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    @vermmon 成人済/最近シェパセ沼にはまった。助けて。

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    シェパセ本に入れる予定の話。パッセンジャーとクロージャが酒飲みながらIQの低い会話してるだけの短い幕間です。弊ロドスの二人は仲良し。
    →あまりに短いので全文のせました。シェパセの話もしてます。→3/15収録版に差し替え

    #シェパセ

    Interude-Tell me what a lover is p.m. 11:57 ロドス本艦 部長室

    「やーった! 終わったー!」
     最後の書類に最後のサインを書き入れたクロージャは、快哉を叫んでデスクに突っ伏した。
    「これでケルシーに殺されなくて済むよ……」
     開発に夢中になっていたせいで溜めに溜めていた書類仕事を、今日一日で片付けるという無茶なミッションを完遂したクロージャは、達成感に浸っていた。疲労で火照った頬にデスクの冷たさが心地よい。
     今日中にすべての書類を提出するようにと余命宣告を受けたクロージャは、念のため「今日って『明日の朝まで』ってこと?」と確認したが、ケルシーはにべもなく「零時までに決まっているだろう」と切り捨てた。だが、まだ日付変わってないからセーフである。あと三分もある。偉い。偉すぎる。
     データが無事送信されたことを確認し、助手を務めていたパッセンジャーが言った。
    「お疲れ様でした、クロージャさん。できれば、もう二度と私を頼らないでください」
    「ええ~……そんなこと言わないでよ~……」
     デスクにぺったり頬をつけた上司の姿に、彼は深い溜息を吐く。これも、いつものやりとりなのだ。
     彼は丸一日、クロージャと共に部長室に缶詰にされた犠牲者だった。この美形のリーベリは、すでにエンジニア部の事務仕事に無くてはならない存在だ。クロージャの尻を叩いて山積みになった事務仕事を消化させるのは彼にしかできない。まったくモチベーションの上がらないつまらない書類仕事だが、パッセンジャーのサポートと叱咤(というか罵倒)を受けるとなんとか手が進むので、クロージャは追い詰められる度にドクターに拝み倒し、彼を借り受けている。
     彼女がパッセンジャーを頼るようになったのは、決算書類の作成を手伝ってもらったことがきっかけだった。締切間際だが足りない添付書類が山ほどあると言われた彼は、溜息を吐きながら言った。
    「それで、締切は?」
    「き、今日……」
     てへっと可愛く舌を出してみたが、返事は容赦のないアイアンクローだった。
     サルゴンの闇市から来たこのエンジニアは大抵のことに感情を動かさないと思われていたが、流石に腹に据えかねたらしい。彼はサルゴンスラングで延々とクロージャを罵った後、即座に行動に移った。紆余曲折があり、幾度かの雷撃と山ほどのサルゴンスラングの後、締切は無事守られた。
     それ以来、パッセンジャーはクロージャに目を付けられた。事前の根回しを受けたドクターから頼まれれば、彼も否とは言わない。もはやクロージャ相手に猫を被る必要はないと判断したのか、作業中は延々と毒舌を吐かれるものの、顔も声も抜群に美しい男に罵られるのは刺激的な体験だ。
     そもそも、クロージャにはサルゴン語が分からない。全く理解できないわけではないが、さすがにスラングまでは網羅していない。とにかく物凄く汚い言葉で罵られていることだけはわかる程度である。
     一度、彼のスラングをリストアップしてサルゴン人のオペレーターに聞きまわってみたことがあるが、皆一様に顔を青くして「いったい何をすれば、ここまで相手を怒らせることができるんだ?」と言うばかりだった。意味は教えてくれなかった。
     唯一、行動予備隊A6のスポットだけが渋々と言った様子で教えてくれたが、常用語に直した瞬間、腹の立つニュアンスが全て消えてしまうのだそうだ。現地人には即決闘レベルの悪罵でも、訳すと骨抜きになってしまう。どうやらパッセンジャーは、クロージャを罵る際、わざとそういう言葉を選んでいるようだ。
     それが面白くて、最近は一緒に酒を飲むたびに「罵って!」とリクエストするほどだった。彼が十分酔っていれば、最高に美しい微笑と甘くセクシーな声でサルゴンスラングを囁いてくれる。何を言っているかわからないが、とにかく滅茶苦茶貶されていることはわかる。それを聞いて「くっそー! 顔と声がいい!」と転げまわって笑うのが楽しい。パッセンジャーもまんざらではないのか、クロージャの妙な遊びにノリ良く付き合ってくれる。
     二人はなかなか楽しい友人関係を築いていた。
    「さて。クロージャさんは、この後もお仕事ですか?」
    「いやー、どうしよっかなぁ。新しいモジュールの開発もしたいけど……んー、今日はもう脳ミソくたくただし、店じまいにする」
     クロージャはかちかちに凝った肩を回しながら、個人用の冷蔵庫から冷えたビールを取り出す。パッセンジャーに向かって缶を差し出すと、彼は無言で受け取った。二人の飲み会は残業の後、部長室でだけというのが暗黙の了解だ。余人には到底お聞かせできない会話が炸裂するためである。
     ドラマ鑑賞のお供に常備されているポップコーンを肴に出すと、クロージャはだらっとした姿で椅子に座った。
    「まったく、なんで事務仕事ってあんなに疲れるんだろ~」
    「人には向き不向きがありますから」
    「つまり~、何事も得意な人に頼るのが一番ってことだよネ?」
    「*サルゴンスラング*──毎度、当日締め切りの仕事を持ち込まれる身にもなって欲しいのですが」
    「いやぁ~、いつも地層の奥に埋もれちゃうんだよね。なんでかなぁ」
    「クロージャさんのデスクの周囲で局所的な天災でも発生しているのですか? 専属の天災トランスポーターをお雇いになるべきですね」
    「パッセンジャー、天災トランスポーターに転向する気はない?」
    「この上、貴方のスケジュール管理までしろと仰るのですか?」
     リーベリは心底嫌そうに呟いて、早くも缶を一本開けた。事務仕事が得意とは言え、半ば軟禁状態で仕事をさせられてストレスが溜まっていたのか、ペースは早い。
     彼のしかめ面を眺めていたクロージャは、「くひっ」と思い出し笑いをした。
    「どうしたのです?」
    「いやぁ~……今年の新年会は最高だったなぁって」
     思い出すと今でも腹筋が痙攣する。パッセンジャーも口元に笑みを浮かべた。
    「貴方が唆したのですよ? お忘れですか?」
    「だって、あんな面白いネタ、私だけが知ってるのは勿体ないもん!」
     ロドスの新年を祝うパーティーでは、毎年数人のオペレーターたちが一発芸を披露することになっている。パッセンジャーはモノマネをった。自分にしか見せたことがないと知ったクロージャが、是非にと勧めたのである。
     お題は「かき氷の食べ過ぎで頭がキーンとしているケルシー医師」。
     表情といい、仕草といい、完璧なトレース──というか、ケルシーが特大のトラブルを報告された際に度々見せる表情そのものだった。だが、そこに「かき氷の食べ過ぎで頭がキーンとしている」という、あり得ないけど、もしかしたらちょっとあり得るシチュエーションを被せたのが笑いどころである。
     モノマネが炸裂した瞬間、会場は「うぐっ」という苦し気なうめき声で満たされた──当のケルシーが観客席の最前列に座っていたからだ。彼女の手前、笑うことはできない。だが、腹筋の痙攣を止めることもできない。できるのは、ただ俯き、笑いの波が去るまでぷるぷる震えることだけ。
     パッセンジャーはケルシーの不可解そうな表情と観客の苦しむ姿を堪能すると、「お後がよろしいようで」と優雅に一礼して舞台を降りた。
    「あの後、横隔膜や顔面の有痛性筋痙攣を訴える患者が続出して、医療オペレーターに文句を言われました」
    「まあ、そうだろうね。だって君、ケルシーの前でやるんだもん」
    「彼女がパーティーにいらっしゃるとは思いませんでしたから、他のネタを用意していなかったのです」
    「うっそだぁ~。絶対来るの知っててやったでしょ!」
    「さあ、どうでしょう」
     パッセンジャーは「ふふっ」と含み笑いを漏らした。
    「ドクターや、エリートオペレーターの先輩方に『人前では二度とやるな』と釘を刺されましたが、皆さん個人的にはたまに見たいそうです。つまり、ケルシーさんのいないところでなら良いということですよね?」
    「次はどっかんどっかんかもね~……っていうか、ケルシーがあの顔する度に思い出しちゃって笑い堪えるハメになるから、どっちかっていうと時限爆弾?」
     ケラケラ笑ったクロージャは、「あっ!」と叫んでポップコーンに伸ばした手を止めた。
    「私がやれって言ったってこと、誰にも話してないよね?」
    「ええ。誰にも聞かれておりませんので」
    「聞かれても言わないでよっ!」
    「べつに、ケルシーさんも怒ってらっしゃるわけではないのでは?」
    「確かに、後でドクターに『エリオットのさっきの一発芸……何処が面白かったんだ?』って真顔で聞いてトドメ刺してたけどさ。ドクター、笑い過ぎて呼吸困難になって担架で運ばれてったからね」
    「おや、そうだったのですか? 是非その場に居合わせたかったものです」
     パッセンジャーはそう嘯くと、不意に表情を改めた。
    「ところで……クロージャさんにお聞きしたいことがあるのですが」
    「えっ、なーに? スリーサイズなら教えないよ?」
    「いえ、それはどうでもいいのですが」
    「確かに、教えてくれって言われても困るわ……で、なに?」
    「恋人は、デートでもない休日に何をするものなんですかね?」
    「えっ?」
     思わず二度見したが、リーベリは真顔だった。
    「え……今更? シェーシャ君とつきあって結構経つでしょ?」
     恋バナの気配を感じ、俄然テンションが上がる。
     クロージャはパッセンジャーに恋人ができたことを最初に指摘した人間だ。彼の恋バナを聞くのも、今では楽しみの一つになっている。美形のリーベリが普段の鉄面皮を脱ぎ捨てて赤裸々な惚気話をする姿は、そこらの恋愛ドラマよりよほど面白い。可能なら同好の士であるシラユキも呼びたいところだが、硬く口止めされているのが惜しい。
    「まだ三ヶ月も経っていませんよ……ですが、シェーシャくんが私とセックスしかしてない気がすると落ち込んでいまして」
    「そうなの?」
    「先日、珍しく非番が重なったのです。ランチを一緒に食べて、購買を冷やかして──部屋に帰ってからずっとセックスしてましたね。流石に夕食の後は寝てしまいましたが」
    「お盛んだねえ……それで翌日ハイネック着てたんだ。こいつら、まーたえげつねえエッチしてやがったな、とは思ったけど。君ら、そんな爛れた関係だったっけ?」
    「いえ、真剣にお付き合いしていますよ。あの日は、休日だからとランチにアルコールを飲んだせいか、だらだら過ごしてるうちにそういう雰囲気になりまして……私は別に良かったのですが、シェーシャくんはこんなはずではなかったと思ったようです」
    「ほんっと真面目だなぁ、あの子……」
    「情けない話ですが、私もシェーシャくんもお互いが初めての恋人なのです。一般的な恋人がどういう風に休日を過ごすのか、イメージできないのですよ」
     彼は肩を竦め、こう続けた。
    「そこで、古今東西有象無象の恋愛ドラマを見続けてきたクロージャさんに、是非アドバイスをいただければと」
    「人を恋愛ドラママニアみたいに……んー、でもそんな特別なことは描かれてないかも? 創作物の中での日常パートってだいたいイベントっていうか、トラブルへの伏線じゃん? いや、そうじゃなくて、何の意味もないグダグダ日常パートを延々続けるクソドラマもあるな……」
    「そのクソドラマの日常で、彼らは何をしているのです?」
    「特別なことはなーんにも。だからつまんないんだってば」
     有益なアドバイスを得られなかったパッセンジャーは、困ったように首を捻った。
    「では、実体験でもかまいません。クロージャさんは人生経験が豊富でいらっしゃいますし」
    「君……いま私をババア呼ばわりしたな?」
    「いいえ。そのような事、私は一言も……その『バ』から始まる単語をいつも積極的に口にされているのはクロージャさんご自身ではありませんか。いけませんよ、ご自分をそのようにおっしゃられては」
    「何のフォローにもなってない!」
     クロージャはどん、とデスクを叩いたが、このやりとりも何度目かわからなかった。様式美としてツッコミはするが、実際はもうあまり気にしていない。
    「別に、恋人なんだからこうしなくちゃいけないってことはないでしょ。気負いすぎない方がいいんじゃない? 一緒にご飯食べるのも、生活用品買いに行くのも、広義のデートでしょ」
    「そうなのですか?」
     驚いたように瞬きするリーベリに、クロージャは持論を述べた。
    「部屋でつまんないドラマを文句言いながら見てもいいし、くだらないお喋りしてもいいし、それこそ同じ部屋で二人別々のことしてたっていいんだよ」
    「それなら、いつもしていますが……」
    「十分じゃん。恋人と一緒にいる空間が、もう特別なわけなんだからさ。それでムラっときちゃうのは、ある意味健全なんじゃない?」
    「なるほど……含蓄のあるお言葉です。さすが年の功ですね」
    「だからババア呼ばわりはやめろっ!」
     ツッコミを入れてけらけら笑う。だいぶ酔ってきたと思うが、この知能レベル最低の会話をもう少し愉しみたかった。
     秘密の酒宴は、まだまだ続く。


    ++++++++++++++++++++
     VIGILOイベでクロージャ彼氏いない歴=人生説出てきたな…と思いましたが、一応このクロージャは過去に何人か彼氏いたクロージャです。パセとクロージャのアホ話は書いてて楽しい。治安の悪い場所で長年過ごしてきたのでその気になればいくらでも口汚くなれるパッセンジャーという夢を見てます。櫻井さんのセクシーボイスで自分には皆目意味の解らない罵倒されたくないですか? 私はされてみたい。
     パセの一発芸の元ネタが解る方はファイナルを待つ同志だと思います。解らない方はE.G.コンバットを読んでください。アークナイツ好きならきっと好きになれるだろう、楽しい地獄があります。絶版だけどな!
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