無敵家司の噂 鳴神島某所、トーマは浪人たちと対峙していた。
神里を陥れようとする存在の噂を小耳に挟んで以来探っていたが、ようやくその尻尾を掴んだのが昨日。そのままあれよあれよと男たちを追い込んで根城へと攻め入ったのである。
「神里の犬が来たぞ」
男たちは煽るように言うがトーマはどこ吹く風だ。トーマは無用なプライドはそれこそ犬にでも食わせておけと思っている。無駄なものを削ぎ落とし、残った有用なものを神里に捧げる。というのがトーマの信条だった。
「平和的に解決しないかい?」
あくまで下手に出る。これは本心だ。できれば荒事を避け、平穏無事にこの場を収めたかった。人と仲良くするのは得意だし、好きだ。しかし男たちは聞き耳を持たない。男たちは数でトーマを押し切れると読んで、事を構えるつもりのようだ。交渉が決裂したのは明白だった。
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