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    MondLicht_725

    こちらはじゅじゅの夏五のみです

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    MondLicht_725

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    夏五版ワンドロワンライ第131回お題「カメラ」お借りしました。

    解散して傑は引退したけど一緒にいる祓本夏五の話。

    #夏五
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    ##夏五ドロライ

    夏五版ワンドロワンライ第131回お題「カメラ」「マジ黙ってればいい男なのに」

     聞こえてきた声に思わず足を止める。振り向くと、若いカップルが上を見上げている。視線を辿って、すぐに納得する。
     夏油が手を伸ばしてようやく届くか届かないかくらいの高い位置に、ポスターが貼ってある。巷でとても話題になっているポスターだ。
     人気がありすぎて、貼っても剥がされてしまうので、ああして高い位置に貼るか、ケースの中にしか設置できない。それでも盗難は後を絶たないし、フリマアプリでは高額で取引されている、らしい。
     それってポスターとしての役割を果たしているのかと疑問だったが、騒がれているのであれば成功なのだろうと思う。
     ポスターには、1人の男がど真ん中に配置され、こちらをじっと睨んでいる。カップルが言った通り、まるで作りもののように整った顔立ちの男だった。
     生まれながらの銀糸と、ハッとするほど澄んだ青い瞳。腕利きの芸術家が作り上げたかのような容姿であるが、口を開けばそのあまりのギャップに初対面の人は大抵固まる。そりゃもうカチンコチンに。
     まさに彼らが言う通り、「黙ってればいい男」、の代名詞のような男だった。
    「つーか、仕事選べよ。なんでこれ?」
    「それは俺も思った」
     熱弁を振るいながらぶーぶー文句を言う彼女に苦笑しながら、彼氏くんもまた頷いた。
     ポスターの、美しい顔の横には強調するような字体でこう書かれている。

    『なんぴとたりとも近づけない。』

     そして左下には、子供の頃から見慣れた、今でもたまにお世話になっている殺虫剤の全容がどーんと載っている。
     そうこれは、ファッション雑誌の表紙でもなければ、有名ブランドのポスターでもない。
     大手殺虫剤メーカー「ギンチョウ」の宣伝ポスターである。
     世間を騒がせている大きな理由が、これである。発表当時からあっという間に話題になり、商品の売れ行きも好調――かどうかは知らない。
     ここは、近所のドラッグストアで、夏油は必要なあれこれを買いに来たわけである。
     あのカップルも、他の客も、誰もここにいるのが殺虫剤のポスターでキメすぎた顔を晒している「五条悟」の元相方とは気づかない。一時期どんなに一世を風靡したって、所詮そんなものである。
    「あれ、頼めば貰えないかな、ダメかな」
     結局は男のファンであるらしい彼女が、遠く離れたポスターにスマホを向けて必死に撮影していた。彼氏は呆れた顔を見せながらも、好きにさせている。
     そんな光景を横目で見つつ、籠を手にレジへと向かう。

     つい最近、カメラを買いかえた。エントリー機から、思い切ってフルサイズへ。安くはないが、幸いにも貯金はたくさんある。
     学生時代から、カメラは趣味だった。なんならそっちの方の仕事も始めようかと考えているくらいには好きである。
     でも最近の被写体はずっと、ひとつだけだ。
     玄関で靴を脱いで、長めの廊下を進む。もうひとつ扉を開ければすぐにリビングがある。
     長身の夏油が寝転んでもまだ余裕があるでかいソファに、話題の男が横になり、寝息を立てている。
     夏油の元相方。「黙っていれば、いい男」その人である。
     持っていたショッピングバッグをテーブルに置いてすぐに自室へ向かい、防湿庫からカメラを手に戻る。そうして静かに、レンズ越しに眠る美しい男を捉える。
     とても30手前とは思えないほどに幼くて、無防備だ。

     ――なんぴとたりとも近づけない、ね。

     数枚シャッターを切ってから、ソファへ歩み寄る。そうして最近少し削げた気がする頬に触れた。
    「…んあ、す、ぐる?」
    「うん、おはよう」
    「――お前、また撮っただろ」
     不満げに唇を尖らせてみせるが、夏油は知っている。本当に嫌なら、そもそもそんな隙は見せない。
     部屋のアルバムには、たくさんの作品が眠っている。どれも、表の出すことのない自信作だ。
     世間は知らない、夏油だけが知っている顔。
     職業柄、露出は仕方がないことだが、夏油にしか見せない顔はひっそりとしまっておきたかった。
     側に居られる限りは。
    「そうだ、この前言ってたケーキ屋の新作買ってきたよ。コーヒー淹れるから、一緒に食べよう」
    「さっすが傑ぅ、愛してるぅ」
     戸惑いなく抱きついてくる長身を受け止めて、少し汗ばんだ銀糸に鼻を寄せた。
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