
     だからと言ってサンタが来る振りもできなかった。失敗作だと罵られることしかなかった自分を引き取ってくれた優しい人たちに嘘はひとつだってつきたくなかったのだ。
    「ワイ、サンタさん来たことないねん。悪い子やからお願いできへん」
     どうしようもなくなって白状した。
     ヴァッシュとウルフウッドが困ったように顔を見合わせるのが見えた。
    「ワイぜんぜんあかんやろ。朝はよ起きられへんし、お皿も割ってもうたし……」
     寒いのが苦手なニコラスはウルフウッドに朝だと起こされるまでベッドから抜け出せずに手間をかけていたことを思い出す。手伝いで運んでいたシチューを床に落として中身も、お皿も駄目にしてしまったことも。そんな時でも両親は怒鳴ったり、殴ったりしなかった。それどころか怪我や火傷していないか真っ青になって心配してくれたのはニコラスにとって驚きの出来事だった。
     それでもと思う。声を荒げなかったけれどきっとがっかりしているはずだ。
    「ええ子やのうてごめんなさい」
     施設に返してくれてもいいと続けたかった言葉はどうしても口に出せなかった。どうしてもここにいたかった。
    「ニコラス」
     名前を呼ばれて顔をあげる。泣きそうな顔の父がそこにいた。
    「お前はいい子だよ」
     大きな手が伸びてきてふんわりと抱きしめられる。自分と違う、とげとげとした金色の髪が頬に当たってくすぐったい。
    「せや、ニコはいい子や」
     ウルフウッドの大きな手が伸びてきて自分の頭を撫でた。
    「でも、」
     言葉を続けようとすればわしゃわしゃと髪をかき回される。
    「サンタに手紙かこな。ワイらも一緒に書く。ニコはとってもいい子だから来てくださいって」
    「来るやろうか」
    「もちろん」
     力強く頷いたヴァッシュに抱きあげられる。こんな風に誰かに抱っこをされるのは初めてで目を白黒する。
     こんな親子みたいなことをと考えてそうだヴァッシュは自分の親なのだとじわじわと歓喜が身体中を駆け巡った。
    「お星さま飾ろうね」
     手に持ったままになっていた最後の飾りつけ、大きなお星さまを優し眼差しで見つめるヴァッシュが言う。
    「ニコ、こっちおいで。肩車しよ」
     ヴァッシュのてでしゃがんだウルフウッドの肩に座らされる。星を急いで片手で持ってもう片方の手をウルフウッドの頭の上に置く。
    「立つで」
     言葉を合図に視界がぐんぐんと上がる。怖くなって頭にしがみ着けば、大丈夫とヴァッシュの手が背中を支えてくれた。
     そうっと顔を上げれば緑のモミのてっぺんが見えた。
    「すごっ!ワイ、ツリーと同じ背になっとる」
     毎日見ているはずの景色がなんだかキラキラして見えた。
    「ほら、ニコお星さまつけたって」
     ウルフウッドの声に促されて、てっぺんのぴょこんと一本だけ天を向いて立っている枝に両手でそっと星をかぶせた。
     両足をウルフウッドが、背中をヴァッシュがしっかり支えていてくれているので少し前に乗り出しても何にも怖くなかった。
    「できた!」
     思わず歓声をあげれば、ヴァッシュが拍手した。上手、上手とふたりに褒められる。
    「クリスマスってこない楽しいもんなんやな」
     感慨深くなってニコラスは呟いた。
    「ニコ、ここで満足してちゃ駄目だぜ。まだまだ楽しいことはいっぱいあるからな」
    「せやで。まず、ケーキ選びやな」
    「大きい靴下も探しに行かないと」
     あれもこれもとヴァッシュとウルフウッドの口から飛び出す言葉はニコラスが友達から毎年聞くけれど、体験したことないことばかりだ。
    「サンタさん来るの楽しみだね」
     ヴァッシュの言葉にうんと弾んだ声で答える。
     言葉につられるように急にくるくるとニコラスを肩車したままウルフウッドが回り出すのでニコラスは急いで頭にしがみついた。
     ツリーが見えて、次いでパチパチと薪が燃える暖炉が見えた。暖炉の上には学校で作って持って帰ったリースが飾られている。それからリビングの壁のカレンダー。25日に大きな丸印がついている。
     家の中はすでにクリスマスでいっぱいなのにこれ以上増えるのかと思うと楽しみで仕方がなくてニコラスはとうとう声を上げて笑ったのだった。
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    mmmmmmochi

    DONEホラー/台牧

    ◇ 今回のレギュレーション
    1.文字数
    5000文字

    2.言わせる言葉
    「怖くなんてない」

    3.登場させる小物
    懐中電灯🔦

    4.仕草、行動
    驚いて尻餅をつく
    コール、コール、コール 電話が鳴る

     ウルフウッドの暮らしに影がさす時、それは必ず訪れる。



     ウルフウッドがひとりの時を見計らうように電話が鳴る。
     聞きなれたコール音がたわんだように、多方向から強烈な圧力をかけ無理やり歪ませたように聞こえたらそれが合図だ。
     鳴り響く歪なコール音は今すぐ逃げ出したいような、逆に音の元に走りたくなるような焦燥感をウルフウッドに与えた。
     始めは無視しようと頑張るのだが、どうにも我慢できなくて受話器を取る。
     そんなことの繰り返しだ。
     この電話について誰かに話したことがない。話したかった相手とは電話を取った後、必ず会えなくなるためだ。
     

     ウルフウッドはしがないサラリーマンだ。主に大きな工場や病院向けの薬品を取り扱っている、いわゆるBtoBの企業である。それなりのシェアを占めているため業界の人であれば社名を知っている人も多いだろう。それ以外にも、これは社にとってみれば大変不本意なことであろうがブラック企業ということでも有名であった。
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