340【凪玲】裏路地ノ三番地-補遺-「案外バレないもんなんだね」
俺が言うと、玲王は、だろ、なんて少し得意そうに笑った。これまで度々表にくることはあったけど、今いる場所——役所には近づかないようにしていた。何となく居心地悪そうなんだもんな、落ち着かないって言うか。
けれど、今日の玲王の方は堂々としたものだ。
(出身の問題もあるんだろうな)
"あの"御影の出身なだけあって、服さえ着替えてしまえば、玲王はどこからどう見ても『まともな表の住人』だ。俺も一応玲王に合わせてそれなりの服を着ているけれど、どうしても『着られてる』感が否めない。
「51番ナギさん、9号室へお入りください」
「!」
「お、呼ばれたな」
玲王が顔を上げる。流石に御影の名前は目立つだろうって配慮だけど、こうやって同じ名前で呼ばれるのは不思議な感じで、自然少しそわっとしてしまう。
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