平安時代AU 第6話「あなたは物の怪の気に当てられたのでしばらく宮中を出ていなさい」
自分より高位の女官に突然そんなことを言われ江澄は途方に暮れた。
普通であれば実家に里帰りをすれば済む話なのだが、あの実家に戻りたくはない。入宮してから一度も帰っていないのだ。
幼い子がいる姉には悪いと思ったが、数日だけ金家の広大な屋敷の片隅に置いてもらおうと早馬で文を出すと、優しい姉は是非屋敷にいらっしゃいと快諾してくれた。姉の香がする手紙を見ると懐かしさに胸がきゅっと締め付けられてしまい、すぐに仕度をして牛車に乗った。
「姫様、一の姫様にお会いするのは左大臣家の姫君の裳着の式以来でございますね」
「ええ」
「若君も大きくおなりでしょう。お会いするのが楽しみでございますね」
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