温かな匂いで目が覚める。嗅ぎなれない……不思議な匂いだ。嫌なにおいではない。
その正体を寝惚けた頭の片隅で考えながらベッドを探ると、昨晩は確かに隣にいたはずのぬくもりがなくなっていて、そこでようやくキースは覚醒した。
何度か瞬いてあたりを見渡すも、昨晩一緒にベッドに入ったはずのブラッドの姿は見当たらない。それどころかロフトの下から何やら物音がする。この不思議な匂いも階下からしているようだ。
寒さに身震いしながらスリッパに足を突っ込んで下を覗き込んだキースは、エプロンをつけたブラッドのつむじを見下ろしながら小さくため息をついた。
「ブラッド」
「キース。起きたのか。おはよう」
「おはようさん。朝から何してるんだよ」
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