憧れと風船(導入部分) 物資補給のために停泊する予定の移動都市に、大規模な移動遊園地のキャラバンが滞在している──よりによって、合流の一日前にもたらされたその情報は、瞬く間にロドス艦内を駆け巡った。
年少のオペレーターたちはもちろん、年長のオペレーターも普段娯楽の少ない生活をしていることもあってか、かなりの数が慌てて外出許可申請を出した結果として、ドクターは決済処理に負われていた。
「パッセンジャーは遊園地行かないの? 申請出してないみたいだけど」
「興味がありませんので」
「まあ、君ならそう言うかなとは思ったけど。出すだけ出しておいたら? ここまで来たら一枚や二枚増えても変わらないよ」
目の高さを超える書類の山に囲まれたドクターは乾いた笑いをもらす。
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