鬼────────────────
手を伸ばすことの意味を、知らずに生きてきた。
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1、
怒号、罵倒、あるいは嘲り。無知な相手を騙す人間。他者への思いやりは幻想で、悪意ばかりが隣にいる。
それでもなお死ねない体を引きずり、望みもしない悪意を砕くために、生きるために研鑽を続ける。
はたして、この生に意味はあるのか。
はたして、この命に意味はあるのか。
だれが、それを教えてくれると言うのか。
今日も誰かを傷つけた拳の、あるいは誰かに傷つけられた己の心の痛みすら忘れて眠りつく。
「あぁ、空虚だ」
俺はずっと空っぽのまま、生きてゆくしかないのか。
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「こんなところで子供が1人、迷子か?」
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