すれ違えども片恋、狂恋、恋衣『ごめん寝てた』
『今から中華天国の集まりがあって暫く帰れなくて。埋め合わせはするから』
『今度の納品分は桃タロー君に預けてる』
『スケジュール空けてくれてたんだろ、こんな時位しか休めないんだからたまにはゆっくりしろよ』
「…………言い出したのは……貴方のくせに……」
メールボックスにリスト分けされたその簡素な本文を一つ開いては眺め、閉じてまた一つ開いては眺めた鬼灯はベッドに寝転びながらはふ、と小さな溜息を吐いていた。
■すれ違えども片恋、狂恋、恋衣■
ふんわりと、何気無く始まった付き合いだった。
三月と前、酒に酔っていた白澤と桃太郎を衆合地獄の居酒屋で発見した鬼灯が仕方無しに介抱した時だ。常なら桃太郎の方は泥酔までに至らないのにその日は羽目を外し過ぎたのか起き上がる事も出来ず、ならば白澤を捨て置いて桃太郎だけを桃源郷に送るかと思ったのだが。譫言で桃太郎が『白澤様、大丈夫ですか、飲み過ぎですよ』だなんて宣うものだから仕方無く両者を担ぎ上げて極楽満月まで送り届けた。
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