むざより沖縄紀行(仮)空
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出発は羽田発十時四十一分の便。
年下の恋人と連れ立って、空港の出発ロビーを行く。
縁壱は学生最後の夏。最後の長い夏休みだ。
どこか旅行しようかと提案したら、嬉しそうにしながらもその返事は「無惨の行きたいところでいい」とお決まりの文句。だが我が儘を聞いてやると言えば、それなら海へと即答された。
長期で仕事の休暇を取るのが難しく、海外旅行は断念せざるを得なかった。国内で、奮発して……と考えると、安易だが行き先は沖縄になった。
縁壱とは二年ほど前から一緒に暮らしている。だから私は、奴が旅行の予約確定直後にパッキングを始めたことを知っている。
口にはしなくともその行動からこの旅行を楽しみに思っているのはよく分かって、呆れよりも先に胸がむず痒くなるのを感じていた。
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