未定未推敲
服を贈ってくれた友人にその姿を見せ、家に戻ってきたコレーは神妙、複雑そうな顔をしたヘルメスに手を引かれて部屋へと連れて行かれた。メーティオンは?と尋ねるともう就寝したとのこと。
『コレーとはなして、ね』
その言葉通りメーティオンは鳥の姿になるとコレーが帰って来る前に眠りについてしまった。
部屋のソファに座り、ヘルメスの膝の上に乗せられたコレーは黙ってされるがままとなっていたが内心疑問符でいっぱいだった。
(なんだろう、なにか地雷踏んだ…?)
怒っている雰囲気ではなかったけれど、明るい感じではなかった。さて、一体何でこんなに暗くなってしまったのだろうと首を捻る。
「………話を聞いてくれるだろうか」
「うん、もちろん」
というかこの状態、聞かざるを得ない。
「その、服を君に贈ったのは…どんな人、なのだろうか」
「服? えーっと、ヒューランの女の子。元私のリテイナーで今は冒険者。付き合いが長い友達」
「そうか、女性…いや、君は女性からも好かれるから…」
「何の話?」
全く話の意図が見えない。どうしてしまったと言うんだろう。頭上のヘルメスを見上げようとした時、コレーの後頭部にぽすり、とヘルメスが顔を埋めた。
「その、自分は…………君に服を贈った人物に…嫉妬、している」
思ってもみなかった告白にコレーは静止して目を見開いた。彼は今何と言った?
嫉妬?
「は、ぇ…?」
「それほど、君を好いている人がいるのだと言うことと、貰った服を喜んでいる、君を見て…」
その言葉を咀嚼して飲み込んだ瞬間、顔に熱が集まる。彼には悪いのだけれども、ああ、これは、とても嬉しい。胸の奥が焼け焦げるようだ。
「呆れているだろう」
「そんな事、ないよ」
どうにも、一度背を向けられたものだから、彼はそのうち自分から離れてメーティオンと共に何処かへ飛び立ってしまうのではないかと、そう思っている所があって。彼は激情はあるけれど普段は穏やかで、確かに嫉妬のカケラを見た事はあったのだが、自分には執着などしないように思っていたから、駄目だ、嬉しい。
「ごめん、ちょっと嬉しい」
「詰まる所、自分からも……何か贈らせてほしい」
後ろから抱きしめる腕に力が入った。
「君がどんなものが好きなのか、教えてくれないか」
「…私もまだね、こういう服着たことがあんまりないから、一緒に探して欲しいな」
肩に乗せられた彼の頭にすり、と頬を擦り寄せてみる。すると顔を上げて頬に唇を寄せてくれた。
「勿論だ」
美しく優しい緑柱の瞳が近づいて、コレーは嬉しそうに笑い、ヘルメスと唇を重ねた。
ちゅ、と小さなリップ音が漏れる数度のキスの後、コレーが目を開くとヘルメスの瞳が熱を帯びていた。ヘルメスもコレーに意図が伝わったのを理解して、ソファの上で向かい合うともう一度、キスをする。
小さな息継ぎのような呼吸が口から漏れて、舌が絡まる。食べられてしまいそうだとどきどきする。そうしてフリルブラウスに包まれた柔らかな胸にヘルメスの手が触れる。
「ぁ、待って、」
ヘルメスの手を止めてその手を握る。
「今日は私が…全部したい、な」
途切れ途切れに言ってみれば、ヘルメスがきょとんと目を見開いた。
「メイド服を、着てるので、ご奉仕…するのとか、嫌?」
恥ずかしくて、最後はか細くてボソボソと呟くような言い方になる。勇気を出して言ってみたのだけれど滑ってしまったらどうしよう。馬鹿なことを言ってると思われただろうか。
「嫌なんて、そんなことあるわけない」
コレーが握った手をヘルメスが優しく握り返す。よかった。嬉しくなったので自分から再びヘルメスにキスをする。自分から舌を入れて絡ませてみる。