陪食「ねぇ、食材ってドコから料理になんの?」
デザート代わりのハニーマリネをフォークで突きながら、ミスタが何とも無しにヴォックスに問い掛けた。
「禅問答か?」
グラスに炭酸水を継ぎ足しながら、艷やかな黒髪の隙間から愉快そうに覗く金色の瞳を細めて、先を促す。
「いや、サラダって葉っぱ千切るだけじゃん?肉とか、火を通したら?なんか味のするソース掛けたら?皿に装ったら?」
テーブルの上には粗方消費された、真っ赤なトマトソースにバジルを添えたチキンのソテーと、温野菜をクリームチーズで和えたカラフルなサラダ、トマトを果物と言い張るミスタの為に、2種類のグレープフルーツと共にマリネにしたプチトマトが、蜂蜜に濡れて光っている。
1342