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    ant_sub_borw

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    ant_sub_borw

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    テスデイ ブロマンス以上カップル成立未満のイメージです
    ジャガーの神様、テペヨロトルに対する個人的強火解釈をまとめつつ、ジャングルで無人島0円生活する主従の話に仕上げました

    NearlyGod-ish.あえて堂々と不用心に川辺へと近づく。
    数メートル先、水面に目元を出してこちらを伺う獲物の姿があった。樹海の川の最凶生物、ワニだ。
    ゆらゆらと泳ぎつつも、ワニはこちらから視線を外さない。ブーツの先端を川に沈め、あえて大きな音を立てつつ波紋を作ると、こちらを注視する気配が強まった。
    万が一水中に落ちても動きやすいようにと、普段よりも軽装で来ている。肌にぴったり張り付くようなインナーを着た上半身にはホルスターこそ装備してはいるが、この場において銃は圧倒的なアドバンテージとはなり得ないことも充分承知している。
    数度水面を荒立てて足を引っ込め様子をうかがう。ワニが潜水し、こちらに近づいてくるのが見えた。それを確認してから数歩分水辺より離れ、スリングにセットした石を振り回す。
    一瞬の静けさの後、ワニが水辺より飛び出してくる。その勢いは脚色なく、こちらと数センチほどの差しか開いていない。
    背後に倒れ込むように、すんでの所でその飛び掛かりを避ける。その直前、スリングでしっかりと狙いを定め、石を投げつけるのも忘れずに。
    石はワニでも水辺でもなく、最後の立ち位置の斜め上あたりに飛び上がった。鈍い音が鳴り、奇襲を失敗して再び水辺に引っ込もうとするワニを逃さず、その頭上にいくつかの岩石が立て続けに落下する。
    ワニの頭部が落石に埋もれたのを見て、すかさず側面から回り込み、ナイフを抜いて振りかざす。刀身にかけた強化魔法の精度には細心の注意を払ったため、体表の鱗は充分に貫けるだろうという確信があった。
    ワニの背後からその体躯に跨り、首の後ろに素早くナイフを振り下ろす。深く突き刺して素早く抜き、ばらけた岩石の隙間から頭蓋骨を狙ってもう一度振り下ろした。
    無事骨を貫通し、脳を刺し貫いたことを確認し、張り詰めていた息を吐く。
    そのタイミングを見計らったかのように、背後で拍手の音がした。
    「見事だ、デイビット。シパクトリを一人で仕留めるとは、いよいよお前は最高の戦士だぜ」
    そこに立っていたのは、樹海の風景には似つかわしくない現代人の装いをした一人の男。いや、神そのものだ。
    「これはただのカイマンだ。神話生物とは程遠い」
    ため息をつきつつ立ちあがり、動かなくなったワニの体を引きずって男に近寄った。
    「謙遜することはない。心得のない人間じゃ、ただのカイマンとやらにも歯が立たんだろう。だが、戦士と名乗る以上それじゃお話にならない」
    「つまり合格ということか?」
    「今更再審する必要もないと思っちゃいたがな。もうそれなりに長い付き合いだ。オマエのことはそれなりに信用してるぜ?」
    ワニの体を引きずる隣に、自然と男が歩調を合わせる。狩猟が終わったのなら、目指すは帰るべき拠点だ。
    「全く、オマエの負けず嫌いには舌を巻く。昨日の今日だぞ?」
    隣を歩く男は終始上機嫌で煙草をふかしていた。言葉とは裏腹に、己の成してみせたことを相応に喜び、賞賛しているのだろうというのは伝わってきた。
    確かに、それなりに長い付き合いだ。
    この神が自分のやることなすことをいちいち気に入って、それだけで概ね機嫌よく接してくる性質だとは理解している。
    そしてそのこと自体は、こちらとしてもシンプルに嬉しい事実だった。
    気恥ずかしさや嬉しさといった、未だ扱いに慣れない柔い感情が表出しそうになるのを堪え、バレないようにと顔を背けるのに必死にならざるをえない程度には。





    食料調達といって暫く姿を消したテスカトリポカが、ワニを引きずって帰ってきたのは昨日のことだ。
    安心して寝泊まりできる拠点制作に勤しんでいたデイビットは、それを見て改めて感心した。
    自分の相棒であるサーヴァント。神そのものであるテスカトリポカが、紛れもなくジャガーたちの王であるという伝承。それを疑っていたわけではないが、はっきりと己の目で観測した事実として、納得ができたような気がしたのだ。
    「かつて海には怪物がいた。ワニ、魚、うずくまったカエル、形容される姿は定まってはいないが、原初の海に住まう水棲生物だった。テスカトリポカはその怪物の頭部を破壊し、残った肉体から大地を作った。この時テスカトリポカは、怪物をおびき寄せる為自身を囮にし、食われて失った右足の代わりに鏡、あるいは黒曜石を纏ったといわれる。また、この時の大地創造は、ケツァル・コアトルと共同して行ったという話もあるな。倒された怪物は怪物と形容されてこそいたが、アステカ暦では最初の日付を担うワニであり、豊穣を司る女性体という説もある。他所の神話にはしばしば、巨人や怪物、ひいては神そのものなんかの肉体から大地を創造する逸話が出てくるんだろう? そういう意味では、この怪物も原始世界の知性体が自然と抱く、天や大地というものに対する無意識の共通認識に分類されるんだろうな」
    ワニの体を解体しつつ、テスカトリポカはそう語った。解体作業を担っていたのはこちらだが、都度的確なアドバイスをくれるため、作業は初めてでも滞りなく進んでいる。
    「自分の逸話なのに、他人ごとのように語るんだな」
    そう告げると、煙草を片手に神は笑う。
    「名声が集まると、そいつが一人歩きしてやたらと功績が脚色されるだろう? そういう感覚に近いっつーか、少しばかりニュアンスを説明しづらいな、これは」
    「おまえ自身がそうした、という自覚はないのか」
    「自覚の有無という観点じゃない。ひとつの神であり、複合した神性の群像でもある。そういう認識も間違いなくテスカトリポカだ。遍く大地に偏在し、そこに息づく生命の信仰を束ね、神はこうであるというおよそ全ての認識を依り集めている。あちこちで異なる功績を成したと観測され、それら全ては確かに神の御業なんだが、一つ一つを我がことのように己の言葉で語れるかというと、実感がいまいち伴わないもんなんだよ」
    その言い草はまるで、広大な箱庭を俯瞰する管理者そのもののように感じた。事実、その表現も全くあてずっぽうというわけではないのだろう。
    「自分が分裂したり、一つに戻ったりというのは確かに、ただの人間では理解しがたい感覚だな。それを実体験する機会も滅多に訪れるものではない」
    「名前からして無数に存在するからなぁ。仮に全部の伝承を我がことのように覚えていたとして、それはそれで記録の読み込みに恐ろしく時間がかかるぞ。まして今はただの人間の体使ってるしな」
    「依り代にしているだけなのに、妙なところでスペックが引っ張られるんだな」
    「ソフトのパフォーマンスにハードのスペックってのはかなり影響だすだろ。自分でいうのもなんだが、仮にも神性、このハードじゃどうしたってスペック不足になんだよ」
    仮にも全能といわれる神なのに、そういう部分を恥とも思わずあけすけに開示する。真面目で誠実で、残酷なまでに公正な神様だ。
    ワニの可食部分の切り分けが終わり、肉をそこそこ丈夫な枝に突き刺して焚火の上にかける。見た目はともかく、人間が食べても問題ないとされる個体を選んだため、腹を下すようなことはないだろう。気を付けるべきは火の通りくらいか。
    焼けるのを待つ間も、雑談は続く。
    「シパクトリが川の覇者とはいえ、その地位は絶対にならない。地上に凌ぎを削り合う、別の覇者が存在していたからな。そいつがオセロトルだ」
    オセロトル、現代でいうジャガーだ。テスカトリポカ神の司る精霊の姿とも考えられ、実際ジャガーの姿に変身するという逸話はメジャーなものらしい。
    「さて問題だ、相棒。ジャガーとはどういう生き物だ?」
    話を振られ、焚火を見つめたまま答える。
    「哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属に分類される肉食動物。現代の地球上では北アメリカ大陸南部、南アメリカ大陸に分布。ネコ科原生種では二番目、アメリカの原生種としては最大種とされる。熱帯林をはじめとする密生した森林、マングローブからなる湿地等に生息。一部条約等では準絶滅危惧種と認定されるよう、生息数は減少の途を辿っている」
    「教科書丸暗記か? まぁ、満点をつけてやろう」
    テスカトリポカは呆れたように軽く肩を竦めた。
    「連中は普段何を捕食している?」
    「小型の哺乳類や爬虫類」
    「具体的には?」
    「数が多すぎる。生息地の樹海に住まう、およそジャガーより小さい哺乳類や爬虫類だ」
    「急に雑になるなよな。間違いない事実だが。実際、連中の生息地には食っちゃまずい生き物ってのがさほどのさばっていなくてな。シカでもカピバラでもアリクイでも見かければ襲う対象になるし、サルでもカワウソでも同じだ。カメの甲羅も噛み砕けるし、ナマズやアロワナでも卒なく狩猟する」
    「なんでも拾っては食べるのはそのせいか」
    「おい、語弊があるだろ。食える幅が人と違うってだけで、オレにも好みくらいある。ともかく、ジャガーにとって大抵の小型生物は狩りの対象だ。そこには勿論、ヘビ、カエル、そしてワニなんかも含まれてるってワケだ」
    偶々隣の男を見ると、サングラスの奥の目が意味ありげににやついていた。
    その期待に応えてやるよう、間をおかずに口を開く。
    「つまり、オセロトルにとってはワニは天敵ではない。シパクトリはヘビやカエル、ワニという存在とイコールとする。ジャガーはそれらの爬虫類を捕食対象とする。その土地に住まう人々にとって、シパクトリ退治の逸話を持つテスカトリポカはジャガーたちとイコールであり、神であるテスカトリポカはオセロトルを統べる頂点の存在。そこからテペヨロトルという異名が付加された」
    そう言ってやると、隣の男は満足気に笑った。
    「こうしてまた一つ、神にまつわる観測事象に新しい認識が加わったな」
    「これもあくまで断定の情報とはいかないのか」
    「明文化したルールじゃないが、これを神の口から語るのはいささか行儀がよくないんだよ。最初に定義された以上のレゾンデートルってやつから外れたことはやりにくい」
    「機構に徹する存在の宿命、いや、矜持というべきか?」
    「理解がスマートで助かる」
    そうこう話しているうちに、肉が焦げ付く寸前の、独特のにおいが立ち込め始めた。
    頃合いかと思い、どちらからともなく食事に手を伸ばす。
    「ワニも一人で仕留めたことだ。次は何をしてみたい? デイビット」
    「オレに何をさせる気だ」
    「決まってる。お前が肩入れするに値する戦士であるって証明を見たいんだよ。それを示してくれるなら、いつまででも俺はお前のサーヴァントだ」
    「戦士の司の契約というものか。構わないが、おまえの功績をなぞっていったら、そのうちオレもテスカトリポカと観測される事象になるのか?」
    「かもな。突飛な話じゃない。神官はテスカトリポカに最も似ている男を選び、選ばれた男は神の如き振る舞いを務め、祭祀の日にその心臓を神へと捧げた。お前は俺の神官でもあるが、神そのものに選ばれる素質は充分あると思うぞ? 強く、美しい戦士だ」
    「オレの心臓が食いたいなら、素直にそう言ってくれないか」
    「なんだ、ムードってのがわからん奴め。ストレートじゃない駆け引きを楽しむことを、そろそろ学んでほしいもんだ」
    「どうにも慣れない。分かりやすく言ってくれれば、大抵の要望は答える腹積もりがあるんだが」
    話の内容はともかく、互いに程よく力を抜いた談笑の体で、会話は弾んだ。
    焚火の静かな音をBGMに、夜が更けるままに、腹を満たしながら会話を楽しむ経験。とるにたらない細やかなことだと人は断じるかもしれないが、自分にとってはこの程度のコミュニケーションでも、相手が己の相棒であるならいつでも新鮮で楽しい。
    感情を表に出すのはまだまだ慣れずぎこちないが、注意深く観察されていれば、恐らくそのことに気付く人も出てくるだろうなと、そう思いつつ。
    やがて語る話題が尽きても暫くは、夜の樹海を舞台とした贅沢な談笑を続けていた。


    とある特異点、謎の樹海に放り込まれたデイビットとテスカトリポカの二名をようやく探し当てたカルデアのメンバーいわく。
    ほぼ身一つだったにも関わらず、原始的とはいえ存外快適そうにサバイバルしている二人のポテンシャルに呆れと同時に閉口しつつ。
    それでも今後に向け色々と割り込んで話したいことは多々あったが、藪から蛇を出す予感しかなく、その夜の連絡は結局あきらめざるをえなかったという。
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    ant_sub_borw

    DOODLEmhykの各国の魔法使いたちがFate世界のアライメントを持ったらどうなるだろう、という妄想メモを単にまとめたものです(無駄に長い)
    キャラの解釈を深めるためという意味でも考えたものです
    あくまで独断と偏見、未履修のエピソードもある中での選定です
    異論は認めます。
    賢者の魔法使いたちの属性についての考察(妄想)・アライメントとは?
    一言でそのキャラクターの性格、人格、価値観、信念や信条を表す属性と、そのキャラクターが生前どんな偉業を成したか、どんな人生あるいは物語を歩んだかなどを考慮したうえで振り分けられるパラメーターのうちの一つ。
    細かく説明すると非常に長くなるので割愛。
    『善』とつくからいいひと、『悪』とつくから悪人、のような単純な指針ではないことだけは確かです。

    ・アライメントの組み合わせ
    『秩序』『中立』『混沌』/『善』『中庸』『悪』の組み合わせで9パターンあります。
    今回はさらに『天』『地』『人』『星』も加えました。
    おおまかに『天』は神様、それに連なるもの。『地』は各国に根付いた物語に出てくるような英雄。『人』は生前に人でありながらすばらしい才能や功績を認められた人物。『星』は人類が作り上げた歴史の中でその技術や知識といったものに大きな進歩を与えるような功績を持ったもの。
    19391

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